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日英女子サッカー界リーダーが語るジェンダーレス社会と性差別問題

マギー・マーフィー氏 写真:Getty Images

男女平等を目指す英女子サッカー

3月8日はサッカー発祥の地である英国でも国際女性デーに関連するイベントが各クラブで行われた。南イングランドのルイスFC(英女子2部)では、今シーズン限りでの退任を発表したCEOのマギー・マーフィー氏が、フランスのパリで開催された国連教育科学文化機関(ユネスコ)主催イベント『Score a Goal for Women』に出席。女性CEOとして自身の切実な想いを語った。

「自分がCEOとして働くとは思いもしなかった。私が子どもの頃はサッカーが好きでプレーをしていて、それを否定する言葉も自分の中では受け入れていた。しかし、小さな批判の声は積み重なれば大きなものへと変わっていく。 私が実際にこの仕事に転向したのは、直面する課題があったから」

当時背負っていた課題についてマーフィー氏が多くを語ることはなかったが、CEOになった現在でも性別に関する問題を日常的に感じることがあるという。

「たとえば各メディアがクラブを訪問取材に来た際、ぜひ試合を見てもらおうと案内しても『女性CEOとお茶を飲んで話をする方がいい』と言われることがある。それは、私が単に『管理者の女の子』だと思われているからかもしれない。会話をすることは素晴らしいことだけど、時折それが性差別的に感じることも実際にはある」

マーフィー氏が率いるルイスFCは、世界でも稀に見る男女平等クラブとして知られている。しかし過去(2017年例)にはチケット販売価格において、女子チームが3ポンド(約450円)、対する男子チームは10ポンド(約1500円)と男女差のある価格設定を採用していた。

「男子と差のある価格設定は、女子サッカーの質を否定することとイコールだとすぐに気付いた。私たちが女子サッカーの価値を信じているならば、それ相応の価格は当たり前。そのため、毎年チケット価格を少しずつ上げている。そうすることで人々が思う『女子は男子よりも価格が低いことが当たり前』という思考を徐々に変化させていきたい」

また、パブでビールを飲むことがいちばんの癒しというマーフィー氏は、拠点であるルイスの街で感じた地域の人々の変化が嬉しかったという。パブを訪れた際、店内ではちょうどルイスFC男子の試合が放映されていた。試合を観ていた男性が『ルイスFCに女子チームがあることを知っているか?』と話しかけてきて、女子チームの面白さやスタジアムに観戦に行く予定などを語ってくれたという。まさかマーフィー氏がルイスのCEOだとは全く知らずに。

この出来事からマーフィー氏は「サッカー繁栄のプロセスは、人々が『サッカーを楽しみたい』という気持ちが最も重要であり、何よりも強いものだ」と改めて感じたそうだ。


日英のサッカー界で活躍している2人の女性リーダーの声に耳を傾けてみると、サッカーは単なるスポーツにとどまらず、上手く活用することで社会的価値観に変化を与えられるという共通点が見えた。そして、その効果を生み出す女子サッカーの繁栄に最も重要なのは「みんなでサッカーを楽しむ」というシンプルで普遍的な活動なのである。

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名前:Molly Chiba
趣味:自然散策、英国のあれやこれやをひたすら考えること
好きなチーム:トッテナム・ホットスパーFC

東北地方の田園に囲まれ育ちました。英国のフットボール文化や歴史、そして羊飼いやウールなどのファッション産業などに取り憑き、没入している日本人女性です。仕事のモットーは、伝統文化を次世代に繋ぐこと。

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