淀みのないビルドアップも披露
ウディネーゼの今季の躍進の要因は、堅固な守備だけではない。1999年から2003年まで同クラブでプレーし、今夏に指導者として舞い戻ったアンドレア・ソッティル監督のもとで、自陣後方からのパスワークにも磨きをかけている。
ビルドアップの起点となっているのは、5人の中盤の真ん中を務めるワラシ。この27歳のブラジル人MFが適宜最終ライン付近に降りると、3センターバックのうち誰かが中盤に上がる。この約束事が徹底されているため、相手チームにとってはプレッシングの的を絞りづらい。ワラシの流動的なポジショニングが、相手のハイプレスを封じている。
ラツィオ戦の前半12分すぎには、3センターバックのべカンとジャカ・ビヨルの間にワラシが降り、自陣後方からのパスワークに関与。この直後に同選手が自陣右サイドから中央へ素早く移動し、最終ラインからのパスルートを確保すると、ペレスからのリターンパスを受け、左サイドに浮き球を送る。これがウディネーゼのサイド攻撃に直結すると、マケンゴが敵陣ゴール前へクロスを送り、その後のこぼれ球からサマルジッチがクロスバー直撃のシュートを放っている。ソッティル監督仕込みの、ワラシを経由したビルドアップが威力を発揮した場面と言えるだろう。
後半39分30秒すぎの攻撃シーンで、相手のFWアンデルソンやザッカーニに最終ラインからワラシへのパスコースを塞がれたものの、自陣後方でボールを受けたペレスは前線へのロングパスを選択。このボールに途中出場のFWアイザック・サクセスがヘディングで反応すると、こぼれ球を拾ったペレイラからのパスをデウロフェウが受け、ペナルティエリア右隅からシュートを放っている。この一撃もクロスバーに当たった。
ワラシを経由できない場面でも、攻撃が手詰まりにならなかったウディネーゼ。前節のアタランタ戦でも、途中出場のサクセスが強靭な肉体を活かしたポストプレーで攻撃のタメを作り、試合の主導権を手繰り寄せたことが2点ビハインドからの同点劇に繋がっている。
空中戦のみならず、相手最終ラインの背後へのランニングも献身的なベト、軽快なボールタッチで密集地帯を攻略でき、高精度のミドルシュートやプレースキックも売り物のデウロフェウなど、今のウディネーゼには多様かつ質の高いアタッカーが勢ぞろい。ソッティル監督によって遅攻も速攻も整えられた同クラブは、今季のリーグ戦で既にローマやインテルを粉砕しているほか、智将マウリツィオ・サッリ擁するラツィオ相手にも、ひけをとらない戦いぶりを見せた。
今節の引き分けにより順位を下げてしまったものの、首位ナポリとの勝ち点差は5と、依然としてセリエA優勝や来季のUEFAチャンピオンズリーグ出場権を狙える位置につけている。11月12日のナポリとの直接対決(セリエA第15節)に向け、攻守の練度を更に高められるか。今後はこの点に注目したい。
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