FIFAワールドカップ・カタール2022の決勝が12月19日(日本時間)に行われ、アルゼンチン代表とフランス代表が対戦した。
前半21分、アルゼンチン代表のFWアンヘル・ディ・マリアが敵陣ペナルティエリア内でウスマン・デンベレに倒され、PKを獲得。このチャンスをリオネル・メッシが物にし、アルビセレステス(白と空色)が先制した。
同36分には自陣後方からのパスワークでレ・ブルーのプレスをいなし、フリアン・アルバレスのスルーパスを受けたアレクシス・マック・アリスターが右サイドを突破。同選手のグラウンダークロスに反応したディ・マリアが速攻を結実させ、アルゼンチン代表が2点リードで前半を終える。
このままアルビセレステスが試合をコントロールするかと思われたが、後半26分より布陣を[4-2-4]に変えたレ・ブルーが捨て身の猛攻を始める。
同34分に途中出場のFWランダル・コロ・ムアニが相手最終ラインの背後を突き、ペナルティエリア内でDFニコラス・オタメンディに倒されてPKを獲得すると、キッカーを務めたキリアン・ムバッペが追撃のゴールを挙げる。同36分にもメッシのボールロストからレ・ブルーの攻撃が始まり、マルクス・テュラムとのパス交換で敵陣ペナルティエリア左隅に侵入したムバッペが、右足でボレーシュートを放つ。このボールがゴールネットに突き刺さり、フランス代表が試合を振り出しに戻した。
2-2のタイスコアで突入した延長戦も、近年稀に見る激闘に。延長後半3分、途中出場のアルゼンチン代表DFゴンサロ・モンティエルのロングパスからサイド攻撃が始まると、FWラウタロ・マルティネスが敵陣ペナルティエリア右隅からシュートを放つ。相手GKウーゴ・ロリスが弾いたボールをメッシが押し込み、アルビセレステスが勝ち越しに成功した。
36年ぶりのW杯制覇に王手をかけたものの、アルゼンチン代表はまたしてもフランス代表の反撃に苦しめられる。同11分にムバッペのミドルシュートが自陣ペナルティエリア内にいたモンティエルの腕に当たり、ハンドの反則をとられたうえでフランス代表にPKを与えてしまう。ムバッペに再度PKのチャンスを物にされ、アルゼンチン代表は逃げ切りに失敗した。3-3のタイスコアで120分間の戦いが終わり、試合はPK戦に突入する。
PK戦ではアルゼンチン代表が全員キックを成功させた一方で、同代表の守護神エミリアーノ・マルティネスがレ・ブルーの2人目キングスレイ・コマンのシュートを止める。3人目のキッカー、オーレリアン・チュアメニのシュート方向を読みきりミスを誘うなど躍動し、アルビセレステスに栄冠をもたらした。
ハイレベルな攻防のなかで、両チームの命運を分けた戦術的なポイントは何か。ここではこの点について解説する。
フランスはなぜ攻めあぐねたのか
基本布陣[4-2-3-1]のレ・ブルーは当初、テオ・エルナンデスとジュール・クンデの両サイドバックのどちらかを敵陣に上げ、バックラインの残り3人でビルドアップを試みたものの、アルゼンチン代表の3トップとの数的同数(3対3)を打ち破れず。途中から4バックのままでパスを回そうとしたが、アドリアン・ラビオとチュアメニの2ボランチのいずれかがセンターバックとサイドバックの間へ降り、ビルドアップの中継地点を担うなどのサポートが遅く、特に試合序盤はアルゼンチン代表のプレスを掻い潜れなかった。
ラビオとチュアメニによるサポート不足を補うべく、アントワーヌ・グリーズマンが右のハーフスペース(ピッチを縦に5分割した際の、左右の内側のレーン)を上下動したものの、マック・アリスターが同選手を捕捉し続けたことで、フランス代表の遅攻は手詰まりに。レ・ブルーの攻撃の起点をことごとく封じたアルゼンチン代表が、試合の主導権を握った。
前半17分にはタッチライン際で孤立したT・エルナンデスにロドリゴ・デ・パウルがプレスをかけ、敵陣でボール奪取。これがアルビセレステスのショートカウンターに直結し、ペナルティエリア内でディ・マリアがシュートを放っている。この場面を機にアルゼンチン代表が攻勢を強めた。
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