Jリーグ

物を言った川崎Fの緻密なプレス。福岡に足りなかった工夫は【天皇杯準決勝】

MF脇坂泰斗(左)DF宮大樹(右)写真:Getty Images

天皇杯JFA第103回全日本サッカー選手権大会の準決勝が、10月8日に行われた。準決勝第2試合で、川崎フロンターレがアビスパ福岡に4-2で勝利。12月9日の決勝に駒を進めている。

ここでは、等々力陸上競技場にて行われた準決勝第2試合を振り返り、川崎FのMF脇坂泰斗や福岡の長谷部茂利監督の試合後コメントを紹介しながら、両軍のパフォーマンスを論評する。


川崎フロンターレvsアビスパ福岡、先発メンバー

川崎Fvs福岡︰試合展開

前半2分に福岡が敵陣右サイドでプレスをかけたものの、川崎FのDF登里享平(左サイドバック)やMF橘田健人が冷静にボールを捌いたことで、局面を打開。このプレーを境に川崎Fが攻め込んだ。

福岡のハイプレスを回避した川崎Fは、試合序盤のセットプレーを物にする。前半5分、脇坂のコーナーキックにMF山村和也がヘディングで合わせ、先制ゴールを挙げた。

前半38分には、脇坂のスルーパスを受けたFWマルシーニョがペナルティエリア内で福岡のGK村上昌謙に倒され、PKを獲得。川崎Fにリードを広げるチャンスが到来したが、FWレアンドロ・ダミアンのPKは村上に防がれた。

GK村上のPKストップで勢いづいた福岡は、前半終了間際に絶好機を迎える。同42分、川崎Fのスローインを敵陣で奪うと、FW山岸祐也がペナルティエリア右隅へ侵入。同選手のラストパスをMF金森健志が押し込み、福岡が同点に追いついた。

PK失敗に加えて同点に追いつかれた川崎Fは、後半に攻勢を強める。迎えた同8分、福岡のGK村上がクロスボールを弾き出すと、こぼれ球に橘田が反応。ペナルティエリア外から放たれた同選手のシュートが福岡のゴールに突き刺さり、川崎Fが勝ち越しに成功した。

川崎Fはその後も福岡の攻撃に落ち着いて対処すると、同25分にGKチョン・ソンリョンのロングパスを受けたマルシーニョが、福岡の最終ラインの背後を突く。ペナルティエリア外へ飛び出した福岡のGK村上をマルシーニョがループシュートでいなすと、このボールがゴールマウスに吸い込まれた。

後半36分にも、脇坂のコーナーキックをL・ダミアンがヘディングで物にし、川崎Fが加点。このゴールで試合の趨勢が決した。

敗色濃厚の福岡は、アディショナルタイムにFW鶴野怜樹が後方からのパスを収め、ペナルティアーク内でのシュートでゴールゲット。一矢を報いたが、反撃もここまでだった。


川崎フロンターレ 鬼木達監督 写真:Getty Images

川崎Fの臨機応変な守備が奏功

川崎Fの鬼木達監督は、10月3日の蔚山現代戦(AFCチャンピオンズリーグ)と同じく[4-1-2-3]の布陣を選択。特に先制ゴールを奪った後は、基本布陣[3-4-2-1]の福岡の3バックに川崎Fの前線の選手がじわりじわりと寄せ、パスコースを限定しようとしていた。

特に際立っていたのが、福岡のDF宮大樹(3バックの左)に対する川崎FのMF家長昭博の守備だ。右ウイングFWで起用された同選手が、宮から福岡のDF小田逸稀(左ウイングバック)へのパスコースを塞ぐような寄せ方をしていたほか、逆に縦パスのコースを塞ぎ、宮のパスをサイドへ誘導しようとする場面も。味方の中盤や最終ラインの選手が、ボールの奪いどころを絞りやすい状況を作っていた。

「福岡の3バックは無理してパスを繋いでこない(傾向)ですけど、とは言えフリーで蹴らせてしまうと良い配球をされてしまいます。そこへの追い方やプレスのかけ方は良かったと思います」

試合後の囲み取材に応じた脇坂のコメントからも、自軍の守備への手応えが窺える。10月3日の蔚山現代戦でも、川崎Fは相手チームの自陣からのパス回しを片方のサイドへ追いやる守備、逆にサイドへのパスコースを塞ぐ守備を状況に応じて使い分けている。このバリエーション豊富なプレスが、今回の準決勝でも威力を発揮した。

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名前:今﨑新也
趣味:ピッツェリア巡り(ピッツァ・ナポレターナ大好き)
好きなチーム:イタリア代表
2015年に『サッカーキング』主催のフリーペーパー制作企画(短期講座)を受講。2016年10月以降はニュースサイト『theWORLD』での記事執筆、Jリーグの現地取材など、サッカーライターや編集者として実績を積む。少年時代に憧れた選手は、ドラガン・ストイコビッチと中田英寿。

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