
2025シーズンのJ1リーグでは、28試合を消化した段階においても熾烈な残留争いが続いている。とりわけ勝ち点39のセレッソ大阪(10位)やファジアーノ岡山(11位)、勝ち点37のアビスパ福岡(12位)は、いまだ勝ち点45前後とされる「残留ライン」に届かず、安心できる立場にはない。
こうした状況下で、下位クラブの監督に対して非常に厳しい視線が注がれている。横浜FC(19位)は24節終了時点で5勝4分15敗の勝ち点19と降格圏に沈み、直近6試合を連敗中だったため、7月23日に四方田修平監督を解任。後任には三浦文丈コーチが昇格したものの、この監督交代が成長につながるかは不透明だ。また、アルビレックス新潟(20位)は先立って6月23日に樹森大介前監督(8月26日付けでJ3栃木SCトップチームコーチ就任)を解任したものの、入江徹監督の下でも成績は伸びていない。
前述したチーム以外で、例えJ1残留を果たしても、成績不振やチームの将来性への疑問から、監督の座が安泰とは言い難い状況が見られる。ここでは特に「続投が厳しい」と見られているJ1監督4名を取り上げ、彼らが直面する課題とその背景を整理し、今オフに退任となる可能性について分析してみたい。

長谷川健太監督(名古屋グランパス/2022年就任)
日本人監督初3冠の栄光も今は昔
今2025シーズン、名古屋グランパスは敗れるたびにネット上で長谷川健太監督の解任論が飛び交い、28試合消化時点で16位と降格圏に迫る危機的な状況に立たされている。
長谷川監督は、清水エスパルスで2005年に監督キャリアをスタートさせ、6シーズンを務めながらタイトルには届かなかったが、2013年J2に降格したガンバ大阪の監督に就任すると、わずか1年でJ2優勝とJ1返り咲きを達成。翌2014シーズンには国内3冠も達成し、一躍名将の仲間入りを果たした。
2018年からFC東京を4シーズン率い、2020シーズンにはルヴァン杯制覇を果たしたがリーグ制覇には手が届かず、2021シーズン途中で辞任。2022シーズンから名古屋の監督に就任し、日本3大都市を代表するクラブすべてを率いた唯一の指揮官となった。
指導スタイルは現役時代のアグレッシブなプレーとは対照的で、堅守速攻を志向するリアリズム型。これによって攻撃陣の得点力不足と、守備にも徐々に綻びが見え始めている点が、サポーターから「保守的すぎて見応えがない」と評される要因となっている。
8月上旬の会見で「選手たちは全力を尽くしている。結果は必ずついてくる」と前向きな言葉を残したと報じられたが、具体的な改善は見られず、時間だけが過ぎている状況だ。昨季はリーグ戦11位に終わりながらもルヴァン杯制覇で“延命”した経緯があるため、今季タイトル獲得が絶望的な現状では「今度こそ今季限り」との声が強まっている。

秋葉忠宏監督(清水エスパルス/2023年就任)
戦術の固定化が招いた停滞
戦術の固定化がチームの停滞を招き、現在13位の清水エスパルス。秋葉忠宏監督の続投は2025シーズン後半の現時点で危うさを増している。2024年にはJ2優勝でJ1復帰を果たし、クラブの悲願を達成したが、昇格後は「10位以内」を掲げた目標に届かず、残留争いに巻き込まれる戦況となっている。
秋葉監督は、J2時代の2023シーズン途中から、ゼ・リカルド監督解任に伴い清水の監督に昇格。そのシーズンはプレーオフで敗れ昇格を逃したが、2024シーズンにはJ2で優勝し、J1に復帰させた。
攻撃的サッカーを志向する一方で、その中心は37歳のMF乾貴士といったベテランに依存。高卒ルーキーMF嶋本悠大の台頭が唯一の明るい材料とされるが、裏を返せば若手の突き上げが乏しく、戦術のバリエーションも限られていることを意味する。
サポーターからは「J2時代からの戦術に変化がない」「柔軟性を欠く」との批判も強まり、現状を受けてクラブ上層部がシーズン終了後の監督交代を検討する可能性は現実味を帯びてきている。もっとも、秋葉監督を慕って加入した選手が多く在籍するため、もし交代に踏み切ればチーム編成そのものを大きく見直す必要に迫られるだろう。反町康治GMにとっては難しい決断が迫られている。
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