AFCチャンピオンズリーグ(ACL)2023/24のラウンド16第2戦(計8試合)が、2月20日より各地で開催されている。このラウンド16で、川崎フロンターレと山東泰山(中国)が激突。川崎Fの本拠地、等々力陸上競技場にて行われた2月20日の第2戦で、同クラブが2-4の黒星を喫した。これにより2戦合計スコアが5-6となり、川崎Fのラウンド16敗退が決定している。
2月13日に行われた敵地での第1戦を3-2で制したものの、このリードをふいにしてしまった川崎F。特に前半の試合運びが拙く、同25分までに喫した2失点が尾を引く展開となった。
川崎Fのラウンド16敗退の原因は何か。ここでは同クラブDF三浦颯太の第2戦終了後のコメントを紹介しながら、この点を検証・論評していく。
三浦「もう少しチーム内で意思統一できる」
昨年12月にヴァンフォーレ甲府から川崎Fへの移籍が発表され、今回の第2戦で基本布陣[4-1-2-3]の左サイドバックを務めた三浦。同選手は第2戦終了後の囲み取材(質疑応答)で、自チームの自陣からのパス回し(ビルドアップ)に関する反省点を口にしている。
ー今年の公式戦3試合(ACLラウンド16の2試合と、2月17日のFUJIFILM SUPER CUP 2024)を拝見した限り、試合の序盤で川崎Fのビルドアップが手詰まりになっている印象を受けました。この原因について、三浦選手はどのようにお考えですか。
「試合の入り(序盤)から相手チームがガツガツ来るので(前線から積極的に守備を仕掛けてくるので)、無理をしてパスを繋ぐか繋がないかの判断は、もう少しチーム内で意思統一できるかなと思っています。そこは修正したいですね。(基本的には自陣から丁寧に)パスを繋ごうとしているんですけど、もう少し簡単にやっていい部分(ロングパスで相手の守備を掻い潜るべき場面)もあったと思います」
攻撃配置が整わなかった川崎F
自陣から丁寧にパスを繋ぐべきか否か。この状況判断がチーム全体として的確でなかったと三浦は振り返っており、確かにそれも反省材料のひとつだが、川崎Fの根本的な課題は別にあると筆者は考える。特に今回のACLラウンド16の2試合では、同クラブがビルドアップを試みた際の、各選手の立ち位置に問題があった。
川崎Fが先制ゴールを奪われた、第2戦の前半8分がこの典型例。同クラブはこの場面でもビルドアップを試みており、GKチョン・ソンリョンのショートパスをDF大南拓磨(センターバック)が自陣ペナルティエリア付近で受けたが、DF佐々木旭の攻め上がり開始が早すぎたため、大南との距離が延びてしまっている。右サイドバックの佐々木へパスを出せなくなった大南は体の向きを変えようとしたが、この動きを対面の山東のMFリー・ユェンイーに読まれ、ボールを奪われてしまった。
大南のボールロストから始まったこの速攻を、山東のFWクリサンに物にされた川崎F。この場面では基本布陣[4-1-2-3]の中盤の底を務めたMF橘田健人が2センターバック間へ降り、[4-4-2]の守備隊形を敷いた山東の2トップとの数的優位(3対2)を確保したかったが、こうした工夫も見られなかった。
ビルドアップに最適な配置を整えるのに時間がかかる。そしてこれによって相手チームの前線からの守備(プレッシング)に手を焼く。これが今回のACLラウンド16の2試合や、2月17日のFUJIFILM SUPER CUP 2024(ヴィッセル神戸戦)で窺えた川崎Fの現状の課題。特にセンターバックとサイドバックの距離感は修正ポイントだろう。サイドバックを常時高い位置へ上げたいのであれば、センターバックとサイドバックの間へ中盤の選手を降ろし、両者の中継役を担わせるという手段が有効だ。今回のACLラウンド16第2戦の途中からこの動きが徐々に見られたが、この隊形変化をより磨き上げる必要があるだろう。
前述の失点以降もパスの出し手と受け手の距離が遠く、ゆえにビルドアップが安定しなかった川崎Fは、前半25分にも山東に得点される。MF脇坂泰斗のコーナーキックが山東の選手に直接渡ると、アウェイチームが自陣から速攻を繰り出す。山東のMFバレリ・カザイシュビリの敵陣左サイドからのクロスに、味方DFガオ・ジュンイーがスライディングで合わせている。この時点で第2戦のスコアは0-2、2戦合計スコアは3-4。川崎Fはさらなる苦境に陥った。
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