日本に20年以上住んだ経験があるチャン・ホア・ビン会長のもと、クラブの「日本化」を謳ったサイゴンFC(ベトナム)が消滅の危機に晒されている。既に選手・スタッフは誰もいない状態となり、現在はクラブ名だけが残っている状態だ。
サイゴンFCと言えば2年前に、MF松井大輔(現Y.S.C.C)、FW高崎寛之(元松本山雅)、MFウ・サンホ(現FC大阪)、MF苅部隆太郎(元FC岐阜)といったJリーグ経験者を相次いで獲得。さらに霜田正浩(現松本山雅監督)をシニアダイレクターに招聘し、日本のメディアでも話題となったため、クラブ名に聞き覚えがある人もいるだろう。
大改革からの低迷
サイゴンFCは、2020シーズンにクラブ史上最高のリーグ3位という成績を収めた後、翌シーズンにクラブの大改革を敢行。3位躍進に貢献した主力の大半を解雇して、日本人選手を含む新戦力を大量に獲得した。中でもスター選手である松井大輔の注目度は高く、同シーズンには多くの日系企業がスポンサーに就任し、スタジアムには現地在住邦人が大挙して押し寄せた。
しかし、性急な改革が裏目に出たのかクラブは低迷。前2020シーズンの躍進が嘘だったかのように低空飛行を続け、新型コロナの感染拡大でリーグ中止が決まった第12節時点で14チーム中13位に沈んだ。この間、サイゴンFCは同年のリーグ最多敗戦と最長連敗という不名誉な記録を残している。期待された松井と高崎も結果を残せず、サイゴンFC在籍中はいずれも公式戦無得点。シーズン序盤に監督に就任した霜田正浩氏は3連敗で即解任となるなど、クラブの「日本化」は完全なる失敗に終わった。
リーグ中止のおかげで辛くも1部に残留したサイゴンFCは迎えた翌2022年、日本人選手なしで新シーズンに臨んだ。将来有望な若手を多数獲得し、育てながら戦う方針だったが、シーズン中にビン会長の電撃辞任、メインスポンサーの交代、賞与未払い、助っ人の遠征帯同ボイコット、所属選手のアマチュア大会無断出場、テクニカルダイレクターの電撃辞任など様々な問題が発生。結局、サイゴンFCは大方の予想通り最下位に沈んで2部降格となった。
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