スペイン代表 EURO

王者イタリアを圧倒したスペイン代表「太陽の沈まない国」再来か【ユーロ2024】

ラミン・ヤマル(左)アルバロ・モラタ(右)写真:Getty Images

UEFA欧州選手権(ユーロ2024)グループBの大一番が、日本時間6月21日にドイツ、ゲルゼンキルヒェン市のアレーナ・アウフシャルケで行われ、スペイン代表とイタリア代表が対戦した。

2008年と2012年にユーロを二連覇したスペインと、前回2020年大会王者のイタリア。スペイン国王フェリペ6世がスペインサッカー連盟ペドロ・ロチャ会長と観戦する御前試合となった。

イタリアは規格外の身体能力とテクニックを兼ね備えた両ウィングへの対応に手を焼き、結果はスペインが1-0で勝利。グループ1位で決勝トーナメント進出を決め「太陽の沈まない国」の復興が近いことを感じさせた。


スペイン代表 写真:Getty Images

怒涛の砲撃を放つスペイン無敵艦隊

スペイン対イタリア。両チームが激しくプレスを掛けてボールを奪いあう立ち上がりも、徐々にスペインが主導権を握りはじめる。

2分にスペインのFWニコ・ウィリアムズ(アスレティック・ビルバオ)が左サイドで仕掛けてクロスすると、MFペドリ(バルセロナ)がヘディングで合わせるも、GKがティッピングでクロスバーの上に逃れゴールはならず。

10分にはFWアルバロ・モラタ(アトレティコ・マドリード)が左サイドから右足でクロスし、ウィリアムズが頭で合わせるもファーサイドに外れた。時間が経てば経つほどスペインのペースになり、波状攻撃が続く。イタリアはプレスをいったんやめて、引きはじめた。

41分、ペドリとモラタが中央で細かく繋いでMFファビアン・ルイス(PSG)がロングシュートもGKがセーブ。イタリアは45分にペナルティエリアの角あたりからFWフェデリコ・キエーザ(ユベントス)が右足でシュートもゴール右上に大きく外れた。

これが、イタリアが前半に打つことができた唯一のシュートだったのに対して、スペインが放ったシュートは9本だった。ボールポゼッションは、イタリアの39%に対してスペインが61%。攻撃回数は6回に対して25回。スコアこそ0-0で折り返したが、一方的な試合内容だった。


リッカルド・カラフィオーリ 写真:Getty Images

後半になっても一方的に攻め続けるラ・ロハが得点

イタリアはハーフタイムに2人選手を交代するも形成をひっくり返すことはできずに、依然としてスペインが試合を支配した。

52分にスペインはビッグチャンスを迎える。DFマルク・ククレジャ(チェルシー)が左サイドの深い位置からクロスし、ペドリが右足で合わせるもゴール左に外れる。そこから怒涛の攻撃で、53分のミドルシュートはGKがセーブ。

55分にウィリアムズが左サイドで切り返しからクロスし、モラタのヘディングシュートはイタリアGKが触れるも、そのボールは戻ってきたDFリッカルド・カラフィオーリ(ボローニャ)の脚に当たりオウンゴール。

スペインは先制後も攻め続け、58分にはモラタが右足で強烈なロングシュートを放つと、GKはクロスバーの上に逃れてコーナーキック(CK)に。そのCKからDFロビン・ル・ノルマン(レアル・ソシエダ)のヘディングシュートもゴールならず。

どこからでも攻撃を仕掛けて誰でもシュートを打ってくるスペインに業を煮やしたイタリアは、64分に2度目のダブル・サブスティチューション(2選手交代)を行い、ペースを掴みはじめる。

それでも70分にスペインのウィリアムズは左サイドから中に切り込んで右足でシュートを放ちクロスバーを叩く。決まっていれば決定的な2点目で、イタリアの肝を冷やした。

71分にゲームの立て直しをはかるためにスペインが選手交代。FWラミン・ヤマル(バルセロナ)に代えてFWフェラン・トーレス(バルセロナ)、ペドリに代えてMFアレックス・バエナ(ビジャレアル)が投入された。

74分にはMFロレンツォ・ペッレグリーニ(ローマ)がフリーキック(FK)から直接狙う。これがイタリアの2本目のシュートだ。スペインは78分にも選手交代を行い運動量が上がると、イタリアはまた攻めきることができなくなった。


ジャコモ・ラスパドーリ 写真:Getty Images

王者のプライドを見せるアズーリ

82分、イタリアは交代枠を使い切ると、最後の力を振り絞ってどうにか攻撃をしようとするが、スペインも守って受け止めてから有効な攻撃を繰り出す。

86分のイタリアの左CKでは、この試合を決定づける重要なプレーだと感じ取った両軍がヒートアップして小競り合いとなり主審が仲裁に入る。FWジャコモ・ラスパドーリ(ナポリ)の右足キックは中央で合うも、スペインのプレッシャーにシュートは力がなくGKが簡単に拾った。

90+1分にはスペインの決定的なチャンス。途中出場のFWアジョセ・ペレス(レアル・べディス)が左サイドでボールを持つと股抜きからシュート。

90+2分にはペレスが左サイドから走り込んでゴール前でスルーパスを受けるとシュートもGKがセーブ。消耗の激しい試合は、90+4分にファビアンが脚の痙攣で交代。

90+5分にイタリアはダイアゴナルボール(対角線)からシュートしCKに。最後のプレーだと悟ったイタリア主将でGKのジャンルイジ・ドンナルンマ(PSG)はゴール前に走り込むも得点はならず、試合終了。1-0の僅差でスペインが勝利。勝点6としてグループB1位で通過を決めた。

この試合で攻撃回数は16回に対して58回、シュート数は4本に対して20本とスペインが圧倒。全体としてスペインが試合を支配した。一方で最後の10分間はイタリアが攻撃でスペインを押し込むシーンもあり、前回王者の意地を見せた。

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名前Takuya Nagata
趣味:世界探訪、社会開発、モノづくり
好きなチーム:空想のチームや新種のスポーツが頭の中を駆け巡る。世界初のコンペティティブな混合フットボールPropulsive Football(PROBALL)を発表。

若干14歳で監督デビュー。ブラジルCFZ do Rioに留学し、日本有数のクラブの一員として欧州遠征。イングランドの大学の選手兼監督やスペインクラブのコーチ等を歴任。アカデミックな本から小説まで執筆するサッカー作家。必殺技は“捨て身”のカニばさみタックルで、ついたあだ名が「ナガタックル」。2010年W杯に向けて前線からのプレスを完成させようとしていた日本代表に対して「守備を厚くすべき」と論陣を張る。南アでフタを開けると岡田ジャパンは本職がMFの本田圭佑をワントップにすげて守りを固める戦術の大転換でベスト16に進出し、予言が的中。

宇宙カルチャー&エンターテインメント『The Space-Timer 0』、アートナレッジハブ『The Minimalist』等を企画。ラグビーもプレーし広くフットボールを比較研究。

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