Jリーグ 湘南ベルマーレ

湘南ベルマーレが活かすべき成功体験とは。10試合ぶり勝利の鳥栖戦を検証

畑大雅 写真:Getty Images

新たな攻撃パターンを手に

ウイングバックやサイドバックが自陣後方タッチライン際でボールを受けることで、相手サイドハーフ(ウイングFW)のプレスをもろに浴びるという問題点を昨年より抱えていた湘南。ウイングバックやサイドバックがここでボールを受けた場合、自身の傍にはタッチラインがあるため、左右どちらかのパスコースが必然的に消える。ゆえに相手にその後のパスコースを読まれやすく、ボールを失うリスクも上がるのだが、湘南は昨年と今季序盤でこの問題をなかなか解決できず。これにより2023シーズンのJ1リーグ第7節から15試合、及び今季第3節から9試合勝ちなしと大不振に陥った。

今回の鳥栖戦でも、左ウイングバックの畑が自陣後方タッチライン際でボールを受ける場面がしばしば。相手のプレスを浴びてはパスコース探しに苦労しているように見えたが、この状況下で湘南は新たな攻撃パターンを手にしている。

湘南に光明が差し込んだのは、1-1の同点で迎えた後半1分の場面だ。ここでは自陣後方でボールを受けた同クラブDF大野和成(センターバック)が、低い位置に立っていた畑へパスを出すと見せかけ、その前方のMF平岡へ浮き球を送る。これをコントロールした平岡からボールを引き取ったのは、タッチライン際から内側へ走った畑。その後畑からMF池田にパスが繋がると、池田からボールを受け取った阿部がペナルティアーク後方から右足でシュートを放つ。このミドルシュートがゴールマウスに吸い込まれ、湘南が試合をひっくり返した。

この場面で特筆すべきは、湘南が自陣後方へ降りたウイングバックの畑を囮(おとり)とし、鳥栖のハイプレスを掻い潜ったこと。このウイングバックの動きを今後も巧みに使えば、先述した湘南の問題は解決に向かうかもしれない。これこそ同クラブが今後に活かすべき成功体験であり、逆に言えば自陣後方タッチライン際に立つウイングバック(サイドバック)に安易にパスを出すべきではないだろう。


ソン・ボムグン 写真:Getty Images

ソンと大岩の好守光る

その後湘南は鳥栖にボールを保持されたものの、後半39分に放たれたアウェイチームFW横山歩夢のミドルシュートを、GKソン・ボムグンが懸命の横っ飛びで防ぐ。指先だけでシュートの軌道を変えるという、技ありのセービングだった。

後半アディショナルタイムには、DF大岩が自陣ペナルティエリアでの決死のスライディングで、鳥栖FWヴィニシウス・アラウージョのシュートをブロック。湘南の守備は決壊寸前だったが、このふたりの好守で難局を乗り越えた。

湘南は今節の勝利により17位に浮上。J2リーグ降格圏(18位以下)から脱出したが、予断を許さない状況に変わりはない。これまで列挙してきた課題を解決し、上位進出のきっかけを掴むことを願ってやまない。

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名前:今﨑新也
趣味:ピッツェリア巡り(ピッツァ・ナポレターナ大好き)
好きなチーム:イタリア代表
2015年に『サッカーキング』主催のフリーペーパー制作企画(短期講座)を受講。2016年10月以降はニュースサイト『theWORLD』での記事執筆、Jリーグの現地取材など、サッカーライターや編集者として実績を積む。少年時代に憧れた選手は、ドラガン・ストイコビッチと中田英寿。

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