
「中堅クラブか強豪クラブか」フットボールファンの間では、プレミアリーグのアーセナルに対するこのトピックが度々議論されている。もちろんアーセナルは「人気のあるクラブ」として取り上げられることが多い。ただフットボールの本質的な目線から述べるとすれば「人気だが強いとは言い切れない」というのが適切な評価である。
そんなアーセナルの2021/22シーズンは、例年にもなくUEFAチャンピオンズリーグ(CL)出場をかけて最後の最後まで戦い抜いたシーズンとなった。惜しくもトップ4フィニッシュには至らなかったが(結果5位)今後の躍進に期待する印象を持った人も多いことだろう。
しかしながら、これで強豪としての格を取り戻したと考えるのはまだ早計ではないかと危惧する。今回CLに届かなかったのは「自滅だった」と分析する声が強いが、実際は勝ち点を取らなければならない試合で結果を残すことが出来なかった単なる「実力不足」を美化した表現にすぎないのではないか。負傷者が増えたことやレフェリーの判定がおかしかったのは、アーセナルだけに当てはまることではない。
プレミアリーグ各クラブは既に8月5日に開幕となる2022/23シーズンに向けて動き始めているが、アーセナルが来シーズン決して安泰だと考えてはならない理由をご紹介したい。

欧州大会参戦がなかった2021/22シーズン
2021/22シーズンのアーセナルがこれまでのシーズンと決定的に違ったことは、欧州大会(CL/EL)を戦わなかったことである。
上記はプレミアリーグクラブの2021/22シーズン公式戦試合数をプロットしたものになるが、アーセナルの試合数は、欧州大会を戦ったクラブと10試合以上も乖離している。むしろ国内カップ戦で奮闘したサウサンプトン、ブレントフォード、クリスタル・パレスと同格である。
2022/23シーズンUEFAヨーロッパリーグ(EL)への参戦となるアーセナルは、これまでの試合数に加えてミッドウィークも戦わなければならず、昨シーズンのパフォーマンスを維持できるかは不透明である。

積極的すぎる戦力補強
このオフシーズンで、アーセナルは例年になく前もっての補強活動を進めている。すでにポルトからMFファビオ・ビエイラ、サンパウロからFWマルキーニョスの獲得を発表、またマンチェスター・シティからFWガブリエル・ジェズスの獲得目前と、積極的な補強を見せている。
また昨シーズンにリーグ・アン年間最優秀若手選手に選出されたDFウィリアン・サリバのローンバックを考えると、全体的な戦力アップが見込まれる。ただ今のアーセナルは良くも悪くも若手中心のチームであり、いつかCL進出を叶えたいのであれば、この方針はいずれ懸念材料になるのではないかと考える。
また、ただでさえ組織的に脆いアーセナルだけに、積極的すぎる戦力補強は返って心配な点でもある。2017/18シーズンのフラムや、昨シーズンのアストン・ビラなどもそうであったように、積極的に補強した結果バラバラになり苦しんだケースは多い。基本的なことだが今のパフォーマンスを維持はもちろんのこと、足りない部分を補いチームを強化できるかがポイントになってくる。

戦術的な修正力の欠如
昨シーズンのアーセナルに露呈したのは、戦術面での不安定さであった。危険なビルドアップや相手守備を固められたときの崩し方など細かなポイントはあるにせよ、総じて言えることは戦術修正力があるのかであると考える。
CL出場を逃すトリガーになったプレミアリーグ第22節のトッテナム戦や、第37節のニューカッスル戦では、流れを変えようと攻撃的プレイヤーを投入するも機能することはなく反撃するに至らなかった。修正力いわば変化に対応する力の欠如は、今に始まったことではなく毎シーズン指摘されており、今後のアーセナルに求められる課題となるだろう。
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