
コンバートの成功例
昨季、鹿島でセンターフォワードからボランチにコンバートされて成功した前述の知念は、川崎フロンターレ(2017-2022)ではなかなか層の厚いFW陣に割って入ることができず、レンタル移籍先の大分トリニータ(2020)でも結果を残せず、選手として頭打ちの状態にあった。
ランコ・ポポヴィッチ元監督(2024)は負傷欠場したMF柴崎岳の代役に知念を抜擢。もう1人のボランチが現在ブンデスリーガのマインツでレギュラーを張っているMF佐野海舟だったという幸運もあったが、フィジカルを生かしたデュエル勝利数はJ1リーグ最多の138回を数えた。
ポポヴィッチ監督は2024シーズン途中に成績不振で鹿島を解任されたが、知念が持つポテンシャルを見抜き、コンバートを告げられた本人も驚くような起用法によって、思わぬ形でキャリアのピークを迎えた。もちろん本人の努力もあるが、思い切ったコンバートに踏み切った同監督の慧眼には恐れ入ったというしかない。
また、元日本代表主将の長谷部誠氏(現フランクフルトU-21コーチ兼日本代表コーチ)は浦和レッズ時代(2002-2007)はトップ下だったが、ヴォルフスブルク(2008-2013)、ニュルンベルク(2013-2014)、アイントラハト・フランクフルト(2014-2024)と移籍する度に徐々にポジションを後ろに下げていき、最終的にはリベロ(3バック中央)として活躍。40歳まで欧州で現役を続けた(ちなみにヴォルフスブルク時代の2011年9月17日のホッフェンハイム戦では味方GKが退場となり、交代枠を使い切っていたため後半35分からGKを務めたこともある)。
プロ野球でコンバートというとややネガティブなイメージがあるが、サッカーにおけるコンバートは自身の隠れた能力を呼び覚ます絶好の機会とも言える。現在、能力を発揮できずに燻っている選手も、きっかけ次第で「第2の知念」になれるチャンスがあるのだ。
選手が複数ポジションをこなせることが当たり前となった現在だが、サポーターを驚かせるようなコンバートがあるのか、シーズンを通して注目していきたい。
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