セリエA

老練なペドロがラツィオ勝利の立役者に。ローマの攻撃機能不全の原因は【試合分析】

ローマ FWパウロ・ディバラ 写真:Getty Images

ローマにとって深刻な“ディバラ不在”

ローマの敗因は、特に前半に見られた3バックとクリスタンテの4人頼みのビルドアップに尽きる。クリスタンテと2ボランチを組んだカマラによる、自陣後方からのパスワークへの参加が少なかったほか、タミー・アブラハムやニコロ・ザニオーロ、及びロレンツォ・ペッレグリーニも前線に残ったため、ローマの最終ラインとGKルイ・パトリシオがパスの出しどころに困る場面がしばしば。3バックから両ウイングバックへのパスコースを塞がれた際の、ボールの脱出ルートを確保できなかった。

キックオフ直後こそ、最終ラインからのロングボールはラツィオの面々を自陣に閉じ込める効果があったものの、次第に相手に跳ね返されるようになり、敵陣でのボールロストを連発。失点直後の前半29分30秒すぎにも、センターバックのジャンルカ・マンチーニが自陣後方でボールを保持したが、クリスタンテはアンデルソンのマークに遭い、カマラも後方に降りる素振りを見せなかったため、26歳のイタリア人DFはロングパスを選択。ザニオーロが相手選手に競り負けたことで、攻撃が不発に終わっている。ローマの現状の課題が浮き彫りとなった場面だった。

ローマ MFニコロ・ザニオーロ 写真:Getty Images

この試合を見る限り、ハーフスペースを上下動でき、自陣後方からのパスワークにも顔を出せるFWパウロ・ディバラの負傷離脱の影響は、ローマにとって小さくないと言える。同選手が出場できない今、ザニオーロ、アブラハム、ペッレグリーニのうち誰かが自陣のハーフスペースに降り、ビルドアップに関与する。そして彼らが少ないタッチ数ではたいたボールを、攻め上がった両ウイングバックやボランチが受け取るなどの工夫が必要だろう。ローマのジョゼ・モウリーニョ監督が、最終ラインからのロングボール一辺倒の攻撃を改善し、ディバラ不在時のビルドアップのパターンを構築できるか。これが“ジャッロロッシ(黄色と赤)”の命運を左右しそうだ。

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名前:今﨑新也
趣味:ピッツェリア巡り(ピッツァ・ナポレターナ大好き)
好きなチーム:イタリア代表
2015年に『サッカーキング』主催のフリーペーパー制作企画(短期講座)を受講。2016年10月以降はニュースサイト『theWORLD』での記事執筆、Jリーグの現地取材など、サッカーライターや編集者として実績を積む。少年時代に憧れた選手は、ドラガン・ストイコビッチと中田英寿。

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