ワールドカップ

W杯決勝のVAR判定が明らかにした、ハンドの基準を明確化する必要性

W杯決勝で主審を務めたネストル・ピタナ 写真提供:Getty Images

VARが解決できなかったハンド判定の議論

 『ESPN』はこの場面を、主審による明らかなミスではないためVARが使用されるべきではなかったという意見に理解を示しながらも、大会を通した一貫性という点で正しかったと評価している。

 たしかに大会序盤の試合でも似たような場面ではVARを使用した結果PKが与えられており、大会全体で同じ基準を採用するのであれば決勝戦でも同様の判定が下されなければならないというわけだ。

 しかし元プレミアリーグレフェリーのピーター・ウォルトンは「あれはハンドの反則ではない。確かにボールが腕に当たったが、腕の位置は自然でありボールとの距離も近かったので、意図的な行為には見えなかった」と語り、PKを与えるべきではなかったとしている。

 サッカーの競技規則はあくまで「選手が意図的に手または腕でボールに接触すること」を違反としており、その判定には(ボールが手に向かうのではなく)手がボールに向かって動いているか、相手や(予測できない)ボールとの距離が考慮されることになっている。

 これを厳格に守るのであれば今回のW杯でのハンドの基準は疑問であり、そもそも最も重要なルールのひとつでありながら競技規則があまりに曖昧だとも言える。

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