[8.26 F1第10節 大阪 6―1 湘南 岸和田]
第10節にして、ようやく訪れたチャンスだった。今季、バサジィ大分からシュライカー大阪へ移籍加入したGK檜山昇吾は、これまでリーグ戦で先発する機会がなかった。チームを率いる比嘉リカルド監督の選手起用は、石橋を叩いて、叩いて、叩いてから渡るくらい、慎重だ。GKはたった一人しかプレーできないため、第2GK以降になると、なかなか出場機会を得るのが難しい。そんな中でも練習から妥協することなく取り組んだ檜山は、チームが第9節で立川・府中に2-4で敗れたことを受け、先発出場の機会を得た。守備では最少失点に抑えつつも、これまで以上に広い範囲をカバーする姿を見せ、攻撃でも前線の選手たちへ好フィードを送った。この試合、FPアルトゥールがハットトリックを達成したが、マン・オブ・ザ・マッチ(MOM)に選出されたのは檜山だった。MOMが発表されると、不断の努力を見てきたチームメイトたちからは歓声が上がった。充実した時間を過ごすGKは、大阪を移籍先に選んだ理由、自身で感じ取っている成長について話してくれた。
以下、試合後の大阪GK檜山昇吾選手のコメント
――初先発でホーム初勝利、おめでとうございます。
檜山 ありがとうございます。途中選抜はあったのですが、大阪に来てからは初先発でした。
――比嘉リカルド監督が、「これまでベンチでも一度も腐らなかった」と褒めていました。
檜山 ずっと「我慢しろ」ということは言われていましたね。GKは簡単に変えたくないと。
――FPの使い方を見ても、比嘉監督は慎重ですよね。
檜山 そうです。今日でいうと最後、5点目くらい入ったときに若手を使うかなと思っても、6点目が入ってからじゃないと出さない。GKの使い方も、それくらい慎重ですし、(柿原選手が)今までやってきたぶんもあります。「1回ミスをしたからといって交代すると、そのGKが自信を取り戻すのも大変になる」と、比嘉監督は言っていました。でも、いくつかのクラブはコロコロGKを変えたりします。試合中に変えるのは、そもそもありえないと自分でも思っていたので、比嘉さんの考え方、言っていることはGKとしても「確かにそうだな」と思うことだったので、それならひたすら自分にできることをやって、チャンスが来たら、そのときにしっかり出せるようにと思ってやっていました。
――今日はしっかり出しましたね。
檜山 良かったです(笑)。でも、課題というのもすごく見えました。
――大分にいたときよりも、守備範囲が広くなりますね。
檜山 そうですね。大阪はすごく前から行くから、裏のカバーは全然違いますね。だから、練習のときから終わったら、めっちゃ疲れているんですよ。あれ? なんでこんなに疲れているんだろうな? と思ったら守備範囲もそうですし、やらなければいけない仕事が多いんです。慣れてきたら変わると思いますが、練習のときから大分よりも疲れるなと感じていました。みんな集中力を高くやっていることもあると思いますが、そこはいまだに慣れないですね。守備範囲のところは。今日もGKのスローのところでもっと出ないといけなかったのに、出られなかったというのが自分で感じました。
――細かくベンチの比嘉監督が「OK!」と声をかけたりしていましたし、細かく確認している様子が見られましたが?
檜山 はい。そういうのは言ってもらえると自信にもなります。ただ、やりながら「もう少し出たいな」と自分で思ったりします。練習では行けているのに、試合では行けていないなというのも、感じましたね。
――試合に出てそういう感覚をつかめると、次の練習からまた充実度が変わってきますね。
檜山 はい。やっぱり試合に出ないと始まらないなと思いました。だから、ようやくスタートラインに立てたなと感じます。
――そこでホーム初勝利という結果が出たのは、チームとしてもよかったですし、先ほどの比嘉監督の理論でいえば、GKとして固定される可能性も出てきますね。
檜山 でも、積み重ねも大事だと思うので、積み重ねられるようにしていきたいです。
――オフには関東のクラブからもオファーがあったと聞いています。これまでのプレースタイルからいけば、そっちの方が合うのかなと思ったのですが?
檜山 すごく迷ったんです。スタイルのこともそうですし、比嘉監督のことも元チームメイトとかに聞いたりしていました。でも、一番大きかったのは、サダさん(定永久男GKコーチ)がいたからです。
――今日の試合にはいなかったですよね?
檜山 はい。でも、練習のときにはいるので。充実しています。大分時代は入れ替わりでしたが、FリーグU-23選抜でフットサルを始めたばかりのときに、GKコーチをされていました。
――そこで接点があったんですね。
檜山 はい。そこですごく教えてもらっていましたし、会場で会ったときも話したりしていました。やっぱりサダさんに教わりたいなという気持ちがありました。サダさんもいて、自分のプレーの幅を広げられるとも思ったので、大阪に行くことを決めました。
――ヒゲが成長していますが、プレーも成長している実感は得られていますか?
檜山 ちょっとイメージ変えてみました(笑)。プレーも、1対1もそうなのですが、スローが一番変わったと思います。スローが大事だなというのは、あらためて思いました。苦手だったんですよ。僕自身、手が小さくて、ボールをつかめないんですよ。
――(手の平を見せてもらう)身長の割には、本当に小さいですね!
檜山 少し汗をかくと良い感じにつかめるんですが、何もないとツルっと言ってしまうんですよね。そこでサダさんには「指立て伏せをしろ」と言われました。「握力もつくし、ボールをつかめるようになる。突き指もしなくなるから」と教わりました。
――それで結構、変わりましたか?
檜山 やっぱり以前よりもボールをつかめるようになりました。投げ方も初めて教わりました。それですごくスピードが出るようになりましたね。今までグラウンダーのボールも自信がなかったので、安パイに下から投げてしまうこともあったのですが、今はサダさんの練習のおかげで、横からも自信を持って投げられるようになりました。
――横から投げるのであれば、手が小さくても、腕は長いですし、遠心力で速いボールが投げられそうですね。
檜山 はい。今日も投げる機会が多かったですが、前でボールを受けられるピヴォは、チアゴ、(相井)忍さん、(芝野)創太さんもいますからね。練習中は、つなぐことが多いのであまり投げないんですよね。だから、今日は今までで一番投げたと思います。今日も試合前、そんなに自信があるわけではなかったのですが、普段の練習でやってきたことが出せたなと思いましたね。
――次の試合からは、スローも注目してもらいたいですね。
檜山 そうっすね。……いや、まだそこまではいってないですね(笑)。まだ最低限なので。
――でも、それが積み重なっていくと違いますよ。檜山選手のサイズのGKはなかなかいないですし、生かさないともったいないですね。
檜山 今はすごく充実しています。大分のときとか、GKコーチがいない中で、自分で練習メニューを考えてやってきました。スクールもほとんどなくて、練習は午前中だけ。午後は自分のやりたいことがやれるっていう環境でしたが、今はスクールの量も増えて、午後に自主練習をするのも難しい状況ですが、それでもGKとしての充実度は違っています。
――大阪は次節、すみだと対戦します。相手のGK矢澤大夢選手は同じGKとしてどう見ていますか?
檜山 僕とも年齢が近いですし、負けたくないですね。去年、すごく成長した印象があります。ちょっと今年、順位は低いんですが、どうしたんですかね。今日の湘南戦のスカウティング映像は、すみだ戦もあったのですが、ピヴォの収まることがあまりなかったので、『やっぱり(FP清水和也が)抜けたのは大きかったかなと思いました。
――連勝で大阪セントラル開催を迎えたいですね。
檜山 はい。連勝して迎えられるように、また練習から頑張ろうと思います。
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