ワールドカップ 女子サッカー

【女子W杯】グループ通過ナイジェリアとジャマイカが魅せたもの

ナイジェリア女子代表 FWアシサト・オショアラ 写真:Getty Images

ナイジェリアには粘り強さとFWオショアラ

グループBのナイジェリアは、同組にカナダ(FIFAランキング7位)オーストラリア(10位)アイルランド(22位)と、グループステージ突破は簡単とは言えない立ち位置だった。

最初のポイントとなったのが初戦のカナダ戦(7月21日)だ。おそらく観客の大部分は、前半早々にカナダに得点を奪われる状況を想像していたのではないか。しかし、カナダはショートミスが続くなど得点のチャンスを逃す場面が多く、ナイジェリアの粘り強さとGKチアマカ・ナドジー(フランス1部パリFC)の見事なセーブが功を奏し、結果は0-0の引き分けとなった。

そして最大のポイントとなったのが、第2節のオーストラリア戦(7月27日)だ。前半アディショナルタイム中にオーストラリアに先制点を奪われてしまうが、直後にナイジェリアFWウチェナ・カヌ(アメリカ1部レーシング・ルイビル)がゴール前の左足シュートで点を奪い返し、前半を1-1で終える。

後半ではナイジェリア選手同士の息の合ったヘディングパスがチャンスを生み、ゴール前ぎりぎりでDFオシナチ・オヘール(スペイン1部デポルティーボ・アラベス・グロリオサス)がヘディングでボールを押し込み2-1へ。

さらに後半途中に出場したナイジェリアのエースFWアシサト・オショアラ(スペイン1部バルセロナ・フェメニ)が、ゴール横からポストすれすれの僅か数センチという奇跡のシュートを放った。信じられないような位置から得点を決め、ナイジェリアサポーターは一斉に湧き上がり、オショアラはユニフォームを振り投げ歓喜の雄叫びを上げた。

その後、終盤アディショナルタイムにオーストラリアに1得点を許すも、結果は3-2でナイジェリアが勝利を収めグループBを2位で通過。ベスト16へと勝ち進んだ。


2019FIFA女子ワールドカップ ナイジェリア女子代表 写真:Getty Images

ナイジェリアがW杯で見てきた光景

ナイジェリアは、第1回目の女子W杯から全ての大会で出場を果たしている(9回)。最高成績は1991年アメリカ大会の準々決勝(7位)で、それ以降はしばらくグループステージ敗退が続き、その後前回大会(2019年フランス)でようやくベスト16に進出。しかしノックアウトステージ初戦のドイツに対し0-3と、得点をあげることが叶わなかった。

当時、副キャプテンとして参加していたオショアラは、特設サイト『FIFA+(プラス)』内のドキュメンタリー動画『アイコン』で次のように語っている。

「ドイツとの戦いでは、怪我をしてしまって自分は参加出来ず、敗退してしまった。もし2023年のW杯に参加できた際には、ベスト16よりも上を目指す!サッカーは不可能に見えることも、実際に可能にしてくれる、叶うものだから」

また幼少期にサッカーを自由にプレーすることが出来ず、日々両親から猛反対を受けていた経験があるオショアラ。「女性は女性らしくしなければならない」という意見を覆し、時間を要したが結果的に実力と結果を残し、ようやく両親から「プロの女子サッカー選手の娘を誇りに思う」という言葉を受け取ったと言う。現代を生きる同じ問題に直面している子ども達の為にも、自身が歩んできた経験を語って行きたいとしている。

「フランス大会(前回大会)のノックアウトステージは、女子サッカーに多くのファンがいるということを証明できた。観客が満席になった試合もあったし、スタジアムの外で試合を見ている人々もいた。信じられない光景だったし、この状況をずっと望んでいた」

2019年にオショアラが目にしたその光景から、4年後の今W杯は果たして世界中の女子サッカーの在り方を、どのように変化させていくのか。閉幕後から見えてくるその世界の先には?ナイジェリアとしてもベスト16を潜り抜け、1991年アメリカ大会の記録を更新したいところだ。

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名前:Molly Chiba
趣味:自然散策、英国のあれやこれやをひたすら考えること
好きなチーム:トッテナム・ホットスパーFC

東北地方の田園に囲まれ育ちました。英国のフットボール文化や歴史、そして羊飼いやウールなどのファッション産業などに取り憑き、没入している日本人女性です。仕事のモットーは、伝統文化を次世代に繋ぐこと。

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