Jリーグ 大宮アルディージャ

J2復帰の大宮アルディージャ、“レッドブル入り”による期待、そして不安

NACK5スタジアム大宮 写真:Getty Images

大宮を買収した要因は?

レッドブルが大宮を買収した要因としては、「チームや町に大きなポテンシャルと将来性を感じた」と語られた。確かに新幹線が止まるターミナル駅から徒歩圏内にホームスタジアムがあり、スタジアムへ向かう道中には、武蔵一宮氷川神社の参道や境内を通るというロケーションは、いかにも外国人には受けそうで、インバウンド客も見込める。

加えて、NACK5スタジアム大宮は1960年に建造された日本初のサッカー専用球技場で、1979年のワールドユース日本大会(現FIFA U-20ワールドカップ)では故ディエゴ・マラドーナ氏が、初めてアルゼンチン代表のユニフォームを着てプレーした歴史あるスタジアムだ。

もちろん、こうした環境も、レッドブル側が買収に至った大きな要因ではあるだろう。しかし、J2昇格を決めた福島戦のスタジアムは、1万1274人もの観客動員があり両ゴール裏とバックスタンドは満員だったが、メインスタンドには空席も見られた。

「勝てば昇格」の大一番でチケット完売とならなかったという事実が、このクラブの現在地を示しているとも言える。(※同スタジアムの最多観客動員は、2016年5月8日のJ1第11節の浦和レッズ戦の1万3880人/0-1で浦和の勝利)


大宮アルディージャのサポーター 写真:Getty Images

チーム名やチームカラー変更への懸念

また、チーム名やチームカラーを変更が加えられるのではないかという懸念も指摘されている。

レッドブルがスポンサーとなったチームはサッカーに限らず、レーシングチームにおいても、赤をチームカラーとしている。米メジャーリーグサッカーのチームはその名前を「レッドブルズ」とし、現在、企業名や商品名をチーム名とすることを禁止しているドイツにおいては、RBライプツィヒと名乗るにあたり、Red Bullと頭文字が同じ造語の「Rasen Ballsport(=芝の上でするスポーツ)」という“裏技”を採用している。

ゴメスTDは「アルディージャの名前は残す」と語ってはいるが、そこに「RB」という文言が加わることは、もはや決定事項だろう。実際、運営法人の社名は「RB大宮株式会社」とされた。

チームカラーであるオレンジは、隣接する武蔵一宮氷川神社の楼門の色から取られたのが由来だが、これも近い未来、赤に変える日が来るだろう。同市内のライバルの浦和のチームカラーと被ったとしてもだ。これが理由で浦和との関係が激化したとしても、レッドブルのチームブランディングの1つとして織り込み済みだろう。


三木谷浩史氏(左)アンドレス・イニエスタ(右)写真:Getty Images

大宮が本当に変われるかどうか

オーナーが代わってチームカラーに手が加えられた例として、2004年にヴィッセル神戸を買収した楽天率いる三木谷浩史氏が、自身の最終学歴であるハーバード大学のスクールカラーであるクリムゾンレッドに一新したことが挙げられる。当初は従来の白と黒のストライプに親しんでいた古参のサポーターから反発を招いたが、いつしかそうした声も止んだ。

その後、神戸は「バルサ化」を掲げ、元スペイン代表FWダビド・ビジャ(2019)やMFアンドレス・イニエスタ(2018-2023)ら大物外国人の招聘と天皇杯制覇、そしてリーグ優勝と階段を駆け上り、今ではJの強豪の1つとなったことは言うまでもないだろう。要は、使うべきところにお金を使い、チームを強化し、有名にしてさえくれれば、チームカラーなど些末な問題なのだ。

おそらくは今後数年で、大宮は劇的に変わっていくだろう。福島戦も、終始主導権を握っていたものの、終わってみれば1点差の辛勝だった。このメンバーでJ2を戦えるのかと聞かれれば疑問だ。来季のJ2開幕戦ではガラリと選手が入れ替わることが予想され、いずれはフロントが全員外国人となる可能性すらある。選手や首脳陣のみならず、サポーターもその急激な変化を受け入れ、信じて付いて行けるかが、大宮が本当に変われるかどうかの分水嶺となるだろう。

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名前:寺島武志

趣味:サッカー観戦(Jリーグ、欧州5大リーグ、欧州CL・EL)、映画鑑賞、ドラマ考察、野球観戦(巨人ファン、高校野球、東京六大学野球)、サッカー観戦を伴う旅行、スポーツバー巡り、競馬
好きなチーム:Jリーグでは清水エスパルス、福島ユナイテッドFC、欧州では「銀河系軍団(ロス・ガラクティコス)」と呼ばれた2000-06頃のレアルマドリード、当時37歳のカルロ・アンチェロッティを新監督に迎え、エンリコ・キエーザ、エルナン・クレスポ、リリアン・テュラム、ジャンフランコ・ゾラ、ファビオ・カンナヴァーロ、ジャンルイジ・ブッフォンらを擁した1996-97のパルマ、現在のお気に入りはシャビ・アロンソ率いるバイヤー・レバークーゼン

新卒で、UFO・宇宙人・ネッシー・カッパが1面を飾る某スポーツ新聞社に入社し、約24年在籍。その間、池袋コミュニティ・カレッジ主催の「後藤健生のサッカーライター養成講座」を受講。独立後は、映画・ドラマのレビューサイトなど、数社で執筆。
1993年のクラブ創設時からの清水エスパルスサポーター。1995年2月、サンプドリアvsユベントスを生観戦し、欧州サッカーにもハマる。以降、毎年渡欧し、訪れたスタジアムは50以上。ワールドカップは1998年フランス大会、2002年日韓大会、2018年ロシア大会、2022年カタール大会を現地観戦。2018年、2022年は日本代表のラウンド16敗退を見届け、未だ日本代表がワールドカップで勝った試合をこの目で見たこと無し。
“サッカーは究極のエンタメ”を信条に、清濁併せ吞む気概も持ちつつ、読者の皆様の関心に応える記事をお届けしていきたいと考えております。

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