今年もこの時期がやってきた。ある意味では試合よりも面白い「ストーブリーグ」の季節だ。12月12日、スポーツニッポン新聞のウェブサイト版では、来2025シーズンの開幕戦として東京ヴェルディ対清水エスパルスが国立競技場で行われることが伝えられた。Jリーグからの公式発表は13日だが、いち早くスッパ抜いた形だ。
その他、スポーツ紙上およびニュースサイトでは、様々な移籍の噂があたかも決まったかのように報じられている。なぜこのような報道がなされ、記者たちはどういうルートで情報を仕入れ裏を取っているのか。さらに、選手の移籍という非常にデリケートな報道を“我先に”とばかりにかき立てる裏事情を、長くスポーツ新聞に勤務した経験から考察したい。
スポーツ紙におけるサッカー記事の優先度
まず前提として、スポーツ記者の花形と言えば今も昔もプロ野球だ。中でもエースと呼ばれる記者は決まって巨人(読売ジャイアンツ)担当となる。
当然ながら12球団にそれぞれ専属記者を配置し、巨人や阪神(阪神タイガース)、ソフトバンク(福岡ソフトバンクホークス)といった人気球団ともなれば、複数人の記者を置いている。現在、プロ野球は契約更改やFA移籍の季節だが、年が明け、2月のキャンプインまで、1か月の空白期間が生じる。この“空白の1か月”はスポーツ紙記者にとっては、異動(あるいは配置換え)の季節でもあるのだ。
残念なことだが、スポーツ紙におけるサッカー担当のプライオリティーは年々下がってきているのが現状だ。かつては、カズ(三浦知良)や中田英寿氏、中村俊輔氏、城彰二氏などが欧州移籍を果たすと、スポーツ紙各社は自社の記者を特派員として派遣し、その試合結果を報じるため、週末となれば刷り出し時間を遅らせるなどといった体制を取っていた。
しかし現在、欧州で活躍する選手も増え、試合もリアルタイムで見られることになったことで、外部の現地通信員を活用するケースが当たり前となり、サッカー記者が海外出張するのは、ワールドカップ予選と本戦くらいとなった。
ACL(AFCチャンピオンズリーグ)2023/24で決勝に進出した横浜F・マリノスを追ってアル・アイン(UAE)との第2戦(1-5/合計スコア3-6で敗戦)のために、敵地のハッザーア・ビンザイード・スタジアムに取材に訪れたスポーツ紙記者はゼロ。辛うじてNHKがニュースサイトで、当時のハリー・キューウェル監督やDF松原健、主将を務めるMF喜田拓也のコメントを掲載するにとどまった。
スポーツ紙におけるサッカー記事の優先度が下がる中、記者たちはジレンマを抱えつつ、異動のチャンスを伺うことは無理からぬことだ。そして晴れて異動の内示を受けるのが、この時期なのだ。
コメントランキング