代表ウィークによるリーグ戦中断前の鹿島アントラーズ戦に1-3で敗れ、中断明けの勝利に期待がかかっていたコンサドーレだが、Jリーグ屈指の完成度を誇る名古屋グランパスに4-0で敗れ、今季初の連敗を喫した。今回は、その第5節で見えてきた札幌の強みと課題を、ここまでのリーグ戦を踏まえてご紹介する。
札幌という立地
試合の内容に入る前に、北海道札幌市を拠点とすることの難しさがわかる代表ウィークだったことに触れておきたい。リーグ戦が中断となる18日から30日まで、1日を通して天候が荒れなかったのは6日間だけ。気温が氷点下となった日は3月に入っていながら、8日もあった。第4節までを戦い見えてきた修正ポイントを正す絶好のタイミングではあったが、時間的な余裕はなかったと言えるだろう。
前線に守備力があるチームに対して
今シーズン初めて先発出場を果たした名古屋MF長谷川アーリアジャスール。彼が前線で起用されたことにより、札幌はビルドアップの段階から大きく苦しんだ。長谷川が4-3-3で構える名古屋の前線中央にいることで、札幌の十八番である最終ラインからの鋭い縦パスをことごとく制限され、結果としてロングボールを蹴らされ回収される場面が散見。札幌が前線の守備をかわし、サイドでフリーを作っても素早く撤退守備に移るため、スキを与えてもらえなかった。長谷川の貢献は彼のヒートマップを見ても明らかだ。
2シャドーのスペースを潰されてしまった
札幌はアンデルソン・ロペスとチャナティップ・ソングラシンに縦パスを入れて、それと同時に逆サイドの選手が幅をとり、前者2人がサイドに展開することで相手のスライドが間に合わないサイドチェンジを行う。ただ、名古屋はその2人に満足なスペースを与えてこなかった。和泉竜司が左寄りにポジションを取り、ロペスとルーカス・フェルナンデスをケア。ジョアン・シミッチと米本拓司もそれに合わせてチャナティップのスペースを消しているために、十八番の攻撃ができなかった。札幌としては、チャナティップとロペスの近くに選手を1人配置するなどの、工夫を見せなければいけない。
ただ、代表ウィーク中に2試合をこなして戻ってきたチャナティップは数回この攻撃を実現させている。彼の能力はやはり札幌の大きな武器だ。ただ、ジョアン・シミッチとの勝負にはほぼ完敗と言っていいだろう。シミッチの抜群のポジション取りと対人戦の強さに、札幌は苦しみ続けた。
右サイドを活かせない展開
名古屋の中盤が左寄りに構えていたことでフェルナンデスに与えられたスペースはわずかだった。その上、吉田豊の圧倒的な1対1の能力でボールを回収された。札幌は中盤がほぼ空洞化しているので、回収されてしまえば名古屋のビルドアップの難易度は低い。これがカウンターからチャンスを作られすぎた要因だ。また、名古屋は和泉と吉田が素晴らしいコンビネーションで深さと幅を取り、札幌の右サイドを制圧。2失点目はオウンゴールだったが、フェルナンデスとロペスがボックス内付近で守備を強いられれば失点は必然に近い。
対策されているという自覚を持つべき
J1昇格3シーズン目を迎えた札幌だが、相手チームの認識は「対策を練らなければこちらがやられる」というものに完全に変わっている。ここまでに述べてきたのはすべて、名古屋の対策の術中に札幌がハマったということだけだ。首位を走る名古屋ですら長谷川をスタメンに抜擢し、札幌の良さを消すという選択を取ってきた。丸山祐市は福森晃斗のような攻めが上がりで中盤が空洞化した札幌を苦しめた。これは札幌がしたいことを封じながら、それを名古屋が実行したということだ。
何が言いたいかというと、札幌は相手に自分たちがしたい攻撃や守備が対策されているという前提で試合に向けた準備をしなければいけないということ。当たり前のことのようだが、とても難しいことだ。札幌には個性的な選手、個性的な監督がいて魅力的なフットボールを展開する。ただ、対策を取ってくる相手を無視して、やりたいことをやりきるだけの能力はまだない。攻撃の選択肢を増やし、守備のオーガナイズにも複数のパターンを持つ。できることはさまざまだが、札幌の選手たちであればそれらができるはず。J1は魔境だ。うかうかしていると、J2に逆戻りということにもなりかねない。
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