Jリーグ

【J2天王山】清水エスパルスvs横浜FC戦プレビュー

北川航也(左)伊藤翔(右)写真:Getty Images

9月28日、明治安田J2リーグの首位攻防戦、清水エスパルスvs横浜FCの試合が行われる。会場は今2024シーズン唯一、J2の試合が開催される国立競技場だ。

首位の清水は、ここ7試合負けなし(6勝1分け)。2位の横浜FCは14試合負けなし。残り6試合で横浜FCと3位の長崎の勝ち点差が「10」もあるため、十中八九この両チームが来季J1に昇格するだろう。

この対戦についてはあまりのタイミングの良さに、Jリーグサポーターの間ではもはや都市伝説化している“日程くん”の凄さを指摘する声がファンのみならず選手からも飛び出し、Jリーグの公式Xもこの大一番を盛り上げようと「大注目のJ2頂上決戦」と称した“煽りムービー”を急きょ製作。否が応でも期待感を抱かせる映像を公開している。チケットも売り上げ上々のようで、既に5万5000枚が発券されたという。J2の最多入場者記録を塗り替えることは必至だ。


清水エスパルスのサポーター 写真:Getty Images

優勝にこだわる理由がある清水

清水は、ここ7試合負けなし(6勝1分け)。ここ2試合は、苦手としていたアウェー戦でいずれも逆転勝利。徳島ヴォルティス戦(9月18日2-1)ではFWドウグラス・タンキが途中出場で2得点。藤枝MYFC戦(9月22日3-2)ではMF西澤健太が1得点1アシストと、これまで出場機会に恵まれなかった選手が躍動し首位に返り咲いた。まさに最高潮ムードで、昨季の昇格プレーオフで悪夢を見た国立競技場での一戦に臨むことになる。

エースストライカーで主将のFW北川航也を中心に攻撃陣が好調で、完封された試合は6月16日の愛媛戦(0-3)以来なく、流れからもセットプレーからも得点が生まれ、総得点は堂々のリーグ1位だ。

清水にとって、横浜FCは過去4勝3分け2敗とのデータがあるが、前回対戦では完敗(5月18日0-2)し、2021シーズンに遡っても2分けと拮抗している。ここで「シーズンダブル」を許すようであれば苦手意識が芽生え、来季J1での対戦へ向けて不安を残すことにもなりかねない。

加えて、清水にとっては優勝にこだわる理由がある。前回J2を戦った2016シーズンは、松本山雅と同勝ち点(84)で、得失点差で2位に滑り込んだギリギリの昇格劇だった。

昨季の昇格プレーオフ決勝(2023年12月2日)では、“あと1分”の状況から東京ヴェルディにPKを献上し、悲劇的な最後を迎えた清水(1-1で引き分け)。因縁の地である国立競技場でそのトラウマを払拭し、J2初優勝という“タイトル”を手に来季のJ1で旋風を巻き起こす下地を作りたいところだ。


横浜FC 写真:Getty Images

負けなし記録の更新を狙う横浜FC

一方の横浜FCは14試合負けなしと、他を圧倒する勝負強さが光る。これまでの総失点は19と、試合数の半分以下の守備力を誇っている。複数失点を喫したのは14試合中2試合のみ。しかもその2試合も引き分けに持ち込むなど、手堅さではJ2随一だ(6月23日対東京V2-2、7月14日対水戸ホーリーホック2-2)。

シーズンを通して四方田修平監督が築いた【3-4-1-2】のフォーメーションを貫き、ソリッドな守備からカウンターを狙う戦いを続け、一時は首位を独走した。

攻撃のキーマンは、DFながらも正確無比な左足でチャンスを量産する福森晃斗だ。今シーズンからヘッドコーチに就任した中村俊輔氏の指導の下、FKやCKはもちろん、左サイドからのアーリークロスなど、硬軟交えたキックで積み上げたアシスト数は前節終了時点で2位を大きく突き放す「14」。清水との前回対戦でもアシストを記録しており、“分かっていても止められない”その左足は今回も清水DFを翻弄するだろう。

追う立場の横浜FCは、負けなし記録の更新と同時に勝ち点3を狙うべき一戦となる。J2の負けなし記録は2012シーズンの甲府が持つ「24」で今シーズンでの記録更新は不可能だが、J2では“反則級”といわれる巨大戦力を誇る清水を連破し、再逆転して優勝すれば、J1での戦いに向けて自信につながるだろう。そして、“エレベータークラブ”という有り難くないレッテルを、自ら払拭したいところだ。


北川航也 写真:Getty Images

注目選手

清水エスパルス:FW北川航也

チームトップの10ゴールを記録しているが、得点のみならず前節で見せたヒールでのラストパスやポストプレーも難なくこなし好調を維持している北川は、清水の攻撃の要だ。秋葉忠宏監督の直々の指名によって主将を務める今シーズンはエースとしての自覚も芽生え、ユース出身選手としての鑑となっている。1トップでも2トップでも自らの役割に徹し、結果を残し続けている。彼のプレーが清水の勝敗を大きく左右することは間違いないといえよう。

伊藤翔(左)写真:Getty Images

横浜FC:FW伊藤翔

中京大中京高卒業後、フランス、リーグ・アンのグルノーブル・フット38(現2部)でプロキャリアをスタートさせたFW伊藤翔も36歳となり、ベテランの域に達しつつある。リーグ後半戦は“ジョーカー起用”が多いものの、得点数はチームトップの7ゴール。前回対戦でも古巣相手にダメ押しゴールを決めている。豊富な経験と冷静な判断力がチームに勢いをもたらし、守備陣との駆け引きやセットプレーでのポジショニングも非常に効果的で、持ち前のスピードも健在だ。先発でも途中出場でも自らのタスクを理解し実行する力に衰えは見られず、相手にとっては怖い存在だ。

名前:寺島武志

趣味:サッカー観戦(Jリーグ、欧州5大リーグ、欧州CL・EL)、映画鑑賞、ドラマ考察、野球観戦(巨人ファン、高校野球、東京六大学野球)、サッカー観戦を伴う旅行、スポーツバー巡り、競馬
好きなチーム:Jリーグでは清水エスパルス、福島ユナイテッドFC、欧州では「銀河系軍団(ロス・ガラクティコス)」と呼ばれた2000-06頃のレアルマドリード、当時37歳のカルロ・アンチェロッティを新監督に迎え、エンリコ・キエーザ、エルナン・クレスポ、リリアン・テュラム、ジャンフランコ・ゾラ、ファビオ・カンナヴァーロ、ジャンルイジ・ブッフォンらを擁した1996-97のパルマ、現在のお気に入りはシャビ・アロンソ率いるバイヤー・レバークーゼン

新卒で、UFO・宇宙人・ネッシー・カッパが1面を飾る某スポーツ新聞社に入社し、約24年在籍。その間、池袋コミュニティ・カレッジ主催の「後藤健生のサッカーライター養成講座」を受講。独立後は、映画・ドラマのレビューサイトなど、数社で執筆。
1993年のクラブ創設時からの清水エスパルスサポーター。1995年2月、サンプドリアvsユベントスを生観戦し、欧州サッカーにもハマる。以降、毎年渡欧し、訪れたスタジアムは50以上。ワールドカップは1998年フランス大会、2002年日韓大会、2018年ロシア大会、2022年カタール大会を現地観戦。2018年、2022年は日本代表のラウンド16敗退を見届け、未だ日本代表がワールドカップで勝った試合をこの目で見たこと無し。
“サッカーは究極のエンタメ”を信条に、清濁併せ吞む気概も持ちつつ、読者の皆様の関心に応える記事をお届けしていきたいと考えております。

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