
プレミアリーグのアーセナルで長期政権(1996-2018)を築いていたフランスの名将で、J1名古屋グランパスの監督(1995-1996)も務めていたアーセン・ベンゲル元監督について、同監督の哲学を形成したのは名古屋での苦難や成功の経験が元になっていることを、2月25日にアーセナルに特化したメディア『Daily Cannon』が伝えている。
ベンゲル元監督は当時、フランスでの挫折と幻滅を乗り越え、新たな挑戦として名古屋の指揮を執ったという。当初、名古屋は混乱状態に陥っていたが、従来の常識に囚われず、選手それぞれの自主性と判断力を重視する革新的な指導法を採用した。
名古屋では、正義感の強いボロ・プリモラツ氏をヘッドコーチとして起用し、技術重視の哲学に適した2人のミッドフィールダー、フランク・デュリックス(2002年引退)やジェラール・パシ(1996年引退)をフランスから獲得するなどしたベンゲル監督。さらに、フランスのヴェルサイユで強化合宿を敢行し、精神力と創造力を高めるなど、従来の日本サッカーにはない手法を実施した。
これらの施策が浸透し、前年最下位の名古屋はベンゲル監督就任1年目でリーグ2位(1995)までに引き上がり、同年クラブ史上初となる天皇杯制覇も成し遂げている。
ベンゲル監督は後に「日本での経験が非常に役立った。あそこではみんな自制が利いていて、感情を見せれば笑われた」と語っており、彼の冷静な人柄や栄養管理を重視する姿勢も、名古屋で培われたものだとも指摘されている。
なお、当時のベンゲル監督の哲学、理想のサッカー観、日本サッカーについて感じたことなどが書かれた書籍『勝者のエスプリ』が、1997年にNHK出版から刊行されている。
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