サッカー界で「マドリード」と言えば、レアル・マドリード、もしくはアトレティコ・マドリードが思い浮かぶことが多いだろう。しかし今シーズン、ロス・ ガラクティコス(レアルの愛称)に続くスペイン、マドリード州のクラブとして話題となっているのは、ヘタフェだ。
2019/2020シーズンの現時点までで、ヘタフェは勝ち点42で、見事にラ・リーガ(スペイン1部リーグ)3位の位置につけている。さらに、2月16日(日本時間)の第24節でバルセロナ相手に勝利できれば、2位の座に一歩近づくこととなる(現在の1位はレアル、2位はバルセロナ)。
ヘタフェが素晴らしい活躍を見せ始めたのは、今シーズンからというわけではない。この数年ずっと成長しつつある。2015/2016シーズンには12年ぶりにセグンダ・ディビシオン(スペイン2部リーグ)に降格までしたクラブが、どうやってこんな短期間にラ・リーガ上位まで上り詰めることに成功したのだろうか。
ヘタフェはどんなクラブ?
2月9日(日本時間)に行われたラ・リーガ第23節、ヘタフェはバレンシアを破り、4連勝を達成した。同試合終了後の、ホームスタジアムのコリセウム・アルフォンソ・ペレスに集まったサポーター全員が抱き合う姿が話題となった。
この大きなハグは、4連勝の喜びだけから生まれたものではない。苦しい時期から解放されて、見事な復活を果たしたクラブのサポーターの安堵の気持ちも表れていたと思われる。
ヘタフェは予算があまりない小さなクラブだ。しかし、シンプルで正確な新しい戦い方によって、お金をかけずともシーズン毎にパフォーマンスを上げてきている。
2016/2017シーズンに1部に復活し、2017/2018シーズンは8位、そして前シーズンは5位という結果を残してきた。そして今シーズンは3位のポジションをキープしながら、チャンピオンズリーグ(CL)出場までを目指している。
この小さなクラブの素晴らしい成長ぶりを目の当たりにしているサポーターが、嬉しくないわけがないだろう。
ヘタフェの復活の主役は監督のホセ・ボルダラス
この奇跡的な復活の主役は間違いなく、2016年9月に就任したホセ・ボルダラス監督である。
ボルダラスは、2015/2016シーズンに2部のデポルティーボ・アラベスの監督を務め、1シーズンだけでアラベスを10年ぶりの1部昇格に導いたにもかかわらず、2016年6月に解任された。
その素晴らしい結果を目の当たりにしたヘタフェは、1部に戻るためには彼がベストだと判断した。そして、当時の監督であったフアン・エスナイデルを解任し、ボルダラスにチームの指揮を任せることとなった。
ボルダラスのシンプルな試合へのアプローチによって、結果に苦しんでいたヘタフェにはすぐに効果が表れた。
それまでの、得点があまり取れず失点も多いという状況の中、ボルダラスはまず失点を防ぐためにディフェンスを固め、1ゴールを確実に取るサッカースタイルを考え始めた。試合内容が面白かったとは言えないが、ヘタフェは彼のコンセプトのおかげですぐに1部に戻ることに成功したのだ。
その2016/2017シーズンを振り返って、ボルダラスはこう語っている。
「ヘタフェとの初めてのシーズンの途中には、様々なサッカー関係者が私のやり方を疑って、たくさんの文句を言われてきた。しかし、勝利への道はたくさんある。勝つためには必ず試合の主役にならなければならないわけではない」
予算がないクラブは、レベルの高い技術の選手を獲得するのに苦労するケースが多い。しかし、フィジカルの強い選手の集団にしっかりした戦術が加われば、結果を残すのは不可能なことではない。ボルダラス率いるヘタフェは、まさにそう証明している。
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