Jリーグ アルビレックス新潟

J2アルビレックス新潟が失速?そのポジショナルプレー完成度を科学する!

アルビレックス新潟「スタッツから見えるプレースタイルの変化」作成: 筆者

スタッツから見えるプレースタイルの変化

J2へ降格した2018年以降の新潟のスタッツからも、プレースタイルの大きな変化が読み取れる。(上記表を参照)

2018年と2019年はどれも似たような数値が並んだが、気になるのは「ボール支配率が5割を切るものの自陣でクリアする回数は少なかった」ことである。また、2019年に至っては、リーグ2位の得点数を記録しながらリーグ最終順位は10位に終わっている。FWレオナルドが在籍していたこともあるが、もともと攻撃力は高かった。ただ、チームとしての特徴は薄く、ブラジル人選手の個の能力やコンディションに依存していた傾向があった。

そしてアルベルト監督が就任した2020年になって、急に凡庸だったボール支配率やパス本数がリーグ上位レベルに引きあがった。ただし2020年に限っては、それがペナルティエリア(PA)内への進入には至らず。むしろ前年よりも得点数と共にその数値も下がった。

アルベルト体制2年目の今季、最終ラインからのビルドアップに長けたDF千葉和彦が加わったことでボール支配率もパス本数もリーグトップのスタッツを叩き出している。そして、PA進入の回数が9.7から12.7へと大幅に上がったことが、開幕からの無敗街道やリーグ最多得点を記録している攻撃力アップに繋がっている。

現在失速傾向の新潟は、ここ9戦9得点。そのうち4試合で無得点。特に本間に対する相手からの対策が進み、先発した直近8試合連続で得点もアシストも記録していないのは気になるところ。疲労の色も濃いが、この程度でスランプを引きずるようでは世界へ羽搏けるポテンシャルが泣く。チームが彼を活かしてくれる環境を整えてくれたのだから、今度は本間自身が利他的なプレーでそれを乗り越える姿も見てみたい。

それでも今季から新加入のJ3得点王の肩書を持つ2人、谷口海斗と鈴木孝司によるポジション争いや、高卒新人ながら独特のリズムでアクセントとなる158cmの小柄なMF三戸舜介がレギュラー争いに食い込んで面白い存在となっている。彼らの個の特徴をポジショナルプレーの枠組みの中で活かせるようになった時、チームとしての完成度はさらに増すだろう。

また、攻撃回数の数値がどんどん下がって来ているのも気になるところだ。ボール保持の時間が増えるために攻撃と守備の入れ替えが少ない試合展開が多くなっているのは理解できるが、もう少し高い位置でのボール奪取を頻繁に成功させてショートカウンターを打ち出したい。それが出来ればバリエーションの向上や、さらなるボール支配の安定により、高いボール保持率を守備として失点減に繋がるプレースタイルが確立される。

アルビレックス新潟「直近3年のゴール期待値」作成:筆者

そして最も気になるデータが、ゴール期待値(得点期待値)である。期待値とは「あるシュートチャンスが得点に結びつく確率を0~1の範囲で表した指標の合計」で、その1試合の平均値を示したのが上記の数値となる。

特筆すべきは、2019年と比較すると今季は半減に近い数値に下がった被得点期待値。つまり、失点しそうな回数が圧倒的に減っていることである。昨年は被得点期待値が下がったにも関わらず、実際の失点は増えてしまったが、今季は圧倒的に被得点期待値も失点も減っている。しっかりとゲームをコントロールできている証明である。

しかし、逆に得点の期待値も微減して来ているのが気になるところだ。今季の1試合平均で1.35という得点期待値に対して、実際は1.8得点している。差が0.45もプラスになるのは決定力が高い証明なのだが、逆に言うとJ2で4年目を迎えている今季はシュート本数が最も少ないのである。

この傾向を勝利への最適解とするならば、1トップの人選には典型的な点取り屋が良いのか?2列目を活かせる機動力があり、ショートカウンターを繰り出す先端としてプレッシングを献身的にこなせる選手が良いのだろうか?それとも交代枠5人制を活かして前半と後半でシェアすべきなのか?

サポーターやニュートラルなサッカーファンにとって、新潟のスタッツを見ながら足りないものを探すのも興味深い楽しみ方になるはずだ。実際、アルベルト監督やチームの強化部もこうした数値を見ながらDF千葉和彦やMF高宇洋を補強してチーム作りを進めているはずである。現在の新潟はそれだけ観るべきサッカーを披露している。

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