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チームMVPを受賞した堂安律。W杯目指しオランダで輝く若き侍

堂安律

堂安律 写真提供:Getty Images

 W杯出場を目指す堂安律

 堂安をガンバ大阪から買い取るために必要な200万ユーロとEU圏外の選手に支払わなければならない最低給与はクラブにとって簡単な投資ではなかったが、フローニンゲンが将来より大きな利益をもたらす可能性を秘めた東洋の才能を簡単に手放すはずがなかった。

 地元紙のオンラインアンケートで「堂安を買い取るべき」と回答した97%のファンの期待に応えるように、クラブは先月23日に完全移籍のオプションを行使し堂安と2021年までの契約を結んだことを発表した。

 クラブのテクニカル・マネージャーであるロン・ヤンス氏は「あのような若さで、全く異なる文化に素早く適応できるというのは驚異的なことだ。今シーズンを通して彼は大きく成長し、チームにとってますます重要な存在になっている」と堂安の正式な加入を歓迎している。

 また堂安本人も契約に先立ち、オランダ誌『フートバール・インターナショナル』で、日本に比べ守備から攻撃への切り替えが速いと語るオランダで「少なくとももう一年プレーしたい」と明らかにしていた。

「(今回の)ワールドカップに行けなくても、まだチャンスはあるかもしれません。まだ若いですし、サッカー選手としてもっと成長できると感じています」

 エールディビジでの活躍は、東京五輪世代でもある堂安が日本のサッカー界にとって既に未来のためだけの存在ではないことを示している。本人も「今のようにプレーし続ければ、そこ(ロシア)に行けるチャンスはあると思います」と語り、残された時間が少ないことを認めながらも、日本代表の一員としてワールドカップに参加することへの確固たる自信と決意を語っている。

 日本代表が不振と混乱にあえぐ今、オランダの地で成長を遂げる堂安は少なくとも真剣に戦力として検討されるべき存在だ。残された招集のタイミングは本大会直前だけでありサプライズの可能性は高くはないが、仮にワールドカップへの出場という最高のフィナーレを迎えなくても、堂安がこの1年間で大きな飛躍を遂げたことに変わりはない。

 2015年の段階で、2018年の春に堂安が欧州の地でこれほどの活躍を見せると予想することは、やや楽観的過ぎたかもしれない。しかし日本代表がワールドカップ初出場を成し遂げた時にはまだ生まれてもいなかった若武者は、その実力でもっと先にあるはずの「未来」を手繰り寄せてきた。具体的な時期はともかく、日本代表にももうすぐ手が届くだろう。果たして彼が今から2年半後にどこにいるのか、期待は尽きない。

著者:マリオ・カワタ

ドイツ在住のフットボール・トライブライター。

Twitter:@Mario_GCC

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