著者:クリシュナ・サドハナ(フットボール・トライブ・アジア)
アル・ヒラルが三回目のACL優勝
11月24日に埼玉スタジアムで行われたAFCチャンピオンズリーグ(ACL)決勝戦第2戦。浦和レッズを2-0(2戦合計3-0)で破ったサウジアラビアの強豪アル・ヒラルが三回目のタイトル獲得を果たした。2000年代に現在の大会形式になってからは初めてのこと。これでアル・ヒラルは、韓国の浦項スティーラースのACL三回制覇という記録に並び、今大会で最も成功しているクラブに仲間入りした。
9日にリヤドで行われた決勝第1戦の1-0のわずかなアドバンテージを携え、アル・ヒラルはタイトル獲得には厳しい戦いになることを知りつつ埼玉に乗り込んだ。現在の大会形式になってから進出した決勝戦では、アル・ヒラルはすべて敗北している。2014年にはオーストラリアのウェスタン・シドニー・ワンダラーズに、そして2017年には浦和に敗れている。三度目のチャンスでこの悲嘆を終わらせよう。と、ラズヴァン・ルチェスク監督は、先発に全てを投入することを決めた。バフェティンビ・ゴミス、セバスティアン・ジョヴィンコ、第1戦で得点したアンドレ・カリージョ、そしてサウジアラビア代表のサーレム・アッ=ドーサリーと、アブドッラー・オタイフなどが揃った。
埼玉スタジアムを埋め尽くした赤い海
一方、国内リーグの不出来を払拭するためには、今大会で輝くことが唯一の道であった浦和。大槻毅監督もまた先発に全てをかけてきた。シーズンレギュラーである興梠慎三、関根貴大、エヴェルトン、橋岡大樹、槙野智章、そして第1戦はイエローカードの累積により出場停止となっていたGK西川周作も復帰。
埼玉スタジアムを埋め尽くしたサポーター達に後押しされ、浦和は1ゴールの遅れを取り戻そうと全力を尽くした。両チームは交互に次々と攻撃を繰り広げ、次々にチャンスを作り出す。開始から試合をコントロールしていたのはアル・ヒラルだったが、浦和は興梠、長澤和輝、関根の活躍で何度もチャンスを切り開いた。しかしながらそのチャンスを決めきれない。前半はスコアレスで、アル・ヒラルが第1戦のアドバンテージを保持したまま。
後半賭けに出たアル・ヒラル
アル・ヒラルは後半にハイプレッシャーを敢行する。これにより浦和はいつものパス構築ができなくなった。浦和からボールはさらに奪われ、結果としてたくさんのセットプレーを許し、アル・ヒラルの作戦は効果を発揮した。アル・ヒラルは数多くのチャンスを作り上げ、少しずつ浦和の守備陣へのプレッシャーを積み上げていく。
74分、アル・ヒラルの一連の滑らかなパスが浦和を惑わせ、ジョヴィンコがアッ=ドーサリーに素晴らしいパスを出した。前線に集中しすぎていた浦和のマークが外れていたアッ=ドーサリーがボールをタップ。西川の守備範囲を越えていき、得点になった。これで1-0、合計2-0。アッ=ドーサリーは2017年の決定的な決勝戦第2戦で退場しており、完璧な取り戻しになった。
来日した3000人のファンとリヤドの街が歓喜
アル・ヒラルに先制された浦和は、ゴールに向かって押し進むも取り返すことができなかった。度々守備が無防備になり、アディショナルタイムでゴミスに2得点目(2戦合計3得点目)を許す結果となった。ゴミスのゴール後すぐに試合終了の笛が鳴り、サウジアラビアの3000人のファンが歓喜した。彼ら全員が、サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマーン皇太子が個人的に用意した飛行機に乗ってやって来ていた。
浦和にとっては、注力していた大陸大会の残念な終わりとなった。アル・ヒラルにとっては、大会を通して一貫して見せてきた素晴らしいプレーの最高の締めくくりとなった。今回ACLの得点王となったゴメスが、順当に最優秀選手賞を受賞。ルチェスク監督は試合後の記者会見で選手たちから水を浴び、皆でタイトル獲得を喜んだ。
アル・ヒラルのホームの街も勝利の祝いに沸いた。アル・ヒラルの旗が街のあちこちで振られ、車はクラクションを鳴らし、歓声が上がり、歌声がこだまするお祭りムード。サウジアラビア全体にも祝いの空気が広がり、新たに冠したアジア王者を歓迎した。
FIFAクラブW杯2019へ
このあと浦和は、11月30日(土)にJ1第33節で、タイトルを追うFC東京との厳しいアウェイ戦に挑まなければならない。アル・ヒラルはサウジ・プロリーグで3戦した後、12月にカタールに出発する。そこではブラジルからフラメンゴ、イングランドからリバプール、メキシコからモンテレイ、チュニジアからエスペランス・スポルティーブ・ドゥ・チュニス、ニューカレドニアからイヤンゲヌ・スポール、そしてカタールのアル・サッドが集い、FIFAクラブワールドカップ2019が開催される。
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