
伊藤洋輝(バイエルン・ミュンヘン)
2024年夏にシュツットガルトからバイエルン・ミュンヘンへ移籍したDF伊藤洋輝は、不幸にも開幕前のプレシーズン中、それもバイエルンでの最初の試合で右足中足骨を骨折し、長期離脱を強いられた。11月には再手術を受け、復帰が遅れ今シーズンは絶望かと思い込まされた。
しかし、その思惑ははずれ、2025年2月にチーム練習へ合流。同月12日のセルティックとのCLベスト16をかけたプレーオフ第1戦(2-1)に途中出場を果たした。復帰戦ということもありややプレーに戸惑いも見せていたが、対人の強さや危機察知能力を発揮し、予想以上の仕上がりを感じさせた。
そして迎えたブンデスリーガの頂上決戦バイエル・レバークーゼンとの試合(2月16日0-0)には、復帰後初のスタメンに抜擢。伊藤は随所に左足から繰り出す長短を織り交ぜた絶妙なパスで、バイエルンの攻撃にアイデアを加えた。
守備では対峙したレバークーゼンのDFジェレミー・フリンポンに手を焼いていた印象だったが、足元の技術をいかしたプレーで相手のプレッシャーを見事にかわし、DFラインに安定感をもたらした印象を受けた。あわや失点かという場面でもゴールライン上で見事にチームを助け、チームメイトの韓国代表DFキム・ミンジェやDFダヨ・ウパメカノとの意思疎通も悪くなく、今後の活躍に期待が高まった上々の内容といっても差し支えはないだろう。
この2試合に限ったことだが、あえて課題を挙げるとするならば、試合勘を呼び戻すことと、相手に縦を切られた時の一瞬のスピードで置き去りにされないような、瞬間的な速さを磨く必要があるのかもしれない。

上田綺世(フェイエノールト)
フェイエノールトのFW上田綺世は、伸び悩んでいる選手の1人ではないだろうか。オランダのトップリーグであるエールディビジでは一定の出場機会を得ているものの、2023/24シーズンと今シーズンの23節までに38試合に出場し、8ゴール3アシスト。サポーターや関係者を納得させる数字とは言えないだろう。もちろん、1月にミランへ移籍したFWサンティアゴ・ヒメネスがエースとして君臨していたことや、途中出場や怪我での離脱など苦しい状況であったのは事実だが、それを踏まえても物足りない数字だ。
ただし、上田の実力に疑いがないのも事実だ。怪我から復帰後のCLバイエルン戦(1月23日3-0)では途中出場ながら貴重な追加点を決め、ヒメネス移籍後のエースとしてサポーターの期待を膨らませた。
しかし、上田はその後に行われたオランダ国内のライバルとの戦い、2月のアヤックス・アムステルダム戦(1-2)、PSVアイントホーフェンとのカップ戦(0-2)では全く目立つことなく、さらに注目を浴びたロッテルダム・ダービーの対スパルタ戦(3-0)ではFWフリアン・カランサに先発の座を奪われた。
また、CLのプレーオフの決勝トーナメント進出をかけた重要な一戦、ミラン戦(1-1)セカンドレグを怪我で欠場すると、ミランに移籍したヒメネスに得点を奪われチームは最悪の展開に陥った。さらにそこから現ライバルのFWカランサが値千金の同点ゴールを決め、サポーターやチームメイトに圧倒的な印象を植え付けてしまった。
もちろん、怪我での欠場ということもありやむを得ない状況ではあるが、上田の控えと目されていたカランサが大事な試合で次々と結果を残しており、上田は第二FWに降格したのは間違いないであろう。
上田のプレーに問題がある訳ではないが、伸び悩む一番の理由はコミニュケーション能力ではないだろうか。上田が欲しいタイミングでボールが出てこない場面が数々の試合を通じて明らかになっているのも事実で、上田を理解するチームメイトが少ないのではないかと思わされる。
オランダのメディアでも上田のコミニュケーション能力への批判は度々報じられている。実力は申し分ないだけにチームメイトやサポーターの心をつかむには、かつて同チームで活躍(2001-2005)した小野伸二(2023年引退)の様に語学を習得し、チームメイトに馴染む必要があるのかもしれない。
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