選手のプレーに対し審判の判定なしには勝負が成り立たないフットボールの世界において、判定に妥当性は常に議論の的となる。「審判は選手より目立ってはいけない存在である」という言葉を耳にしたことのあるファンは多いだろう。ある試合で勝敗に直結するような場面に遭遇し、即座に判定を下した審判に対して、試合後にファンやメディア、監督や選手など様々な人々がくぎを刺すことは日常茶飯事の光景となっていた。
その“リスペクト”という概念が存在しないかのごとく、数多くの批判にさらされる審判にとって、今季から欧州主要リーグで導入された「ビデオ・アシスタントレフリー(VAR)」は大きな助けとなったことだろう。あくまでも一例にしかすぎないが、カルチョの世界ではこのVARの運用が「誤審の減少」という形で一定の成果が表れているようだ。
イタリアサッカー連盟(FIGC)が公表したデータによると、今シーズンのセリエAとコッパ・イタリアにおいて397試合・2023にものぼるプレーに対しVARが適用され、117回も判定が覆るなど、審判が試合後の周囲からの声を抑えるための“道具”として十分役に立っていると考えて良いかもしれない。
そして実際に審判にとって悩みの種となっていた「批判を受ける根本的な原因」となっていた誤審に該当する判定が、昨シーズンからなんと「85%」という驚異の減少率を記録しており、判定の妥当性向上に多大なる貢献を果たしている。
このように審判にとって大きな助けとなっているVARだが、当初は判定に時間を要することもあり、スタジアム内のファンや両チームの選手、監督が試合中において今まで経験したことのない間合いに違和感を覚えることから不満の声を挙げていたことは、すでに今シーズンが終わったとはいえ、まだ多くのファンの記憶には新しいことだろう。
このVAR判定に要する時間だが、確かに開幕節からの第3節までの試合においては1試合平均82秒も要していた。しかし試合を重ねるにつれ、審判自身のこのシステムに対して“慣れ”を見せたこともあり、今季全試合で考えるとその時間は31.5秒にまで減少。ファンのフラストレーション“軽減”となったことだろう。
さらにイエローカードについて言及すると、昨季は1719枚提示されたものの、今季は1508枚と約12.3%の減少を見せている。そしてペナルティエリア内でのプレーを巡って、これまでも度々試合後に話題となっていたシミュレーション回数は昨季の137回から113回と約35.3%もの減少率を見せている。もしかしたらVARは「ごまかしの利かない道具」として選手のプレーにも影響を与えているかもしれない。
なお、今週なかばに開幕するFIFAワールドカップ・ロシア大会はVAR判定を伴う初めての主要国際大会であることは周知の事実である。もちろんこの4年に1度の大舞台には素晴らしいクオリティを兼ね備えた選手たちが集まっているが、よりレベルの高い、かつフェアなプレーを望んでいる世界中のフットボールファンの期待に応えるべく、迅速かつ正確なVAR判定が行われるだろう。
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