プレミアリーグ トッテナム

ハリー・ケインがトッテナムの象徴であるべき理由

ハリー・ケイン 写真提供:Gettyimages

「太ってる奴はこのチームにいらない」

それは名門アーセナルが下した彼への評価だった。彼の名前はハリー・ケイン。当時9歳だった彼にとっては絶望ともいえる衝撃的発言だった。その時ケインがイングランドフットボール界を牽引するストライカーになることは誰もが予想していなかったことだろう。

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時を経て、2020年12月。プレミアリーグ第11節、アーセナルはノースロンドンダービー(12月7日)で最大のライバルであるトッテナムに0-2で完敗した。スコア、内容ともにライバルに圧倒的な差をつけられジャブすら打つことができないまま90分が経ってしまった。試合内容と結果を鑑みても両者クオリティに大きな隔たりがあり、ノースロンドンはすでに白く塗り替わっていることを改めて感じさせる試合であったことには変わりなかった。そしてこの試合で生まれたすべてのゴールは皮肉にもトッテナムの絶対的ストライカーであるハリー・ケインのゴールとアシストだった。

そう、彼は奇しくもライバルチームであるトッテナムの下部組織へ移ったのだった。そこから目覚ましい成長を遂げ、トップチームとしてチームを牽引する存在にまで上り詰めた。2018年開催されたロシアW杯でもイングランド代表としてあのクリスティアーノ・ロナウドを抑えて得点王に。誰もが認めるワールドクラスのプレーヤーとなっている。そんな彼のワールドクラスである理由を紐解きたい。


決定力

一般的に点取り屋に求められる能力は「スピード、テクニック、パワー」であり、このうち2つが突出していると最前線で活躍できると言われている。ケインにはそのすべての能力が備わっていると考える。

ここに紹介した映像からその全ての能力が存分に発揮されていることがお分かりいただけるだろう。これ以上に説明をする必要はない。ケインが頭角を現した当時は「ストロングヘッダー」のイメージが強かったが、それだけに留まらず足下の技術やポジショニングも上達させ、ストライカーとしての総合値を高めた印象を抱く。成長を止めない彼のフットボールへの姿勢も輝き続ける所以とも言える。


プレースキック

かつてのストライカーに向けられた世間の目は「得点を取る」ことだけの一点張り。しかし、現代においてその考え方はもはや時代遅れである。得点が取れるだけではトップチームで活躍できるどころか、出場機会すら与えられないのが今のフットボール事情だ。そんな中でケインは決定力だけでなく「プレースキック精度」にも大きな特徴がある。

今シーズンではその能力が大いに発揮されていると言えるだろう。リーグ戦13試合を終えてケインは既に10アシストをマーク。過去3シーズンのリーグ戦で記録した自身のアシスト数(8アシスト)をたった13試合で上回る驚異的な数字だ。

ここに紹介した動画も2018年の映像であり、彼のキック精度が高いことは既に証明されている。ジョゼ・モウリーニョは彼のこうした特徴を活かすために中盤に敢えて下りるように指示をしているのかもしれない。


キャプテンシー

18/19シーズン、チャンピオンズリーグ・グループステージ最終戦。グループステージ突破のためにトッテナムには引き分け以上の結果が必要とされていた。しかし、最後の戦いはアウェイバルセロナ。トッテナムにとってカンプ・ノウという要塞を攻略するという重大なミッションが待ち受けていた。前半早々にバルセロナに先制をされ暗雲立ち込めたかに思えたが、ポゼッションでバルセロナを上回り徐々に主導権を握り始める。しかし大事な同点弾を決めることができないまま時間だけが過ぎていった。

万事休すかと思われた85分、ケインのアシストからルーカス・モウラが同点弾を放ち試合を遂にふりだしに戻すことに成功した。ようやく手にした同点弾に一同歓喜の輪を作る中、ケインだけは違っていた。「早く戻れ。もう1点行くぞ。」とサインを示したのだった。こうした振る舞いからもケインのキャプテンシーを感じられずにはいない。

近年トッテナムは優勝争いができるほどに間違いなく成長することができたが、肝心のタイトルを勝ち取ることができていない。15/16シーズンにはレスター、16/17シーズンにはチェルシー、18/19シーズンにはリバプール。トッテナムはあと一歩のところで差をつけられて敗れてしまう印象がある。その要因として「リーダー格のプレーヤーの不在」を各メディアで指摘され続けた。ただ選手キャリアとして旬を迎えたケインは、チームの象徴として牽引する役割を全うすることができている。トッテナムとしても簡単に彼を手放すわけにはいかないだろう。

名前:秕タクオ

国籍:日本
趣味:サッカー、UNO、100均巡り

サッカー観戦が日課のしがないサラリーマンです。かれこれ人生の半分以上はサッカー観戦に明け暮れ、週末にはキルケニー片手にプレミアリーグやJリーグにかじりついています。

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