WEリーグ(日本女子プロサッカーリーグ)では、クラブ関係者や国内報道陣向けに海外女子サッカーの事例や知識を深めるためのオンライン勉強会を定期的に開催している。2023年4月にはリーガ・F(スペイン1部)、2024年2月にはイングランド1部の女子スーパーリーグ(WSL)について学ぶ場が設けられた。
この記事では、今年の勉強会で取り上げられたWSLを含む英国女子サッカー成長の背景について、いくつかのポイントを紹介していく。
リーグ基盤に初代レジェンドの功績
今年2月20日に開催された勉強会には、ゲスト講師としてWSLのマーケティングコミュニケーション本部長キャサリン・ローリー氏が参加。英国を代表するリーグについて貴重な生の声を聞くことができた。ローリー氏は、WSL開幕初シーズンとなった2011年4月のアーセナル女子とチェルシー女子のスターティングメンバー写真を見せながら「(WSLが)始まった当初のことを覚えておくのは非常に大切なこと。当時なかったことが現在はあったり、一方で変わらないものもある」と語った。
現在は12クラブのWSLだが、開幕当時は今より4クラブ少ない8クラブ(下記参照)でスタートし、リーグの初タイトルを手にしたのはアーセナル・ウィメンだった。
- アーセナル・ウィメン
- バーミンガム・シティ・レディース
- ブリストル・シティ・ウィメン(旧ブリストル・アカデミー)
- チェルシー・ウィメン
- ドンカスター・ローバーズ・ベルズ・レディース
- エバートン、ノッツ・カウンティ・レディース(旧リンカーン・レディース)
- リバプール女子
開幕から14年、日本はもちろん世界が注目するまでの名リーグとなったWSL。その背景には、キーとなる選手の存在が大きかったという。
たとえば、元イングランド代表選手のジル・スコットやアレックス・スコット、現役選手のDFステフ・ホートン(マンチェスター・シティ)、DFルーシー・ブロンズ(バルセロナ・フェメニ)は、同リーグの初期から名プレーヤーとして活躍し女子サッカーを牽引する存在として大きな影響を与えた。いわば、現WSLの基礎を築いたレジェンドたちだ。
女子リーグとキーパーソンとの出会い
WSLが開幕した2011年4月から昨2023年6月までの期間は、イングランドの女子サッカー界にとって重要な時期となった。特にローリー氏がFA(フットボール・アソシエーション)に参加した2016年は、激動の中間地点だったため貴重な経験を多く積んだという。
当時のFA内部では部門が細分化され、女子サッカー繁栄に熱心な仲間も多く運営の構造自体は悪くなかった。一方、予算やプライオリティは決して良好とは言えない状況だったらしい。そんな状況下で女子サッカー界を後押しした人物が、スー・キャンベル氏だ。同氏は2016年3月にFAに参加し、2018年にはディレクターとして女子サッカーの草の根活動からプロのトップリーグまでを幅広く担当。多大な功績を残している人物だ。ローリー氏いわく、同氏の存在があったからこそ英国女子サッカーが発展し現在があるという。
キャンベル氏が最も大切にしている軸は「女子サッカーの可能性」だ。まずは自分自身がその可能性を信じること。そしてFA内の仲間たちを巻き込みながら、女子サッカーの戦略を明確にわかりやすくしていくこと。ひとくちに戦略と言っても、単にリーグやクラブだけを特定せず、草の根活動や指導者、審判、ファンやサポーターも含め、女子サッカーに関わる全てのフィールドを視野に入れた戦略だ。
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