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副審を小突いて4試合停止。浦和・金子拓郎への処分は妥当か“大甘”か

パオロ・ディ・カーニオ 写真:Getty Images

海外の基準はより厳格化

海外では審判への暴力に対する処分がより厳格で多岐にわたる。

1998年のプレミアリーグでは、シェフィールド・ウェンズデイのFWパオロ・ディ・カーニオが主審を突き倒し、11試合の出場停止と1万ポンドの罰金を受けた。この事例は、審判への接触の度合いが処分を重くした典型で、金子の小突き行為が4試合に留まった点と比べられる。ディ・カーニオの場合、主審が後ろに倒れるほどの強さで押し倒した点が問題視され、長期にわたる出場停止処分に至った。

UEFA(欧州サッカー連盟)は2013年、人種差別などの罰則強化とともに、審判への暴力行為に15試合以上の出場停止を導入。トルコ・スュペルリグでは2018年5月、イスタンブール・バシャクシェヒルMFアルダ・トゥラン(2022年引退)が審判に暴力を振るい、16試合の長期停止を科された。

また、今年9月21日のエールディビジAZアルクマール対フェイエノールト戦(3-3)では、AZの元オランダU-21代表DFウーター・ゴーズが日本代表FW上田綺世やDF渡辺剛らにプレーとは関係ない暴力行為を繰り返したにもかかわらず、試合中は警告1枚に留まった。しかし試合後、国内サッカーファンやフェイエノールトサポーターから批判が殺到し、10試合程度の出場停止を求める声が上がった。

一方で、プレー中の軽微な接触が数試合で済むケースもあり、処分は接触の強さや意図に左右される。


金子の背景と認識のズレ

埼玉県出身、日大卒の金子は、北海道コンサドーレ札幌(2019-2024)で頭角を現した後、2023年にクロアチアのディナモ・ザグレブへ期限付き移籍。翌年ベルギーのコルトレイクに完全移籍し、2024年夏に浦和へ帰還した。

欧州では判定への抗議が日常的に見られるが、審判への身体的接触は一線を越える行為として厳罰の対象だ。もし金子が「この程度の抗議は日常茶飯事」と感じていたとすれば、その認識は誤りだと言わざるを得ない。


この処分を全てのJリーガーはどう見るか

今回の処分は、Jリーグ規定に沿った最低基準での裁定である。ただし、暴行認定を免れたことに対し「大甘」との声も少なくない。欧州の厳格化傾向を踏まえると、4試合では抑止力に欠けるとの見方もある。

一方で、審判が転倒するような接触ではなかった点を考慮すれば、規定の線引きに忠実な判断とも言える。Jリーグにおいて審判への暴行(あるいは接触)という前例が稀少だったことを考慮すれば、この処分が今後、抑止力として機能するのか、以後の選手たちの試合での振る舞いを見るまで分からない。

審判保護とフェアプレーの尊重は、サッカーの根幹に関わる。今回の金子の処分は、その“境界線”を改めて可視化したと言えるだろう。

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名前:寺島武志

趣味:サッカー観戦(Jリーグ、欧州5大リーグ、欧州CL・EL)、映画鑑賞、ドラマ考察、野球観戦(巨人ファン、高校野球、東京六大学野球)、サッカー観戦を伴う旅行、スポーツバー巡り、競馬
好きなチーム:Jリーグでは清水エスパルス、福島ユナイテッドFC、欧州では「銀河系軍団(ロス・ガラクティコス)」と呼ばれた2000-06頃のレアルマドリード、当時37歳のカルロ・アンチェロッティを新監督に迎え、エンリコ・キエーザ、エルナン・クレスポ、リリアン・テュラム、ジャンフランコ・ゾラ、ファビオ・カンナヴァーロ、ジャンルイジ・ブッフォンらを擁した1996-97のパルマ

新卒で、UFO・宇宙人・ネッシー・カッパが1面を飾る某スポーツ新聞社に入社し、約24年在籍。その間、池袋コミュニティ・カレッジ主催の「後藤健生のサッカーライター養成講座」を受講。独立後は、映画・ドラマのレビューサイトなど、数社で執筆。
1993年のクラブ創設時からの清水エスパルスサポーター。1995年2月、サンプドリアvsユベントスを生観戦し、欧州サッカーにもハマる。以降、毎年渡欧し、訪れたスタジアムは50以上。ワールドカップは1998年フランス大会、2002年日韓大会、2018年ロシア大会、2022年カタール大会を現地観戦。2018年、2022年は日本代表のラウンド16敗退を見届け、未だ日本代表がワールドカップで勝った試合をこの目で見たこと無し。
“サッカーは究極のエンタメ”を信条に、清濁併せ吞む気概も持ちつつ、読者の皆様の関心に応える記事をお届けしていきたいと考えております。

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