ワールドカップ 女子サッカー

なでしこ、緻密な攻守でザンビアを圧倒。東京五輪から上がった戦術レベル【女子W杯】

日本女子代表 写真:Getty Images

なでしこジャパンことサッカー日本女子代表は22日、2023FIFA女子ワールドカップのグループC第1節でザンビア代表と対戦。最終スコア5-0で勝利した。

ザンビア女子代表に1本もシュートを放たれることなく、大勝を収めたなでしこジャパン。2019年の同大会(フランス大会)、及び2021年の東京五輪では詰めの甘い戦術が災いしメダル獲得を逃したものの、この試合では緻密な攻守で相手を圧倒。オーストラリアとニュージーランドで開催中の今大会での躍進を予感させる戦いぶりだった。

なでしこジャパンがどのような戦術を駆使し、ザンビア女子代表を凌駕したのか。ここではこの点について解説する。


日本女子代表vsザンビア女子代表、先発メンバー

日本女子代表vsザンビア女子代表︰試合展開

前半10分に放たれたMF藤野あおばのミドルシュートがゴールポストに当たるなど、キックオフ直後からなでしこジャパンに得点の匂いが漂う。同21分にはFW田中美南がフリーキック直後の混戦からゴールネットを揺らしたが、同選手がオフサイドポジションでプレーに関与したと判定され、得点は認められなかった。

チャンスを物にできない時間が続いたなか、MF宮澤ひなたがこの嫌なムードを払拭。前半43分、藤野の右サイドからのクロスに右足で合わせ、先制ゴールを挙げた。

前半のうちにリードできたなでしこジャパンは、後半もサイド攻撃や速攻からチャンスを量産。同10分、MF遠藤純の左サイドからのクロスに田中美南がスライディングで合わせ、追加点をもたらした。

後半17分、敵陣右サイドのゴールライン付近で粘った田中美南のクロスに宮澤が合わせたほか、同26分にもMF長谷川唯のラストパスに反応した遠藤が加点。途中出場のFW植木理子がアディショナルタイムにPKを成功させ、駄目を押した。


日本女子代表 MF藤野あおば 写真:Getty Images

なでしこに浸透していた攻撃の原則

[4-1-4-1]の守備隊形で自陣へ撤退したザンビア代表に対し、基本布陣[3-4-2-1]のなでしこジャパンが攻め込む。

[4-1-4-1]という布陣の特性上、ザンビア代表のFWバーバラ・バンダ(1トップ)の両脇が空く形となり、ここでボールを保持したDF南萌華がロングパスを繰り出す場面がキックオフ直後から見られた。

まずは相手最終ラインの背後を狙う。この原則がなでしこジャパンの面々に浸透しており、前半2分には遠藤のスルーパスに長谷川が反応。敵陣ペナルティエリア左隅への侵入に成功し、チャンスを迎えている。最終ラインに吸収されていたザンビア代表MFスーザン・バンダの背後に立ち、相手の視野外から走って遠藤のパスを呼び込んだ長谷川のプレーは秀逸だった。

田中美南や宮澤など、一旦相手選手の視野外(死角)に立ち、そこから走り出して相手ゴール前へ侵入できる選手が揃っているのが今のなでしこジャパンの強み。この試合の先制ゴールも、藤野が相手の左サイドバック(DFマーサ・テンボ)の背後へ走り、長谷川の浮き球パスを受けたことで生まれている。藤野がテンボとMFエバリン・カトンゴのどちらにも捕まらない、両者の中間地点あたりに立ったうえで長谷川のパスに反応したことも、このゴールが生まれた理由のひとつだ。

相手DFアグネス・ムサセの視野外(背中側)からゴール前へ侵入し、藤野のクロスに反応した宮澤の一連のプレーも称賛に値する。選手個々の巧みなポジショニングと、まずは相手最終ラインの背後を狙うという、明確な攻撃プランが噛み合ったことで生まれたなでしこの先制ゴールだった。

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名前:今﨑新也
趣味:ピッツェリア巡り(ピッツァ・ナポレターナ大好き)
好きなチーム:イタリア代表
2015年に『サッカーキング』主催のフリーペーパー制作企画(短期講座)を受講。2016年10月以降はニュースサイト『theWORLD』での記事執筆、Jリーグの現地取材など、サッカーライターや編集者として実績を積む。少年時代に憧れた選手は、ドラガン・ストイコビッチと中田英寿。

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