武漢に突かれた一瞬の隙
浦和は攻めあぐねたものの、前半34分に先制のチャンスを得る。敵陣ペナルティエリア右隅からDF荻原拓也がクロスを上げたところ、このボールにFWブライアン・リンセンがヘディングを試みる。この際に相手DFドン・ハンウェンの腕がリンセンの頭部付近に当たったことで、浦和にPKが与えられた。
前半37分のショルツのPKは成功。欲しかった先制点を手にしたが、浦和は後半にこのリードをふいにした。
迎えた後半23分、浦和は武漢のフリーキックを凌ぎ、自陣から速攻を仕掛けるも失敗。すぐさま[4-4-2]の守備隊形を敷き、2トップやサイドハーフを起点とするプレスでボールを奪おうとしたが、自陣左サイド(浦和にとっての敵陣右サイド)でボールを受けた武漢のDFジアン・ジーポンに対するMF小泉佳穂のアプローチが緩慢に。これによりジアンにロングボールを蹴られてしまった。
このロングパスに反応したのが、武漢のFWダヴィドソン。その後軽快なドリブルでホイブラーテンとショルツをかわし、右足でのシュートで同点ゴールを挙げた。
ショルツの転倒だけでない失点の原因
ダヴィドソンと対峙したショルツが足を滑らせ転倒するという不運に見舞われたとはいえ、浦和の失点の原因をこれのみに帰結させるのは早計だろう。試合後の囲み取材に応じたGK西川のコメントから、チーム全体の守備に問題があったことが窺える。
「サイドバックとセンターバックの距離感が、失点シーンでは少し広がっていました。(浦和の最終ラインの)裏へ走った相手選手に対する、最終ラインのスライドも遅れたように僕の視界からは見えました」
西川が反省点に挙げた通り、この場面では途中出場で右サイドバックを務めたMF関根貴大とセンターバックのショルツの間が開きすぎており、ここをダヴィドソンに突かれている。浦和は4バックの泣きどころである、センターバックとサイドバックの間をうまくケアできなかった。
浦和がこの4バックの泣きどころを突かれたのは、今回が初めてではない。昨年9月のルヴァン杯準決勝第2戦(セレッソ大阪戦)でも、センターバックとサイドバックの間を相手に使われて失点しており、これが敗退に繋がっている。最終ラインのボールサイドへの横スライドが間に合わないのであれば、センターバックとサイドバックの間をサイドハーフが降りて埋める、もしくはボランチの選手が下がって消すなどの工夫が必要だろう。浦和が昨年から抱えている守備の課題が、今年のACLでも浮き彫りになった。
カンテの劇的弾で辛勝
ACLグループステージ敗退が現実味を帯びてきた浦和を救ったのは、この試合を前に今2023シーズン限りでの現役引退を表明していたFWホセ・カンテだった。
前半はセンターバックによるボール運びが少なかったものの、後半45分にショルツが攻め上がったことでチャンスが生まれる。この直後にMF大久保智明が繰り出した浮き球は相手選手にクリアされたが、こぼれ球に途中出場のカンテがいち早く反応。同選手がワントラップした後にペナルティアーク内で左足を振ると、このミドルシュートが相手ゴールに突き刺さり、埼玉スタジアム2002が歓声に包まれた。
ノックアウトステージ進出の可能性を残した浦和は、12月6日のグループJ最終節でハノイFC(ベトナム)と対戦する。武漢戦で浮き彫りになった課題を克服したうえで、この難局を乗り越えられるか否か。この点に注目していきたい。
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