冨安健洋の大きな魅力
冨安がアビスパ福岡をはじめとする所属したクラブに愛されてきたこと、アビスパ福岡に多額の資金をもたらしたこと、着実にステップアップを果たしていること。これらは全て繋がっている。目標は持ちながらも現在と過去に感謝をし、焦ることなく着実にキャリアを積んできた冨安だからこそアーセナルまで辿り着いたのだ。
冨安の落ち着いた雰囲気は、福岡のトップチームに昇格した頃から全く変わっていない。当時17歳にも関わらず、あだ名は「おじいちゃん」。それほどまでに力みがなく自然体で、自分自身であらゆることを考え、行っていた。
例えば、この頃から体格的には恵まれていたが、ヘディングが得意でなかった。そこで全体練習の後に指導を受けるなどし、特訓をして克服。シント=トロイデンへの移籍後は自炊を始め、食生活をしっかりと管理。プレー面もプレーに繋がる部分も、1つずつ改善してきた。
感謝を忘れず、地に足をつけ実力を伸ばしながら、かつ天性の落ち着きがある。だからこそ冨安は新たな環境に馴染むことにも時間がかからないのだ。日本代表でもアーセナルにしてもすぐ主力に定着したように。
アーセナルの冨安として
ところでアーセナルは2003/04シーズンには無敗優勝を果たした名門だが、ここ数年は低迷。昨2020/21シーズンはプレミアリーグ8位で終え、チャンピオンズリーグ(CL)どころか遂にヨーロッパリーグ(EL)の出場権さえ逃している。
ミケル・アルテタ監督体制3シーズン目となる今季に向けては、若手選手を数多く獲得。5850万ユーロ(約70億円)と言われる移籍金を費やしたDFベン・ホワイトを筆頭にGKアーロン・ラムズデール、DFヌーノ・タヴァレス、MFアルベール・サンビ・ロコンガ、そして冨安など、多くがしっかりと出場機会を得ることに成功している。
開幕3連敗時はアルテタ監督の解任も囁かれたチームは、冨安やGKラムズデールの活躍もありそこから無敗を続けてCL圏間際の5位まで浮上。それらの面々の中で、冨安は9月のクラブ月間MVPに選出された。サポーターから「Super, Super Tom! 」と歌われるほどに、早くもチームに欠かせない存在になりつつある。
現在は右SBでの起用が続いており、元々CBであるため空中戦の強さや対人守備といった守備力は折り紙付き。もちろん、CBに入ることがあったとしても日本代表のように確かなプレーを見せてくれるに違いない。今後はSBとしての攻撃面、組み立てや攻め上がりを1つ1つ磨いていくことだろう。
吉田麻也らが欧州で築いたCBとしての地位、長友佑都や内田篤人らが築いたSBとしての地位。それらの両方で更なる高みを見せてくれるかもしれない冨安健洋。23歳になったばかりである彼の物語は、まだ前編に過ぎない。
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