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久保建英も構想内だった?ビジャレアルをEL決勝へ導いたエメリ流ターンオーバー

ウナイ・エメリ監督 写真提供: Gettyimages

UEFAヨーロッパリーグ(EL)準決勝。5月7日にスペインのビジャレアルがイングランドのアーセナルを2戦合計2-1で下し、クラブ史上初の国際大会決勝進出となるELファイナリストの権利を勝ち取った。

ビジャレアルを指揮するウナイ・エメリ監督は、昨季途中にこの日対戦したアーセナルの指揮官を解任された“因縁”もあっただけに、“してやったり”だろう。

2014年、EL優勝後のウナイ・エメリ監督 写真提供: Gettyimages

決勝進出率100%〜直近8年で5度目のファイナリストとなったエメリ

エメリはアーセナル就任1年目の2018-2019シーズンにもEL決勝に進出。チェルシー(イングランド)を相手に惜しくも優勝は逃したものの、スペインのセビージャ監督時代には2013-2014シーズンから同大会を3連覇。今季のビジャレアルでの決勝進出により、監督として直近の8シーズンで5度目のファイナリストとなっている。

ちなみにEL決勝進出を逃した3シーズン中2シーズンはフランスの絶対王者パリ・サンジェルマン(PSG)で指揮を執っていたため、チャンピオンズリーグ(CL)出場のためにELへは不参加。もう1シーズンはアーセナルでシーズン途中の解任となったため、こちらも決勝トーナメントを前に不参加であった。

つまり、エメリはフルシーズンを指揮してELへ参戦すれば、全て決勝進出へ導いたことになる。EL決勝進出率100%。ヨーロッパリーグは、“エメリカップ”と名前を変えても良いほどの圧倒的戦績である。

さらに今季はグループリーグから準決勝までの14試合を12勝2分の無敗。絶対的な結果を残している指揮官は、監督として臨んだヨーロッパリーグ通算(予選も含む)99戦64勝22分13敗という数字を叩き出している。

そして、今季のEL決勝が記念すべきEL100試合目の指揮となる。


ウナイ・エメリ監督 写真提供:Gettyimages

戦術的な特徴を持たない戦略家

エメリは、ジョゼップ・グアルディオラ(現マンチェスター・シティ監督)がポジショナルプレーで最強バルセロナ(2008-2012年)を構築し、真逆のアプローチで2013-2014シーズンのリーガ・エスパニョーラ(現ラ・リーガ)を制したディエゴ・シメオネ監督下のアトレティコ・マドリードの登場を経て、戦術的に多様化を見せ始めた時代以前からもリーガで戦い続けるスペインサッカー界が誇る知将である。

しかし、グアルディオラやシメオネはもちろん、リーガでは中小クラブの指揮を執る監督たちも戦術的な特徴を植え付ける戦術家が多い中、エメリは特にこれといった戦術的な特徴は持ち合わせていない。戦術的な特徴を持たない戦略家である。

失点は少ない方が良いし、ボールも持てないよりは持てた方が良い。だから、後方からのビルドアップにもトライできるチーム作りはする。ただし、無理には繋がずに危なくなったら前線のターゲットやスペースに放り込むのは許容範囲。プレスもハイプレスやミドル(中盤)プレスなど一通りできるし、リトリートして守備ブロックをカチッと構築できるレベルには持っていく。

オールマイティ過ぎて特徴がない。逆にどれもある一定のレベルにまではできるため、毎試合メンバーやシステム、狙いを変える。だから特徴となる“型”がないのだろう。

特にセビージャ時代(2013-2016)は敏腕スポーツディレクターのモンチを筆頭に、「安く買って高く売る」育成型クラブのビジネスモデルを専売特許としたチームだっただけに、その傾向は強かった。主力に育て上げても1年半以内にはビッグクラブに高額な移籍金を残して去っていく。だから戦術の縛りは最小限でオーソドックスな方が良いのだ。

今季就任したビジャレアルは21世紀に入って以降のスペインでは強豪ではあるが、主力が国内外のビッグクラブに引き抜かれる事情はセビージャと同じで、そのうえで「初タイトルの獲得」を狙うという難題にエメリはベストマッチしたわけだ。

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