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Jリーグプレミアリーグ構想は、どのように推し進めていくべきか

埼玉スタジアム 写真:Getty Images

選考クラブの人気を測る重要な指標

Jリーグプレミアリーグ構想を実現する上で、まずクリアすべき課題が参加クラブの選出方法だ。選出基準やプロセスが“ブラックボックス”では、構想そのものの信用性が担保できず、計画自体が頓挫しかねない。

プレミアリーグに選出されたクラブは、Jリーグの顔として国内外にその価値を発信する役割を担うことになる。そのため、単に競技レベルが高いだけでなく、経営の安定性、集客力、施設、育成体制、地域貢献といった多角的な観点から、真にトップリーグにふさわしいクラブが選ばれる必要がある。選出基準として、主に以下の要素が複合的にかつ総合的に判断されるだろう。

過去の成績

過去の成績という面では、J1での優勝回数や順位、ACL(AFCチャンピオンズリーグ)など国際大会での成績などが考慮される可能性がある。単に過去の栄光だけでなく、継続的な強さを維持してきたかどうかが問われるだろう。選考直前の数シーズンにおけるリーグ順位や勝ち点が重要な指標となる。よって、安定して高いパフォーマンスを発揮しているクラブが有利になる。この計画が秘密裏に進行しているとすれば、J2降格は致命傷となり得る。

財務健全性

財務健全性は、クラブの“収益力”とも呼べるもので、スポンサー収入、入場料収入、グッズ収入など、クラブが自立して経営できるだけの収益基盤があるかどうかだ。具体的な売上規模の基準が設けられる可能性もある。健全な財務体質はリーグの安定運営に不可欠であり、債務超過が続いているクラブはここで撥ねられることは間違いない。Jリーグが導入しているクラブライセンス制度の財務基準が、より厳格な形で適用されるからだ。適切な情報開示やコンプライアンス体制が整備されているかどうかも重要なポイント。また、選手獲得や施設整備など、チーム強化や事業拡大に必要な投資を継続的に行える投資余力があるかどうかも見られるだろう。

スタジアム

プレミアリーグにふさわしいスタジアム規模も求められるだろう。現在のJ1スタジアム基準(収容人数15,000人以上・観客席の3分の1に屋根・天然芝)よりさらに厳しいAFC基準(観客席のうち10,000席以上が椅子席であることなど)が設定される可能性もある。さらに、VIPルームや記者席、バリアフリー設備、大型ビジョン、快適な観戦環境など、国際基準を満たすスタジアム設備が要求される。

このスタジアム問題を放置し、AFC基準どころかJ1基準すら満たせていない柏レイソルや清水エスパルスなどは、J1に居続けることが出来たとしても注意が必要で、対策は急務だ。さらに、クラブがスタジアムを所有し、優先利用権を保有していることが望ましいことは言うまでもないだろう。

集客力

集客力(平均入場者数)も、クラブ人気を測る重要な指標だ。ファンクラブ会員数やSNSフォロワー数も考慮される可能性がある。ホームタウンでの認知度や地域住民との連携、社会貢献活動の実績なども含め、Jリーグの理念である「地域密着」を高いレベルで実践しているクラブが評価されるはずだ。効果的なプロモーション活動やファンサービスを通じて、新たなファンを獲得し、スタジアムを満員にするためのマーケティング能力も問われるだろう。

育成組織の充実度

育成組織の充実度も重要だ。ユース(U-18)、ジュニアユース(U-15)、ジュニア(U-12)といった各年代のチーム編成、指導者の質、練習環境、スカウティング体制。トップチームへの選手輩出実績や、年代別代表への選出実績など。継続的に質の高い選手を育成できるシステムが構築されているかがポイントとなる。クラブ独自の育成方針や、長期的な視点での選手育成計画を有しているかどうかも評価されるだろう。


横浜F・マリノス サポーター 写真:Getty Images

新たな歴史の扉を開くリーグに期待

Jリーグにおけるプレミアリーグ構想は、単なるリーグ再編に留まらない、日本サッカー界の将来像を左右する壮大なプロジェクトだ。成功すれば、リーグの国際競争力は高まり、より多くのファンを魅了し、ゆくゆくは日本代表の強化にも繋がるだろう。また、クラブ経営の安定化は、長期的な視点での選手育成や投資を可能にし、日本サッカーの持続的な発展を支える基盤となるだろう。

しかし、その実現には多くの課題も存在する。最も大きな問題は合意形成の難しさに尽きる。全てのJ1クラブが納得する形での制度設計は容易ではない。特に、選考基準や分配金の配分については、慎重かつ丁寧な議論が求められる。また、プレミアリーグと下位リーグ間の経済的・戦力的な格差が生じ、リーグ全体の多様性や健全性が損なわれる格差拡大の懸念も考慮しなければならない。

選出されなかったクラブにとっては、リーグカテゴリーの変更(事実上の降格)やそれに伴う収益減などの大きな影響が予想される。これらのクラブへの配慮や、下位リーグの魅力向上策も同時に検討していくことが不可欠となる。

さらにはファンの理解と支持も不可欠だ。ただでさえ混乱が予想されるプレミアリーグへの移行に伴うスケジュール調整など、実務的な課題は山積みだ。Jリーグはプレミアリーグ構想の意義や目的をファンに丁寧に説明する責任が伴う。

選出基準の策定と選考プロセスにおいては最大限の透明性を確保し、全てのステークホルダーが納得できる形にしなければならない。そして選ばれたクラブは、日本サッカーの牽引役としての大きな責任を負うことになる。同時に、選ばれなかったクラブへの配慮と、Jリーグ全体の発展を見据えた施策も不可欠だ。

この構想が、日本サッカー界にとって真の「プレミア」な未来を切り拓くためのエポックメーキングな改革となることを、多くのサッカーファンが固唾を飲んで見守っている。Jリーグの英断とクラブの真摯な姿勢が、新たな歴史の扉を開くことを期待したい。

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名前:寺島武志

趣味:サッカー観戦(Jリーグ、欧州5大リーグ、欧州CL・EL)、映画鑑賞、ドラマ考察、野球観戦(巨人ファン、高校野球、東京六大学野球)、サッカー観戦を伴う旅行、スポーツバー巡り、競馬
好きなチーム:Jリーグでは清水エスパルス、福島ユナイテッドFC、欧州では「銀河系軍団(ロス・ガラクティコス)」と呼ばれた2000-06頃のレアルマドリード、当時37歳のカルロ・アンチェロッティを新監督に迎え、エンリコ・キエーザ、エルナン・クレスポ、リリアン・テュラム、ジャンフランコ・ゾラ、ファビオ・カンナヴァーロ、ジャンルイジ・ブッフォンらを擁した1996-97のパルマ

新卒で、UFO・宇宙人・ネッシー・カッパが1面を飾る某スポーツ新聞社に入社し、約24年在籍。その間、池袋コミュニティ・カレッジ主催の「後藤健生のサッカーライター養成講座」を受講。独立後は、映画・ドラマのレビューサイトなど、数社で執筆。
1993年のクラブ創設時からの清水エスパルスサポーター。1995年2月、サンプドリアvsユベントスを生観戦し、欧州サッカーにもハマる。以降、毎年渡欧し、訪れたスタジアムは50以上。ワールドカップは1998年フランス大会、2002年日韓大会、2018年ロシア大会、2022年カタール大会を現地観戦。2018年、2022年は日本代表のラウンド16敗退を見届け、未だ日本代表がワールドカップで勝った試合をこの目で見たこと無し。
“サッカーは究極のエンタメ”を信条に、清濁併せ吞む気概も持ちつつ、読者の皆様の関心に応える記事をお届けしていきたいと考えております。

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