鈍かった相手の隊形変化への対応
2023シーズンのJ1リーグ33試合消化時点で、55失点。2022シーズンの失点数が39という事実を踏まえると、今季の湘南の守備は脆弱だったと言わざるを得ない。特に相手の隊形変化に弱く、ゆえに湘南の前線からの守備(ハイプレス)が通用しない試合があった。
第12節浦和レッズ戦では、基本布陣[4-2-3-1]の相手DF酒井宏樹(右サイドバック)がタッチライン際から内側に絞ってビルドアップに関わったことで、同選手への湘南のマークが曖昧に。第19節横浜FM戦でも、相手の右サイドバック松原が同様の立ち方でビルドアップに関わり、湘南に守備の的を絞らせなかった。
第20節柏レイソル戦では、基本布陣[4-2-3-1]の相手MF椎橋慧也が古賀太陽とジエゴの両DF間(センターバックとサイドバックの間)へ降り、ビルドアップを司る。同選手へのプレスが遅れたことで、湘南は前半27分に先制ゴールを奪われている(得点者はFW細谷真大)。自陣ゴール前での守備以前に、相手の隊形変化に即したプレスのかけ方をチーム内で共有しきれていなかった。
札幌戦以降の復調の要因は
湘南にとって風向きが変わったのが、1-0で勝利した第27節北海道コンサドーレ札幌戦以降。ビルドアップ時にウイングバックが低い位置をとってしまい、相手のプレスの餌食となる現象は、この試合から減った。
センターバックからウイングバックへのリスキーなパスが減り、試合の主導権をやすやすと相手に渡さなくなった湘南は復調。第28節川崎フロンターレ戦では0-2の黒星を喫したものの、第29節セレッソ大阪戦以降の5試合で4勝1分けと健闘した。
降格危機のなかで気を吐いた選手は
鹿島からの期限付き移籍で加入したDFキム・ミンテ、KVコルトレイク(ベルギー)への期限付き移籍から復帰したMF田中聡の奮闘も、湘南の浮上の原動力に。今夏に同クラブに加わったこの2人が持ち前の対人守備力を発揮し、J1残留に貢献している。今季途中の加入でありながら、キムは自チーム内で3番目に多い70回のクリア数、田中は6番目に多い25回のインターセプト数を叩き出した(数値はデータサイト『SofaScore』より。11月26日時点のもの)。
第33節終了時点で13ゴールと、入団5年目にしてキャリアハイの得点数を叩き出しているFW大橋祐紀、今季最終盤に好セーブを連発したGK富居大樹、第27節札幌戦での的確なポジショニングで味方のパス回しを助けたGK馬渡洋樹にも敢闘賞を贈りたい。効果的な戦術修正がなかなか施されないなかで、彼らの奮闘が最終的に物を言った。
昨シーズンの湘南の勝ち点は41。今シーズンは最終節を前に34に留まっているため、昨シーズンの勝ち点を下回ることが確定している。失点数が昨年の39から今年は55にまで膨れ上がっていることも踏まえると、湘南のチームとしての完成度は落ちたと論評せざるを得ない。戦術の不備の修正が大幅に遅れたことで、長く勝利から遠ざかってしまった点については、チーム全体で省みる必要があるだろう。
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