著者:マリオ・カワタ
ここ数年のヨーロッパを中心とするサッカー界の移籍市場は、巨大化するばかりだ。1億ユーロ(約130億円)を超える取引は珍しくなくなり、移籍期間外も一年中メディアがスター選手の移籍の噂について報じている。移籍を巡って大金が動き常に情報戦が繰り広げられる現状は、怪しい金の流れの温床となるだけでなく、選手とクラブがサッカーに集中することさえ妨げているように見える。
英紙『イブニング・スタンダード』は8日、こうした問題に対処するべくFIFAのジャンニ・インファンティーノ会長が進める移籍市場改革について報じた。その内容は現在のサッカー界における財政的な問題を是正し健全な方向へと導くことを目的としており、具体的には移籍可能期間の変更から取引の監視システムまで多岐に渡る。先週ロンドンで行われたサッカー代理人連盟(AFA)の会合にはFIFAやUEFA、イングランドの選手労働組合の代表者も出席し、これらの改革案について議論が交わされた。特に重要ないくつかのポイントについて、詳しく見てみよう。
まずはヨーロッパのメインの移籍市場となる夏の移籍期間を、8月上旬締め切りとすることが検討されている。既にプレミアリーグでは、今夏の移籍ウィンドウをこれまでの8月31日ではなく8月9日に閉じることを決定している。これにより選手の獲得はシーズン開幕前に終了することになり、リーグ戦が始まってからも選手を惑わす多くの移籍話が飛び交うことはなくなる(選手の売却は8月31日までのため、国外への放出は可能)。現時点では移籍市場終了を早めたのはプレミアリーグだけだが、改革案ではそれを欧州全体に拡大することになる。十分な移籍期間さえ確保できれば、新シーズンの開幕前に選手の入れ替えを完了することはむしろ自然な流れであり、選手とクラブがプレーに集中できる環境が整えば競技面でもプラスになるだろう。
冬の移籍市場も、改革の対象となる。現状で提案されているのは期間の変更ではなく、各クラブの1月の移籍の数を4に制限することだ。こちらも目的は、シーズン中に選手とクラブの集中を乱す要因を減らすことにある。ただ冬の移籍期間はシーズン前半戦で構想外になった選手などにとっては、キャリアを左右する重要な時期となるケースもあり、シーズン中の離脱が難しくなればクラブだけでなく選手側にもより慎重な判断が求められるかもしれない。これらの変更は、早ければ来年初めから導入される。
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