Jリーグ ヴィッセル神戸

注目の神戸“BOM”トリオ、武藤嘉紀が鍵になる理由

大迫勇也(ヴィッセル神戸)写真提供:Gettyimages

武藤の欧州での実績は大迫より格上

日本代表としての実績で29試合で3得点の武藤は、49試合で23得点を挙げている大迫には叶わない。しかし、武藤は2015年に移籍したドイツ1部のマインツで3年間プレーし、66試合で20得点。大迫は2014年の夏からプレーしたケルンとブレーメンでの7年間でドイツ1部通算181試合に出場して26得点に止まっている(2部では1860ミュンヘンとブレーメンで通算17試合6得点)。

マインツでは入れ替わりとなった前代エースの岡崎慎司ほどではないものの、欧州での実績では武藤の方が格上である。そして結果を残したからこそ、武藤は世界最高峰のイングランド・プレミアリーグ(ニューカッスル)からのオファーを勝ち取ったのだ。

ドイツへ移籍する前の武藤は1年半ほどで23得点を挙げた。得点力が上がってきてFWへとコンバートされたが、もともとはサイドハーフやウイングとして馬力のあるドリブル突破からのシュートやハードワーク、当たり負けしないフィジカル能力の高さで注目を集めた。マインツでは1トップや2トップの1角など最前線での起用に固定されたため、ドリブルなどは削ぎ落とし、ゴール前に特化したようなFWとして勝負していた。ドイツ移籍後はサイドや中盤で起用されることの多い大迫とは全く異なる環境だった。


武藤嘉紀(左)&宇佐美貴史(右)写真提供:Gettyimages

メッシ型の宇佐美、ロナウド型の武藤

武藤は点取り屋というよりは得点力の高いチャンスメイカーだった。だからこそ、FC東京時代(2013-2015)はガンバ大阪所属で同じ1992年生まれの宇佐美貴史と頻繁に比較された。

繊細なボールタッチやテクニカルなドリブル突破が魅力の宇佐美はアルゼンチン代表のリオネル・メッシ型、フィジカルが強くてアスリート能力が高い武藤はポルトガル代表のクリスティアーノ・ロナウド型と表現すれば分かり易い。年齢とポジションが同じながらキャリアやプレースタイルは正反対だが、2人ともシュート力に関しては大迫以上にパンチ力がある。

名門G大阪の下部組織から2年飛び級でトップチーム昇格を果たした宇佐美は、眩いばかりの光を放つ「プラチナ世代」と呼ばれた世代別代表のエース。19歳にしてドイツの絶対王者バイエルン・ミュンヘンに引き抜かれるほどだった。一方、武藤はFC東京の下部組織出身ながら「プロでやっていく自信がなかった」と、トップチーム昇格を断って慶應義塾大学に進学してからプロ入りを果たした遅咲き。年代別代表の経験もなく、年齢以外でプラチナ世代と呼ばれるような縁はなかった。

それでも、武藤は近年Jリーグでも即戦力を輩出する関東大学リーグでフィジカル面を鍛え上げ、大学3年生にして古巣FC東京の特別指定選手としてJリーグデビュー。4年生となった2014年には正式にチームに加入し、33試合13得点を挙げた。日本代表にも召集され、宇佐美よりも早く代表デビューも果たす逆転現象が起きた。風貌や「慶應ボーイ」の肩書から来るのかもしれないが、武藤には「優等生」のイメージがつく。しかし、サッカー界では絶対的に宇佐美の方が優等生であり、「雑草魂」で成り上がって来たのが武藤である。


ヴィッセル神戸ボージャン(左)武藤(中)大迫(右)写真提供:Gettyimages

“BOM”トリオ爆発の鍵を握る武藤

宇佐美にしても武藤にしても、大迫のような典型的なストライカーではない。宇佐美は2019年に2度目の欧州挑戦を経て古巣へ復帰後、点取り屋というよりはゲームメイクに割く時間が多くなっている。

武藤はマインツでは結果こそ残していたが、プレー内容にはあまり納得していなかった様子が伺えた。逆に昨季プレーしたスペイン1部のエイバルでは僅かに1ゴールに終わったものの、ドリブルでの仕掛けや最前線からのプレッシング、プレスバックなどで攻守に渡って溌剌としたプレーが多く見られていた。

ポストプレーが得意な大迫や司令塔役もこなせるボージャンとは違い、武藤には背後のスペースへ抜け出してイニエスタやサンペールから繰り出されるパスを多く引き出すタスクが求められる。また、鹿島戦のようにサイドのスペースに流れてチャンスメイクし、アシストやドリブルでのカットインからシュートを狙っていくような鋭い動きが求められる。シュートにパンチ力がある武藤にはペナルティエリア外からでも狙わせる方がチームにとっても攻撃のバリエーションが拡がるだろうし、彼自身もその方が得点を量産できるのではないだろうか?

ボージャン(B)大迫(O)武藤(M)による“BOM”トリオの爆発には、現在の神戸に最も足りないピースである“M”の活躍がキーになる!

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