代表チーム クロアチア代表

勝つのはどっち?決勝戦に挑む両国キープレーヤーをDr.TRIBEが健診

いよいよ決勝戦を戦う2ヶ国が出そろったロシアワールドカップ。盤石な戦いでファイナルに進出したフランスが勝つのか、はたまた決勝トーナメントの3試合ですべて延長戦を戦った粘り強いクロアチアが勝つのか、世界中の注目が集まっている。そこで今回は、決勝戦を戦く両国のキーマンたちのこの大会におけるこれまでのパフォーマンスを、フットボール・トライブ・ジャパンが独自に行っている、選手採点「TRIBE RATINGS」と“試合診断書”「Dr.TRIBE」で振り返る。決勝戦の見どころが見えてくるかもしれない。


フランスGK:ウーゴ・ロリス

フランス代表のキャプテンでもある守護神ウーゴ・ロリスは、この大会で極めて安定したパフォーマンスを披露している。決勝トーナメントに入ってからは、3失点したアルゼンチン戦こそ5.5評価だったが、ウルグアイ戦ベルギー戦はともに7.0。Dr.TRIBEでは、今大会を通じてTHW(ザ・ハード・ワーカー)に2度選出されている。


クロアチアGK:ダニエル・スバシッチ

いっぽうのクロアチアの守護神ダニエル・スバシッチは、決勝トーナメントに入ってからも目覚ましい活躍を見せている。デンマークを相手にPK戦までもつれ込んだ試合でチームトップの8.0をマークし、MOTM(マン・オブ・ザ・マッチ)に選ばれた。準々決勝のロシア戦でもPK戦で活躍し7.5の好評価。イングランド戦こそ平均点だったが、確実にこの大会でいい波に乗れている。


フランス10番:キリアン・ムバッペ

超新星ムバッペは、この大会でもそのポテンシャルを遺憾なく発揮している。アルゼンチン戦ではその類まれなスピードを活かして2得点をゲット。8.0の評価を得るとともに、MOTMに選ばれた。しかし、ウルグアイ戦ベルギー戦では相手チームが彼を封じに来たために、評価自体は落ちている。さらにまだ19歳であり、若さを露呈する場面があった。決勝戦ではそうした失敗は許されない。


クロアチア10番:ルカ・モドリッチ

彼の大会と言っても過言ではない、特筆すべきパフォーマンスをコンスタントに披露しているモドリッチ。デンマークとの試合では延長後半にPKをミスしたものの、PK戦ではしっかり決める精神力と技術の高さを見せ、ロシア戦では守備面での貢献度の高さも見られた。疲労の色が隠せなかったイングランド戦ですら、彼の精度は落ちなかった。グループステージを含めれば、チーム最多の2回MOTMに選ばれている男は決勝戦でも輝きを放つことができるだろうか。


フランス7番:アントワーヌ・グリーズマン

個性的なゴールパフォーマンスはこの大会でも2度見られた。彼がその実力を最も示したのはウルグアイとの準々決勝。エリア外から強烈なミドルシュートを放つとキーパーの手をすり抜けてゴールイン。しかしアトレティコ・マドリードのチームメイトがいるウルグアイが相手だったため、ゴールパフォーマンスはしなかったのだという。この試合で1ゴール1アシストを記録し、ラファエル・ヴァランとともにチームトップの7.5評価を得たグリーズマンは、この試合のMOTMにも選出された。ムバッペとともにチームトップの2度MOTMに選ばれているグリーズマンだが、グループステージではMDP(モースト・ディサポインティング・プレーヤー)に選出されたことも。彼自身が盤石なわけでは決してない。


クロアチア7番:イバン・ラキティッチ

天才モドリッチを支えるもう一人の天才。インテリジェンスの高いモドリッチとのコンビは、攻守両面において今大会屈指の補完性を備えている。決勝トーナメントに入ってからは、7.06.57.0とコンスタントなパフォーマンスを見せ、デンマーク戦ではTHWに選出された。PK戦でいずれも最後のキッカーを務める胆力も彼を語る上で非常に重要な要素だと言えよう。


フランスMOTM最多選出:キリアン・ムバッペ&アントワーヌ・グリーズマン

リードしてからソリッドな守備で逃げ切ることも、ボールをもって相手を押し込むこともできるフランスにおいて、彼らの存在は非常に大きい。数字には表れない貢献度が高いグリーズマンは、ディエゴ・シメオネに鍛えられた守備でも違いを創り、恐ろしいほどの視野の広さで局面を一発で変えられる力を持つ。そしてムバッペがいることで相手チームは、容易にディフェンスラインを上げられない。両者ともに3ゴールを記録しているが、それ以上の存在感を放っている。


クロアチアMOTM最多選出:ルカ・モドリッチ

前述したとおり、この大会は彼の大会になっている。バロンドール受賞に相応しい活躍だ。ビルドアップからフィニッシュまですべてをこなすモドリッチは、フットボールインテリジェンスの高さで守備にも貢献。鋭い予測と適切なポジショニングで相手に自由を与えない。ラキティッチとのコンビネーションは、彼らが最大のライバルチームに所属する選手同士であることを忘れさせる。


フランスTHW最多選出:エンゴロ・カンテ

両チーム合わせてもトップの3度選出。画面に常に映っている印象の強い彼だが、実は一試合で11㎞も12㎞も走っているわけではない。正しいポジションに正しいタイミングでいるのだ。また、この大会では彼のパス能力の高さも証明されている。317本のパスを出し、90%の成功率をたたき出している。そのうちの214本がミドルパスであることを考えれば、特筆すべきことだろう。


クロアチアTHW最多選出:イバン・ラキティッチ

所属するバルセロナでも円熟味を増すラキティッチは、クロアチアでもその知性を発揮している。モドリッチと巧みにバランスをとりながら、より下がり目の位置でリスク管理とビルドアップを担当している。彼がいてのモドリッチであることは、この全ての試合で証明されていると言っていい。準決勝の前日には39度の熱を出しながらも、最後まで戦い切った気持ちと身体の強さも印象的だ。


健診結果

いずれも役者がしっかりと活躍している両者だが、細かく見るとクロアチアの方が、毎試合ヒーローが誕生している印象だ。グループステージではモドリッチが2度選出されたMOTMは、決勝トーナメントに入ってから、スバシッチドマゴイ・ビダイバン・ペリシッチが選ばれている。
いっぽうのフランスは基本的にグループステージから流れが変わらず、グリーズマンムバッペがMOTMに1度ずつ選出されている。

フランスが唯一引き分けたデンマーク戦は、主力を温存していたことが大きく響いた試合だったため、参考にするのは難しいが、グリーズマンとムバッペがスペースを与えてもらえず、苦んでいる様子はあった。
反対にクロアチアはすべての試合を苦しみながら勝ち上がってきたため、フランスとしてはむしろ対策が練りづらいかもしれない。注目はモドリッチとラキティッチを、カンテとポール・ポグバ、そして下がってくるグリーズマンがどれだけ余裕をもってプレーさせないかだろう。これまでのところ、クロアチアの天才2人が輝かなかった試合はない。