ペップ・グアルディオラのマンチェスター・シティは横暴でとめられそうにない。4つの主要な大会のトロフィーは容易には逃さない。今シーズンのプレミアリーグにおける彼らの優位は堅く、1月の移籍マーケットはほぼチャンピオンズリーグのためだけを考えて行われた。
アイメリク・ラポルテはクラブ新記録となる57000万ポンド(約63億円)でアスレティック・ビルバオから加入し、再来週バーゼルに向かうシティのディフェンスにすぐに加わることができる。リヤド・マフレズとアレクシス・サンチェスが加入した場合もそうだった。シャフタール・ドネツクのフレッジが加入することはなかったが、彼はグループリーグでシティと対戦しているのでヨーロッパの舞台で中盤を強化するには至らなかっただろう。
グアルディオラはサー・アレックス・ファーガソンのような古いタイプの監督がクラブに与える影響力を持っている。「マンチェスターユナイテッドにおいて最も重要な人物が監督であることを忘れてはならない」ファーガソンが監督就任25周年を迎えた際に言った言葉だ。「そうでなければいけない」
アーセン・ベンゲルは最近グアルディオラのことを羨望と以前の自分の思い出が入り混じった思いで見つめていることだろう。アーセナルで、彼はオフィスにいる新参者のがり勉スベン・ミスリンタト、フランシス・カジガオ、ラウール・サンレヒ、そしてこれらの人物を連れてきたCEOのイバン・ガジディスたちと上手くやっていかなければならない。
グアルディオラはファーガソン以来誰も持ちえなかったものをシティで手にしている。カタルーニャ人が築くものはスコットランド人がユナイテッドで築いたようなものにはならないだろう。彼は彼が60歳になるころにはロッカールームにいないはずだと明言している。
グアルディオラが最終的にマンチェスター行きを決意した理由はバイエルンでの在任期間がそうであったように、シティでは3年間しか指揮をとらなくていいだろうというところだ。彼が経験した身体的苦痛と、バルセロナでの4シーズン目にチームを再構築した苦悩の両方が3シーズンを強調する理由だ。
シティの記者がグアルディオラに対する契約延長オファーが提示されたことを報告したものの、彼らはまだ気が休まらないはずだ。グアルディオラがマンチェスターの中心地に物件を購入したことはいい前触れであり、ジョゼ・モウリーニョがローリー・ホテルから頑なに離れないことと比べればなおさらだ。確定的なことではないけれど。
グアルディオラに彼の望むものを与えるために、シティのヒエラルキーは構成されている。確かに異なったフットボールの時代とはいえ、ファーガソンは低迷しているクラブを組織した。しかしながら、グアルディオラがクラブに到着したときには彼の注文にあった選手がいて、彼の気まぐれな要求はほぼ全て叶えられた。
多くの資金が投入され続けることでアントニオ・コンテがチェルシーで感じたような、若い選手を起用しなければならないというプレッシャーが彼に少しかかっている。6人の選手しかベンチに登録しなかったバーンリー戦は、彼のチームを強化しうるアカデミーの選手はほんのわずかしかいないことを暗示していた。
彼の愛するカタルーニャに拠点を置くジローナの株式を代理人と彼の弟であるペレ・グアルディオラと協力して44.3%購入したことは、ペップが組織により深く関割ることを意味する。それだけでなくシティ・フットボール・グループにフランチャイズプロジェクトを提供し、シティの選手たちがヨーロッパのトップリーグで成長する環境を創造することにもつながる。
グアルディオラはシティでそうであるように、カタルーニャでも彼のほしいものを手にする。そして陣容はヨーロッパ最高のものとなるわけだ。ヨーロッパの強豪クラブに彼のチームほど強力なクラブは見当たらない。5月26日にキエフでトロフィーを勝ち取ることはアブダビにとって最終段階であり、グアルディオラの稀代の名将の地位を確固たるものにする。
それはグアルディオラの3年間だけという制限を抑え込む効果があるかもしれない。そしてもし今シーズンのようにイングランドでの生活が楽であれば、退屈は免れることだろう。バルセロナでの優越はどれくらい多くのミッドフィールダーをピッチに配置できるか、といった実験的な様相を呈していたし、ブンデスリーガにおけるバイエルンの覇権はチャンピオンズリーグを制覇するためにこなさなければいけない試合に成り下がっていた。準決勝に進出することが1度もできなかったことは、自国リーグのレベルが低すぎるが故にできたデキモノだ。
反対に、モウリーニョ率いるレアル・マドリードとの白熱した戦いは彼をマンハッタンで1年間過ごさせた。バルサは2011/12シーズンのタイトルをグアルディオラがクラブを去ることを知って失った。インテンシティと要求。そして、政治が彼をむしばみ伝記作家のマルティ・ペレナウが書いたようにグアルディオラは彼自身を深く掘り下げ、彼が選手たちに要求する以上に厳しいところまで達している。
他にも理由はあるかもしれない。イングランドのフットボールにおいて自分の選手たちが激しいタックル受けることに対する不満はバーンリー戦の議論の余地があるメンバー選考に見出すことができる。また彼の夢であるブラジル代表を率いる初めての外国人監督になる夢に向かって翼を広げようともしている。アメリカの生活は彼の好みでもあり、ジローナのプロジェクトは母国に帰る機会を与えるかもしれない。
シティのオーナーであり幹部であるフェレン・ソリアーノとチキ・ベギリスタインは、グアルディオラの上品さと向上心による気ままさが夢を実現するために、常に求めてきた監督を途中で失う原因になることを恐れるべきだろう。彼らとシティサポーターはグアルディオラがいるこの時間を楽しむべきだ。
著者:ジョン・ブルウィン(tifofootball.com)
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