Jリーグ

金子翔太は藤枝MYFCで復活できるか。ドリブル技術向上で失ったもの

金子翔太(ジュビロ磐田所属時)写真:Getty Images

ドリブルの技術向上と共に失ったもの

163センチ58キロと、一般人と比べても小柄な部類に入る金子がプロ11年目を迎えようとしていることは、自身の努力の賜物でしかない。

しかし磐田での昨2024シーズンは、J1リーグで14試合1得点の記録を残したものの、夏場以降は先発出場どころかベンチにも入れない日々が続いた。リーグ戦の先発は7試合だが、フル出場はゼロ。総シュート数も8本にとどまった。小柄ながらも攻撃時の推進力とハードワークが持ち味だった金子。いったい彼に何が起き、そのプレースタイルに変化をもたらしたのだろうか。

転機は6年前に遡る。清水所属時代の2019年、かつてフットサルのFリーグ・バルドラール浦安に所属し、現在ドリブルデザイナーを称するYouTuber岡部将和氏のYouTube番組に出演したことだ。

岡部氏の指導を受けたことで、金子のドリブルの技術は上がったかもしれない。しかし同時にボールロストも増え運動量も減少。ドリブルが得点するための攻撃の手段ではなく、目的化してしまい、彼の良さが消えてしまった。昨シーズンのスタッツを見ると、14試合での合計出場時間608分でドリブルのポイントはなんとゼロ。かと言ってパス数が増えたわけでもなく、“どっちつかず”の選手になってしまったのだ。

YouTubeを見る限り、岡部氏のドリブル技術は目を見張るものがある。しかし、そもそも基本的に1対1で見せるドリブルデザイナーと、11人で行う集団競技のサッカーとは似て非なるものだ。岡部氏の曲芸師のような技は、試合では何の実用性もない。観衆は沸くかも知れないが、得点が入るわけでもない。

金子はプロとして生き抜くため、“ストロング”を得ようとドリブルを磨く目的で岡部氏に師事したのだろうだが、結果は武器を得るどころか、元々持っていた“ストロング”をも失ってしまった格好だ。


須藤大輔監督 写真:Getty Images

藤枝で金子の長所を再び

藤枝で3季目を迎える須藤監督は「エンターテインメントサッカー」のスローガンの下、超攻撃的サッカーを志向し、中でも「シュート数」にこだわりを持っている。金子をどのポジションで起用するのかは不明だが、昨季の矢村と同じ役割を与えれば、本来の金子の長所を再び呼び覚ますことができるのではないだろうか。

もちろん金子も拾われた以上、ドリブルという“宗教”から解脱し、自身の良さをもう一度思い返す必要があるだろう。それでもドリブルにこだわり、昨季のようなプレーを続けるようなら、1シーズンで切られることになる可能性も高いと思われる。

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名前:寺島武志

趣味:サッカー観戦(Jリーグ、欧州5大リーグ、欧州CL・EL)、映画鑑賞、ドラマ考察、野球観戦(巨人ファン、高校野球、東京六大学野球)、サッカー観戦を伴う旅行、スポーツバー巡り、競馬
好きなチーム:Jリーグでは清水エスパルス、福島ユナイテッドFC、欧州では「銀河系軍団(ロス・ガラクティコス)」と呼ばれた2000-06頃のレアルマドリード、当時37歳のカルロ・アンチェロッティを新監督に迎え、エンリコ・キエーザ、エルナン・クレスポ、リリアン・テュラム、ジャンフランコ・ゾラ、ファビオ・カンナヴァーロ、ジャンルイジ・ブッフォンらを擁した1996-97のパルマ、現在のお気に入りはシャビ・アロンソ率いるバイヤー・レバークーゼン

新卒で、UFO・宇宙人・ネッシー・カッパが1面を飾る某スポーツ新聞社に入社し、約24年在籍。その間、池袋コミュニティ・カレッジ主催の「後藤健生のサッカーライター養成講座」を受講。独立後は、映画・ドラマのレビューサイトなど、数社で執筆。
1993年のクラブ創設時からの清水エスパルスサポーター。1995年2月、サンプドリアvsユベントスを生観戦し、欧州サッカーにもハマる。以降、毎年渡欧し、訪れたスタジアムは50以上。ワールドカップは1998年フランス大会、2002年日韓大会、2018年ロシア大会、2022年カタール大会を現地観戦。2018年、2022年は日本代表のラウンド16敗退を見届け、未だ日本代表がワールドカップで勝った試合をこの目で見たこと無し。
“サッカーは究極のエンタメ”を信条に、清濁併せ吞む気概も持ちつつ、読者の皆様の関心に応える記事をお届けしていきたいと考えております。

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