この試合で浦和のクロス本数は28本にも上っており、FC東京はクロス自体を上げさせなかったわけではない。しかしその多くはディフェンスの陣形が整った状態で放り込む形のものであり、FC東京の思い通りだった。こうした状況では森重真人、チャン・ヒョンスのセンターバックコンビ、さらにGK林彰洋を中心にハイボールの対応に優れた選手が揃っているからだ。浦和のクロスのうち成功したのが5本だけである事実が、それを物語っている。
浦和一の9本のクロスを放ったマルティノスのデータからも、FC東京が危険なボールをペナルティエリア内に配給させなかった事実が分かる。ゴールライン際まで突破を許してマイナス方向に上げさせたクロスは皆無で、ほとんどのボールがゴール方向へ向かったものだ。サイドで相手に時間を使わせ陣形の整った状況であれば、圧倒的なフィジカルを誇るセンターフォワードがいるわけではない浦和を相手にこうしたボールを跳ね返すのは、難しい事ではない。
セットプレーからの失点で勝ち星こそ逃したものの、FC東京コンパクトな守備ブロックを90分間保って安定感を見せた。中盤の守備の負担が大きい分、今後はディエゴ・オリベイラら前線のタレントを活かす攻撃が長谷川監督の腕の見せ所となるが、優勝候補の一角である浦和を封じたディフェンスは今シーズンの土台となる可能性を十分に感じさせるものだった。
著者:マリオ・カワタ
ドイツ在住のフットボールトライブライター。Twitter:@Mario_GCC
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