Jリーグ

J2全クラブ監督の通信簿&続投可能性

ザスパ群馬 写真:Getty Images

ザスパ群馬:武藤覚監督

評価:★☆☆☆☆/続投可能性:0%

クラブ名から「クサツ(草津)」を排し、エンブレムも一新して臨んだ2024シーズンのザスパ群馬。1勝10敗3引き分けの成績で第14節を以て、2022シーズンから指揮を執る大槻毅前監督を解任した。ヘッドコーチだった武藤覚氏が監督に昇格したものの、一度も降格圏を抜け出せないまま最下位でJ3降格が決まってしまった。

武藤監督自身は、2010年の南アフリカW杯で日本代表のテクニカルスタッフを務め、2012年にはロンドン五輪ではU-23日本代表のアシスタントコーチも務めた実績もある指揮官だったが、就任当時既に崩壊状態にあったチームを救うことはできなかった。昨2023シーズン、一時期は昇格プレーオフ争いしたとあって期待されて臨んだものの、結果的にはサポーターを落胆させる結果となった。

既に武藤監督の退任が発表されているが、次期監督選び次第ではJ3を戦う来シーズンも苦戦するだろう。群馬の人件費は3億円を少し超える程度で、これはJ3に入っても4~5番目の数字だ。ここを増やせない限り、J3に定着してしまう可能性も高い。

今季限りで20年の現役生活にピリオドを打った地元出身のMF細貝萌が、来季、社長代行兼GM(ゼネラルマネジャー)に就任する人事が発表されたが、クラブのバンディエラである彼にこの重責を負わせざるを得ない事実こそ、群馬が迷走している証拠なのではないか。


小林伸二監督 写真:Getty Images

栃木SC:小林伸二監督

評価:★★★☆☆/続投可能性:100%

田中誠監督と柳下正明ヘッドコーチの新体制でスタートを切った2024シーズンの栃木SC。しかし、守備陣が崩壊し、第15節終了時点で3勝9敗3引き分けの19位に沈み、5月14日に揃って解任。後を引き継いだのが、大分トリニータ(2001-02)、セレッソ大阪(2003-06)、モンテディオ山形(2008-11)、ヴォルティス徳島(2012-15) 、清水エスパルス(2016-17)、ギラヴァンツ北九州(2019-23)とJでの指導歴が豊富な小林伸二監督だ。

それでもなかなか勝ち星に恵まれない日々が続いたが、徐々に守備に改善が見られ、7ゴールを記録したFW南野遥海を中心に、点も取れるチームを作り上げていった。10月27日の第36節清水戦(カンセキスタジアムとちぎ)では、清水のJ1昇格を見届けると同時に8シーズンぶりのJ3降格が決まってしまうという憂き目に遭ったが、翌週11月3日第37節の横浜FC戦(ニッパツ三ツ沢競技場)では、スコアレスドローに持ち込んだことで相手のJ1昇格を阻み、意地を見せた。

栃木イレブンのリバウンドメンタリティーも見事だったが、降格が決まっても選手のモチベーションを維持させた小林監督の手腕も賞賛されるべきだろう。ちなみに、ラスト7戦を1勝1敗5引き分けでシーズンを締めくくっており、フロントもこの手腕を評価した上での続投要請だったと思われる。

小林監督も公式サイト上で、「この責任どう取るべきかというのをずっと考えてきました」と悩んだ末の決断だったことを明かした上で、「戦術をさらに徹底して落とし込むことができれば、今シーズンの負けを引き分けに、引き分けのゲームを勝利にもっていくことができるのではないか」と、早くも視線は来季に向いている。

レンタル選手が多いが故に不確定要素も多いが、監督自身が語るように戦術を徹底させていけば、来季J3の主役を張れるだけのポテンシャルは持っている。なにせ指揮官は、過去に指導した6クラブのうち4度の昇格を達成した「昇格請負人」だ。J通算600試合を超える知将に率いられ、1年でのJ2復帰の可能性も高いのでないだろうか。


小林慶行監督 写真:Getty Images

ジェフユナイテッド千葉:小林慶行監督

評価:★★☆☆☆/続投可能性:30%

果たしてジェフユナイテッド千葉はJ1に昇格する気があるのだろうか…。そんな気持ちにさせられる最終節(対モンテディオ山形/0-4)の惨敗劇だった。

2023年、コーチから昇格する形で就任した小林慶行監督。昨2023シーズンは6位で昇格プレーオフに進出し(準決勝で東京ヴェルディに1-2敗退)、今シーズンいよいよ「オリジナル10」の復活かと感じさせたが、ラスト2戦の敗戦によって4位からプレーオフ切符すら逃した。最終戦翌日、島田亮代表取締役は「シーズン終了のご挨拶」と題し、謝罪と感謝の思いを言葉に連ねたが、監督人事には触れなかった。

2006年に日本代表に就任したイビチャ・オシム監督(2003-06)を除けば、ファン・エスナイデル監督(2017-19)、尹晶煥監督(2020-22)と3年毎に監督を代えてきた千葉。前例に従えば、小林監督にもう1年猶予があってもいいだろう。前述2監督よりも好成績を上げているのも事実だ。天皇杯でもJ1のFC東京を破る下剋上を演出した。

それでも小林監督を退任させる可能性は高いとみる。ここ一番の試合をことごとく落とした勝負弱さもさることながら、この順位は23ゴールを記録し得点王を獲得したFW小森飛絢の大活躍によるものだからだ。その小森も、来季はこのチームにはいないだろう。そうなれば、チーム作りを一から始めなければならなくなる。また、自身の限界を知った小林監督の側から辞任を申し出る可能性もある。

来季には16シーズン目のJ2の舞台となる千葉。しかし、このチームから「必ずJ1に上がってやる」という気概は見えない。チーム人件費もJ2中位の8億円強、それでもホームのフクダ電子アリーナはJ1時代と変わらない集客力を誇っている。下手にJ1に昇格してしまったら人件費を上げざるを得ない。そこでフロントはあえて「現状維持」の道を選んでいるといったら言い過ぎだろうか。


四方田修平監督 写真:Getty Images

横浜FC:四方田修平監督

評価:★★★★★/続投可能性:90%

昨2023シーズン、たった1枠だった降格枠に入ってしまった横浜FC。しかしフロントは四方田修平監督の続投を決断。結果的にこれが奏功し、最後はギリギリだったが、1年でのJ1復帰を成し遂げた。正式発表はまだないが、引き抜きにでも遭わない限り続投が基本路線だろう。

2021シーズン途中から就任した四方田監督。5年目突入となれば、クラブ最長記録を更新する。4度目のJ2降格を回避するためには、今季の戦力にプラスアルファが必須となる。特に今季、チームのトップスコアラーが、7ゴールを記録した36歳のFW伊藤翔と32歳のFW小川慶治朗では、やや心もとない。失点の少なさ(27)でJ2を乗り切ったものの、同じ戦い方がJ1で通用するかといえば疑問だ。

四方田監督も、それは十分に理解しているだろう。片原大示郎社長と、2024シーズンからGM(ゼネラルマネジャー)に就任した田端秀規氏の腕の見せ所でもある。


大塚真司監督 写真:Getty Images

ヴァンフォーレ甲府:大塚真司監督

評価:★★☆☆☆/続投可能性:100%

ヴァンフォーレ甲府は、2022年の天皇杯優勝によってACL(AFCチャンピオンズリーグ)2023/24に出場しラウンド16に進出したことで、2024シーズン開幕前からの始動を強いられたものの、開幕連勝スタートを切った。しかし徐々に息切れし、第15節千葉戦から第21節愛媛FC戦まで勝利なしという結果を受け、7月2日に監督交代を決断する。

篠田善之監督の解任に伴い、コーチから昇格した大塚真司監督だったが、この指揮官交代劇も大きなカンフル剤とはなれず、ラスト10戦3勝6敗1引き分けで14位でフィニッシュした。

ACLに加え、天皇杯とルヴァン杯で16強に勝ち進んでしまったことで過密日程を強いられ、逆にリーグ戦を戦う上で“足かせ”となってしまった格好だが、天皇杯ラウンド16では鹿島アントラーズを相手に1-2の惜敗。ルヴァン杯準々決勝でも川崎フロンターレに合計スコア1-2と、J1クラブにも引けを取らない戦いを繰り広げ、チームのポテンシャルは示した。14位という順位に甘んじるチームではないはずだ。

得点も失点も多く、“撃ち合い上等”の試合が多いが、チーム得点王が40歳のピーター・ウタカでは来季に不安を残す。補強ポイントがあるとすれば、このあたりだろう。

今年、S級コーチライセンスを取得したことで、シーズン終了を待たずして続投が発表された大塚監督。いきなりのJクラブ監督という重責を担うこととなったが、タイミングに恵まれたともいえる。“新人監督”の手腕に注目だ。また、指導者としての経験も豊富で、剛腕GM(ゼネラルマネジャー)としての顔も持つ佐久間悟社長兼GMの辣腕ぶりにも期待したい。

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名前:寺島武志

趣味:サッカー観戦(Jリーグ、欧州5大リーグ、欧州CL・EL)、映画鑑賞、ドラマ考察、野球観戦(巨人ファン、高校野球、東京六大学野球)、サッカー観戦を伴う旅行、スポーツバー巡り、競馬
好きなチーム:Jリーグでは清水エスパルス、福島ユナイテッドFC、欧州では「銀河系軍団(ロス・ガラクティコス)」と呼ばれた2000-06頃のレアルマドリード、当時37歳のカルロ・アンチェロッティを新監督に迎え、エンリコ・キエーザ、エルナン・クレスポ、リリアン・テュラム、ジャンフランコ・ゾラ、ファビオ・カンナヴァーロ、ジャンルイジ・ブッフォンらを擁した1996-97のパルマ、現在のお気に入りはシャビ・アロンソ率いるバイヤー・レバークーゼン

新卒で、UFO・宇宙人・ネッシー・カッパが1面を飾る某スポーツ新聞社に入社し、約24年在籍。その間、池袋コミュニティ・カレッジ主催の「後藤健生のサッカーライター養成講座」を受講。独立後は、映画・ドラマのレビューサイトなど、数社で執筆。
1993年のクラブ創設時からの清水エスパルスサポーター。1995年2月、サンプドリアvsユベントスを生観戦し、欧州サッカーにもハマる。以降、毎年渡欧し、訪れたスタジアムは50以上。ワールドカップは1998年フランス大会、2002年日韓大会、2018年ロシア大会、2022年カタール大会を現地観戦。2018年、2022年は日本代表のラウンド16敗退を見届け、未だ日本代表がワールドカップで勝った試合をこの目で見たこと無し。
“サッカーは究極のエンタメ”を信条に、清濁併せ吞む気概も持ちつつ、読者の皆様の関心に応える記事をお届けしていきたいと考えております。

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