その他 欧州その他

欧州サッカー界を揺るがせた高額移籍金監督14選

写真:Getty Images

近年のサッカー選手の移籍金高騰は、サッカーファンのみならず世間からも大きな注目を集め、時には批判を招いてきた。しかし、見過ごされがちなのが、監督を招聘するための高額な費用の支払いも増えている現状だ。

プレミアリーグをはじめとする欧州各クラブは、有名監督を迎えるために多額の資金を投入するようになった。しかし、高額な費用をかけた監督が必ずしも成功するとは限らず、中には支払った金額に見合わなかったケースも当然ある。ここでは現在までに欧州のシーンで高額な移籍金で招聘された監督を14ケース紹介しよう。


マウリツィオ・サッリ監督 写真:Getty Images

14位(12位タイ):マウリツィオ・サッリ監督

ナポリ→チェルシー:500万ポンド(約9億6,074万円)

2018年、マウリツィオ・サッリ監督がイタリアのナポリからイングランドのチェルシーに引き抜かれた。チェルシーは、アントニオ・コンテ監督(現ナポリ)の後任としてサッリ監督をスタンフォード・ブリッジに迎えた。なお、コンテ監督はチェルシーで2シーズン(2016-2018)を過ごし、プレミアリーグとFAカップのタイトルを獲得するなど成功を収めていた。

しかし、サッリ監督のチェルシーでの1シーズンは、クラブ上層部との意見の食い違いが絶えず、期待ほどの成果を上げられなかったようだ。それでも、2018/19ヨーロッパリーグ(EL)優勝という成果を残している。


ロナルド・クーマン監督 写真:Getty Images

13位(12位タイ):ロナルド・クーマン監督

サウサンプトン→エバートン:500万ポンド(約9億6,074万円)

イングランドのサウサンプトンでの2シーズン(2014-2016)でチームをヨーロッパの舞台に導くなど、印象的な実績を残したロナルド・クーマン監督(現オランダ代表)は、500万ポンドの移籍金で同国のエバートンの監督に就任した。この招聘は、エバートンが長年苦しんできた停滞を打破し、プレミアリーグのトップクラブの一員となることを目指したものだった。

しかし、結果は期待外れに終わり、クーマン監督のグディソン・パークでの任期は失望の一言に尽きた。わずか1年余りでクラブを去り、その後数カ月間は監督業から離れることになった。エバートンにとって500万ポンドは無駄遣いだった。


ブレンダン・ロジャーズ監督 写真:Getty Images

12位:ブレンダン・ロジャーズ監督

スウォンジー・シティ→リバプール:500万ポンド(約9億6,074万円)

スウォンジー・シティがプレミアリーグに初昇格した2011/12シーズン、ブレンダン・ロジャーズ監督(現セルティック)は魅力的なサッカーをする監督として高い評価を受けていた。彼の指揮の下、スウォンジーは降格圏を大きく離れ11位という成績を収めたと同時に、攻撃的なスタイルで他を驚かせた。この活躍が評価され、リバプールは500万ポンドを支払い、2012年にロジャーズ監督をアンフィールドに招いた。

北アイルランド出身のロジャーズ監督はリバプールで3年半を過ごし、タイトルの獲得こそなかったが、2013/14シーズンにはリーグ優勝を争うなどまずまずの成績を残していた。しかし、2015/16シーズン途中で解任された。


ジョゼ・モウリーニョ監督 写真:Getty Images

11位:ジョゼ・モウリーニョ監督

ポルト→チェルシー:520万ポンド(約10億円)

2004年、ジョゼ・モウリーニョ監督(現フェネルバフチェ)が、ポルトガルのポルトからチェルシーへ移籍した際の520万ポンドの移籍金は、お得な投資だった。ポルトで2003/04UEFAチャンピオンズリーグ(CL)優勝を果たし、高い評価を得ていた「スペシャル・ワン」をチェルシーが獲得するために支払った金額は、まさにその価値があった。

モウリーニョ監督は、チェルシーを2004/05シーズンに50年ぶりのリーグ優勝に導き、翌2005/06シーズンも連覇を果たした。最初の在任期間である3年間で、リーグ優勝2回のほか、FAカップ、コミュニティシールド、リーグカップ2回と、多くのタイトルをチームにもたらした。


ジョゼ・モウリーニョ監督 写真:Getty Images

10位:ジョゼ・モウリーニョ監督

インテル→レアル・マドリード:690万ポンド(約13億2,673万円)

チェルシーだけでなく、スペインのレアル・マドリードもジョゼ・モウリーニョ監督の獲得に多額を投じたクラブの一つだ。マドリードは690万ポンドを支払い、「スペシャル・ワン」をインテルからベルナベウへ2010年に引き抜いた。

モウリーニョ監督がマドリードを率いていた時期は、バルセロナが「史上最強」と称されるチームの一つとして君臨していたため、期待されたほどの成功には至らなかった。それでも、彼は2011/12シーズンのラ・リーガ優勝と2010/11シーズンのコパ・デル・レイ優勝を達成した。


ルベン・アモリム監督 写真:Getty Images

9位:ルベン・アモリム監督

ブラガ→スポルティング:860万ポンド(約16億5,376万円)

ルベン・アモリム監督(現マンチェスター・ユナイテッド)は、2020年にポルトガルのスポルティングが約860万ポンドを支払って同国のブラガから引き抜いた際、ほとんど無名の存在だった。当時、彼の監督歴はわずか2年ほどだったが、それでもスポルティングがこれほどの金額を払う価値があると判断したのは正しかった。

スポルティングでの4年間でアモリム監督の評価は大きく高まり、プリメイラ・リーガを2020/21と2023/24に制覇するなど、その名声は世界中に広まった。


ブレンダン・ロジャーズ監督(右)写真:Getty Images

8位:ブレンダン・ロジャーズ監督

セルティック→レスター・シティ:880万ポンド(約17億円)

リバプールでのキャリアが停滞した後、ブレンダン・ロジャーズ監督はセルティックで2016年から2019年まで指揮を執り、自身を再びトップレベルの監督として評価される存在に立て直した。この功績により、レスター・シティは2019年にロジャーズ監督をプレミアリーグに呼び戻すために巨額を投じた。

ロジャース監督はセルティック時代の経験を活かし、レスターを2020/21FAカップと2021年のFAコミュニティシールドのタイトル獲得へ導き、プレミアリーグの上位争いに定着させた。しかし、在任4年目には状況が悪化し、2023年4月にチームを去ることとなった。その直後、クラブは2部へ降格した。


ルベン・アモリム監督 写真:Getty Images

7位:ルベン・アモリム監督

スポルティング→マンチェスター・ユナイテッド:920万ポンド(約17億6,862万円)

2024/25シーズン序盤に、マンチェスター・ユナイテッドがエリック・テン・ハフ監督の解任を発表し、39歳のルベン・アモリム監督の招聘を決定。ユナイテッドはスポルティングに920万ポンドを支払い、同監督を引き抜いた。

テン・ハフ監督の体制で苦しいスタートを切ったユナイテッドにとって、アモリム監督には早急な再建が求められている。その評判の高さと移籍金の規模から、彼に寄せられる期待は非常に大きいものだろう。


アルネ・スロット監督 写真:Getty Images

6位:アルネ・スロット監督

フェイエノールト→リバプール:940万ポンド(約18億円)

2024年初頭、ユルゲン・クロップ監督がリバプール退任の意向を発表したことにより、後任探しが始まった。その結果、オランダのフェイエノールトを率いていたアルネ・スロット監督が選ばれた。スロット監督はフェイエノールトで2022/23リーグ優勝と2023/24リーグカップ優勝を成し遂げ、その手腕を高く評価されていた。

2024/25シーズンにリバプールの監督に就任し、期待と重圧が高まる中でもスロット監督はアンフィールドでの新生活に順調に適応している。現在までのところ、プレミアリーグとCLでも好調を維持しており、その投資は確実な成果を上げている。


エンツォ・マレスカ監督 写真:Getty Images

5位:エンツォ・マレスカ監督

レスター・シティ→チェルシー:1,000万ポンド(約19億2,179万円)

2023/24シーズンにレスター・シティを1年でプレミアリーグ復帰に導いたエンツォ・マレスカ監督の手腕はチェルシーの注目を集め、マウリシオ・ポチェッティーノ監督(現アメリカ代表)の後任としてスタンフォード・ブリッジに迎えられた。元マンチェスター・シティのコーチであるマレスカ監督は、レスターを魅力ある攻撃的なチームへと変化させ、チェルシーにとって理想的な監督となった。

多くの監督が就任しては解任されているチェルシーだが、2024/25シーズン、マレスカ監督は幸先の良いスタートを切っており、その体制が順調に進んでいるようだ。


ヴァンサン・コンパニ監督 写真:Getty Images

4位:ヴァンサン・コンパニ監督

バーンリー→バイエルン・ミュンヘン:1,020万ポンド(約19億5,992万円)

2023/24シーズン終了時にバーンリーがプレミアリーグから降格したにもかかわらず、ドイツの名門バイエルン・ミュンヘンはヴァンサン・コンパニ監督を獲得した。

コンパニ監督のチームが見せる魅力的なサッカーは、バーンリーがプレミア残留を果たす上で不利に働いていたが、それでも彼の若手有望監督としての評価を揺るがすことはなかった。この移籍はバイエルンにとって大きな賭けであり、トーマス・トゥヘル監督というCL優勝経験のある監督からコンパニ監督への交代が成功するかどうかは、今後の成り行き次第といえるだろう。


アンドレ・ビラス・ボアス監督 写真:Getty Images

3位:アンドレ・ビラス・ボアス監督

ポルト→チェルシー:1,330万ポンド(約25億5,506万円)

アンドレ・ビラス・ボアス監督は、ポルトで2010/11シーズンのリーグ戦、リーグカップ、ELの3冠を達成した成功を引っ提げてチェルシーに移籍した若きポルトガル人監督だったが、チェルシーの賭けは大きく外れた。2011年、チェルシーはポルトから彼を引き抜くために1,330万ポンドの大金を支払ったが、その成果は乏しいものだった。

将来を見据えた長期プロジェクトとして期待されていたものの、2011/12シーズン前半は散々なもので、わずか40試合で解任される結果となった。この結果、チェルシー史上最悪の監督任命の一つとして語り継がれている。


グレアム・ポッター監督 写真:Getty Images

2位:グレアム・ポッター監督

ブライトン→チェルシー:2,150万ポンド(約41億2,878万円)

こちらもチェルシーの失敗プロジェクト。グレアム・ポッター監督もビラス・ボアス監督同様、高額な契約金で期待を集めながらも結果を残せなかった。ブライトン・アンド・ホーブ・アルビオンでの手腕が評価され、チェルシーは2022年に2,150万ポンドという大金を投じて彼を迎え入れた。この金額は、イングランド人監督としては異例の高さだった。

クラブが変革を遂げる中、ポッター監督はその新時代を導く最適な選択肢と考えられていた。しかし、31試合でわずか12勝という成績に終わり解任された。その後、同監督は監督業に戻っていない。2,150万ポンドは無駄に終わったといわざるを得ない。


ユリアン・ナーゲルスマン監督 写真:Getty Images

1位:ユリアン・ナーゲルスマン監督

RBライプツィヒ→バイエルン・ミュンヘン:2,170万ポンド(約41億6,832万円)

ユリアン・ナーゲルスマン監督(現ドイツ代表)は、ドイツのRBライプツィヒ時代(2019-2021)に世界で最も注目される若手監督の一人となり、バイエルン・ミュンヘンは、彼をブンデスリーガのライバルクラブから引き抜いた。

この高額な投資に加え、バイエルンは2021/22のブンデスリーガ、2021年と2022年のDFLスーパーカップ制覇を達成していたにもかかわらず、主力選手との関係悪化などが伝えられ、ナーゲルスマン監督は2年足らずで解任された。彼の後任のトーマス・トゥヘル監督も結局解任される結果となった。

名前:Mount

趣味:お酒、電子音楽、サッカー観賞
好きなチーム:日本代表、ドイツ代表
欧州某国在住、ライター、編集者

筆者記事一覧