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世界の変わり種スタジアム4選。こんなところにサッカー場!?

姫路競馬場グラウンド 写真:Getty Images

姫路競馬場グラウンド(兵庫県)

兵庫県競馬組合が主催者となって運営している姫路競馬場は、2012年以降、売上の低迷に伴い事実上の休止状態となり、廃止議論も持ち上がっていた。しかし、その後ネットによる馬券販売が一般的となり売上が大きく回復したため、2020年から再開されている。

内馬場にはその間に整備された洪水調節池だけではなく、フルサイズのサッカー場が存在する。人工芝ながら、熱中症対策として最新鋭の「Viu(微雨)システム」を採用。特殊樹脂製ノズルにより、わずかな水を微雨化し立体的に散水するシステムで、熱くなったフィールドの表面の温度を効果的に下げることができるものだ。

現在「ひめたんスポーツクラブ(姫路競馬場スポーツセンター)」が運営し、サッカーやフットサルのみならず、卓球場やエクササイズが楽しめるスタジオもある総合スポーツクラブとして、広く市民に開放されている。

JリーグやJFLの公式戦を人工芝ピッチで開催されることは許可されていないが、地域リーグや育成年代では人工芝での公式戦が行われている。JリーグやJFLでも、人工芝での公式戦を解禁しようという議論も進んでいる。近い将来、「競馬場でのサッカー公式戦」などという試みもあるかも知れない。


チャンリミタン・スタジアム 写真:Getty Images

チャンリミタン・スタジアム(ブータン)

2002年6月30日。W杯日韓大会決勝が横浜国際総合競技場で行われ、ブラジル代表がFWロナウドの2発でドイツ代表を破り、5回目の優勝を飾った日。もう1つの世界一決定戦が同じアジアで開催されていた。当時FIFAランキング最下位のモントセラト代表(203位)と、ブータン代表(202位)の一戦である。ホームのブータン代表が4-0で勝利したこの試合は『The Other Final』として映画化されている。

この試合が行われたスタジアムが、ブータンの首都ティンプーにある国立競技場、チャンリミタン・スタジアムだ。事実上ブータン王室が所有し、25,000人の収容人数を誇る。

代表戦の他、2012年に発足したブータン・プレミアリーグのティンプー・シティとトランスポート・ユナイテッドがホームスタジアムとし、また、ブータン国王の戴冠式や建国記念日の式典などが行われる。加えて2024年、ブータン史上初となる海外アーティストの公演として、イギリスのシンガーソングライター、エド・シーランのライブも開催された。

どこが“クセスゴ”なのか。それはブータンが置かれた国土事情に起因する。ブータンの面積は九州とほぼ同じ約3万8,400平方キロメートル、そこに約80万人の国民が暮らしている。標高100メートル程度の低地から7,000メートルを超える高地まで存在し、平地はわずかで、生活や農業のほとんどが傾斜地で行われている。道路は斜面へ切れ込みを入れる形で作られていることが多く、路肩は土留めもされていないため、がけ崩れや崩落事故、谷底への自動車の転落事故も多発する過酷な環境だ。そのため、国家の主な収入源は、国土の高低差を生かした水力発電による周辺国への売電だ。

そんな国土の上に、サッカースタジアム建設に必要な面積とされる3.5ヘクタール(約3万5,000平方メートル)の平地を整備するのもひと苦労だ。

実際、メインスタンドは王室が使用する煌びやかな仏教の伝統建築を取り入れた屋根付きの貴賓席のみで、バックスタンドには背もたれ付きの座席があるものの、両ゴール裏席は石段があるだけの立見席。しかもスタジアムのすぐ外が土手となっており、そこには集合住宅もあるため、“タダ見し放題”の造りとなっている。

総工費2.23億ニュルタム(約4億円)をかけ、総天然芝で、FIFAが定める縦105メートル、横68メートルもクリアしている。しかし、ティンプーの市街地にあり、公園やテニスコートも併設されているため、サッカースタジアムというよりも市民の憩いの場となっているようだ。

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名前:寺島武志

趣味:サッカー観戦(Jリーグ、欧州5大リーグ、欧州CL・EL)、映画鑑賞、ドラマ考察、野球観戦(巨人ファン、高校野球、東京六大学野球)、サッカー観戦を伴う旅行、スポーツバー巡り、競馬
好きなチーム:Jリーグでは清水エスパルス、福島ユナイテッドFC、欧州では「銀河系軍団(ロス・ガラクティコス)」と呼ばれた2000-06頃のレアルマドリード、当時37歳のカルロ・アンチェロッティを新監督に迎え、エンリコ・キエーザ、エルナン・クレスポ、リリアン・テュラム、ジャンフランコ・ゾラ、ファビオ・カンナヴァーロ、ジャンルイジ・ブッフォンらを擁した1996-97のパルマ、現在のお気に入りはシャビ・アロンソ率いるバイヤー・レバークーゼン

新卒で、UFO・宇宙人・ネッシー・カッパが1面を飾る某スポーツ新聞社に入社し、約24年在籍。その間、池袋コミュニティ・カレッジ主催の「後藤健生のサッカーライター養成講座」を受講。独立後は、映画・ドラマのレビューサイトなど、数社で執筆。
1993年のクラブ創設時からの清水エスパルスサポーター。1995年2月、サンプドリアvsユベントスを生観戦し、欧州サッカーにもハマる。以降、毎年渡欧し、訪れたスタジアムは50以上。ワールドカップは1998年フランス大会、2002年日韓大会、2018年ロシア大会、2022年カタール大会を現地観戦。2018年、2022年は日本代表のラウンド16敗退を見届け、未だ日本代表がワールドカップで勝った試合をこの目で見たこと無し。
“サッカーは究極のエンタメ”を信条に、清濁併せ吞む気概も持ちつつ、読者の皆様の関心に応える記事をお届けしていきたいと考えております。

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