ラ・リーガ Jリーグ

アトレティコ・マドリードへの「ゴール裏封鎖処分」はJリーグでも有効か

鹿島アントラーズのサポーター 写真:Getty Images

Jリーグが掲げたスローガンが危機

欧州もJリーグも、それぞれ暴力行為や差別に対する意識とそれに対するルールも異なるため一概には言えないが、今回アトレティコが受けた処分は、洋の東西を問わずゴール裏に巣食う“腐ったミカン”を排除するという目的のためには効果的な方法ではないだろうか。

浦和だけを例に挙げたが、Jリーグの歴史も30年を超え、特に歴史のある「オリジナル10」と呼ばれるクラブの中には、「固定化・過激化・高年齢化」しているサポーターグループが存在する。その代表的な例が鹿島アントラーズのサポーターズグループ「インファイト」だ。

舞台裏:ムシアラと弟の契約延長ビデオ撮影
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“サッカー不毛の地”だった鹿嶋市周辺にサポーター文化を根付かせた彼らの功績は大きいが、鹿島が常勝軍団になるにつれその行動もエスカレートし、相手サポーターとの衝突や、女性や子どもファンへの威嚇行為、果ては2004年10月23日の浦和戦(カシマサッカースタジアム、2-3で浦和勝利)後、空き缶をピッチに投げ入れ、それをスタンドに投げ返したMF本田泰人に襲い掛かるなど、様々な狼藉を働き、一般的な鹿島ファンからも「ゴール裏は無法地帯」と敬遠されている。

「世界一安全なスタジアム」を標榜するJリーグだが、歴史を重ねるに連れこうしたトラブルも増えてきている。発煙筒の投げ込みが常套化している海外サッカーを気軽に見られるようになったことも影響しているだろう。しかし、Jリーグが掲げたそのスローガンが、危機に立たされているのが現実なのだ。


Jリーグ旗 写真:Getty Images

「ゴール裏封鎖」をスタンダードに

もはや、クラブへの罰金は過激派サポーターにとっては、何の効果もないことは明らかだ。だからこそ「ゴール裏封鎖」という処分は妙案だと思えるのだ。

もちろん主催クラブにとっては、年間シートの取り扱いや返金対応、過激派サポーターが別のエリアに集結しないか監視するなど、煩わしい作業が増えてしまうことになるが、暴力のない安全なスタジアム環境を作り上げていくためには必要なことだ。

また、そうした過激派サポーターがアウェーの地で鬱憤晴らしを企てる可能性もあることから、クラブ単独の問題とせず、リーグ全体で取り組んでいく必要があるだろう。

今回、ラ・リーガで出された「ゴール裏席封鎖」という処分が、世界的なスタンダードになっていくがどうかはまだ不透明だ。しかし、ゲームを楽しみたい良識あるファンを巻き込むことなく、暴力や差別をスタジアムから追放するこの試みは、Jリーグにとっても他山の石でないことだけは確かだ。

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名前:寺島武志

趣味:サッカー観戦(Jリーグ、欧州5大リーグ、欧州CL・EL)、映画鑑賞、ドラマ考察、野球観戦(巨人ファン、高校野球、東京六大学野球)、サッカー観戦を伴う旅行、スポーツバー巡り、競馬
好きなチーム:Jリーグでは清水エスパルス、福島ユナイテッドFC、欧州では「銀河系軍団(ロス・ガラクティコス)」と呼ばれた2000-06頃のレアルマドリード、当時37歳のカルロ・アンチェロッティを新監督に迎え、エンリコ・キエーザ、エルナン・クレスポ、リリアン・テュラム、ジャンフランコ・ゾラ、ファビオ・カンナヴァーロ、ジャンルイジ・ブッフォンらを擁した1996-97のパルマ、現在のお気に入りはシャビ・アロンソ率いるバイヤー・レバークーゼン

新卒で、UFO・宇宙人・ネッシー・カッパが1面を飾る某スポーツ新聞社に入社し、約24年在籍。その間、池袋コミュニティ・カレッジ主催の「後藤健生のサッカーライター養成講座」を受講。独立後は、映画・ドラマのレビューサイトなど、数社で執筆。
1993年のクラブ創設時からの清水エスパルスサポーター。1995年2月、サンプドリアvsユベントスを生観戦し、欧州サッカーにもハマる。以降、毎年渡欧し、訪れたスタジアムは50以上。ワールドカップは1998年フランス大会、2002年日韓大会、2018年ロシア大会、2022年カタール大会を現地観戦。2018年、2022年は日本代表のラウンド16敗退を見届け、未だ日本代表がワールドカップで勝った試合をこの目で見たこと無し。
“サッカーは究極のエンタメ”を信条に、清濁併せ吞む気概も持ちつつ、読者の皆様の関心に応える記事をお届けしていきたいと考えております。

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