欧州その他 海外日本人選手

久保裕也への信頼は揺らがない。混乱に陥るヘントと、ファンが心待ちにするボンバーの爆発

それでも変わらない久保への信頼

 一週間後、ヘントはメヘレンとのアウェイ戦に挑んだ。そしてまたしても久保のチームは、シーズンの大事な初勝利を挙げることができなかった。前半、久保はゴールに近づいたが、メヘレンのゴールキーパーが素晴らしいセーブを披露した。

 後半には、珍しい現象を目の当たりにする。ナイジェリア人のエースFWサムエル・カルによる右ウイングでの見事な走りの後、久保にまたとないチャンスが訪れた。ゴールキーパーはすでに負かされたように見えた。しかし久保のヘディングシュートが、想像を絶するほどサイドに外れてしまったのだ。彼は得点の大チャンスを逃し、その時点で0-1でリードしていた試合を決めることができなかった。

 同試合で勝ち点3を持ち帰るはずだった彼らに、またしても不幸が突き刺さる。ヘントの守備陣はフリーキックからの意表をついたパスに驚かされ、同点を許してしまった。後に久保のチームメイトであるMFブレヒト・デヤーゲレが話した。

「もちろん、普段の裕也はああいうチャンスを決めるけど、済んだことを嘆いてもしょうがない。あのボールを決めなきゃならなかったことは彼が知ってるし、人生に起こることと一緒だよ」

 メヘレン戦の後、久保自身は外部との連絡を断たれ、落胆してAFASスタジアムを後にした。にもかかわらず、この日本人ストライカーはヘントのサッカーコミュニティーの自信を依然として支えている。昨シーズンのプレーで彼は絶大な人気を得ていて、誰もが“スシボンバー”がすぐに再び得点をあげると信じているのだ。デヤーゲレは付け加えてこう言った。

「今こそ僕たちはチームとして団結し、一生懸命やらなきゃならない。結果はついてくると信じているし、裕也のゴールも同じだ。彼はそういう才能のある人だし、僕たちはみんな彼を信じている」

 キャリアの中で全てのプロサッカー選手が直面しなければならない経験が、久保に今突きつけられている。雲の上でプレーしているように見えたヘントでの最初の数ヶ月を経て、彼は勲章の向こう側をつかもうとしているのだ。疑いの影なくこの一時的な逆境を受け入れることができれば、ヘントはすぐに久保の新ゴールを祝うことになるだろう。

ページ 3 / 3