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文学・神話・宇宙…オランダサッカー“珍名クラブ”の深い由来

ゴー・アヘッド・イーグルス(左)ヘラクレス・アルメロ(右)写真:Getty Images

オランダ1部リーグ「エールディビジ」の順位表を眺めていると、思わず目を引くユニークな名前のクラブがいくつも並んでいることに気づく。その由来を辿ってみると、クラブが誕生した時代背景や地域文化、さらには古典文学や神話の世界にまで行き着く。

本稿では、その中でも特に異彩を放つ4クラブ(ゴー・アヘッド・イーグルス、ヘラクレス・アルメロ、NACブレダ、SCテルスタ)に焦点を当てる。名前の背後にある物語をひも解きながら、オランダサッカーに息づく“名づけの美学”を探っていきたい。


ゴー・アヘッド・イーグルス 写真:Getty Images

ゴー・アヘッド・イーグルス(Go Ahead Eagles)

“前へ進め” 英語名に込めた地域の誇り

オランダ東部、人口約10万人のデーフェンテルを拠点とするクラブ。1902年に創設され、当初は「ビー・クイック(Be Quick=急げ)」という名称だった。1905年にDVVゴー・アヘッドに改名され、1971年に現在の「ゴー・アヘッド・イーグルス」となった。

「ゴー・アヘッド」の由来は諸説ある。設立者のひとりが愛読していたイギリスの小説から取ったとも言われるが、クラブ公式サイトでは「サッカー協会の要請による変更」とのみ説明されている。なぜ英語なのかも含めて具体的な由来は特定されていない。

一方、「イーグルス」はデーフェンテル市の紋章に描かれた鷲を由来とし、地域性とクラブの象徴性を高める目的で、1971年にウェールズ人指揮官バリー・ヒューズの提案で追加された。


ヘラクレス・アルメロ 写真:Getty Images

ヘラクレス・アルメロ(Heracles Almelo)

ギリシャ神話の英雄を冠した古豪

アルメロ(人口約7万2,000人)を本拠地とするこのクラブは、1903年の創設時から「ヘラクレス」の名を冠していた。名前の由来はギリシャ神話の英雄ヘラクレスで、創設メンバーは強さとヒーロー性をクラブの象徴としたいという思いを込めたとされる。

長く「ヘラクレス」として知られたが、1974年の財政難を経て「SCヘラクレス’74」と再出発。1998年には現在の名称に改め、ホームタウン名を加えることで地域との結びつきを強化した。

近年は低迷し、2022/23シーズンには2部での戦いも強いられたが、エールディビジ発足前のオランダ全国選手権では優勝2度を誇る古豪でもある。2005/06シーズンには、元日本代表FW平山相太(現一目千本桜FC feat.S.U.F.T.監督)が所属したことでも知られる。

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名前:寺島武志

趣味:サッカー観戦(Jリーグ、欧州5大リーグ、欧州CL・EL)、映画鑑賞、ドラマ考察、野球観戦(巨人ファン、高校野球、東京六大学野球)、サッカー観戦を伴う旅行、スポーツバー巡り、競馬
好きなチーム:Jリーグでは清水エスパルス、福島ユナイテッドFC、欧州では「銀河系軍団(ロス・ガラクティコス)」と呼ばれた2000-06頃のレアルマドリード、当時37歳のカルロ・アンチェロッティを新監督に迎え、エンリコ・キエーザ、エルナン・クレスポ、リリアン・テュラム、ジャンフランコ・ゾラ、ファビオ・カンナヴァーロ、ジャンルイジ・ブッフォンらを擁した1996-97のパルマ

新卒で、UFO・宇宙人・ネッシー・カッパが1面を飾る某スポーツ新聞社に入社し、約24年在籍。その間、池袋コミュニティ・カレッジ主催の「後藤健生のサッカーライター養成講座」を受講。独立後は、映画・ドラマのレビューサイトなど、数社で執筆。
1993年のクラブ創設時からの清水エスパルスサポーター。1995年2月、サンプドリアvsユベントスを生観戦し、欧州サッカーにもハマる。以降、毎年渡欧し、訪れたスタジアムは50以上。ワールドカップは1998年フランス大会、2002年日韓大会、2018年ロシア大会、2022年カタール大会を現地観戦。2018年、2022年は日本代表のラウンド16敗退を見届け、未だ日本代表がワールドカップで勝った試合をこの目で見たこと無し。
“サッカーは究極のエンタメ”を信条に、清濁併せ吞む気概も持ちつつ、読者の皆様の関心に応える記事をお届けしていきたいと考えております。

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