CL/EL チャンピオンズリーグ

ミランのハイプレスを打破。劣勢になりかけたチェルシーを救ったのは【CL試合分析】

ミラン DFフィカヨ・トモリ 写真:Getty Images

ターニングポイントとなったチェルシーのPK獲得シーン

試合の潮目が決定的に変わったのが、前半16分40秒以降のチェルシーの攻撃。センターサークルのやや後方でラヒーム・スターリングからのパスを受けたコバチッチが、ミランの最終ラインと中盤の間に巧みに立ったベン・チルウェルに縦パスを送る。その後ジョルジーニョから右サイドのジェイムズにパスが繋がると、同選手がミランの最終ラインの背後にスルーパスを出し、これにマウントが反応。背後を突かれたミランのDFフィカヨ・トモリがペナルティエリア内でマウントを倒したことで、チェルシーにPKが与えられた。

トモリのホールディングの反則が決定的な得点機会の阻止と判断され、同選手にはレッドカードが提示されることに。PKを物にされたミランはビハインドを負っただけでなく、10人での戦いを余儀なくされた。

チェルシー MFジョルジーニョ 写真:Getty Images

ミランの最終ラインと中盤が間延びしたのを見逃さなかったチルウェルとコバチッチに、右サイドへ素早くボールを送ったジョルジーニョ。そしてトモリの背後を突く正確なパスを繰り出したジェイムズや、そこへ懸命に走ったマウントによって得られた前述のPK。練度の高いチェルシーのパスワークが実を結んだ瞬間だった。


トモリ退場後のミランの隊形([4-4-1])

凶と出たミランの賭け

トモリの一発退場を受け、ミランのステファノ・ピオリ監督はクルニッチを右サイドバックに移し、基本布陣を[4-4-1]に変更。左サイドハーフのレオンが時折ジルーの隣に上がり、[4-3-2]の隊形でハイプレスを試みる場面もあったが、この賭けは凶と出た。

レオンが前線に上がることで生まれた左サイドのスペースをジェイムズらに突かれ続けたほか、前半32分50秒以降には[4-3-2]の3セントラルMFが右サイドに寄ってプレスをかけたものの、ボールを奪いきれず。マウントの浮き球によって密集を掻い潜られると、最終的にはセンターバックのマッテオ・ガッビアと左サイドバックのテオ・エルナンデスの間を突かれ、オーバメヤンにゴールを奪われている。[4-3-2]の泣きどころである、3セントラルMFの横のスペースを使われてしまった。

トモリ退場後のミランの隊形([4-3-2])

トモリの退場によりゲームプランが狂い、悔やまれる一戦となったミランだが、悲観する必要はないだろう。試合序盤に仕掛けたハイプレスが概ね機能していたほか、前半26分10秒以降の攻撃では、自陣ペナルティアーク内でイスマエル・ベナセルが左サイドのエルナンデスにパス。その後エルナンデスが敵陣までボールを運ぶと、ディアスの右サイドからのクロスにジルーが反応し、惜しいヘディングシュートを放っている。10人になった後も、質の高い攻撃を随所に繰り出していた。

現在、勝ち点4でグループEの3位に沈んでいるものの、第5節と6節で連勝を収めれば決勝ラウンド進出が確定する。今節披露した獰猛なハイプレスと練度の高いビルドアップを、ディナモ・ザグレブやザルツブルク相手にも披露できるか。“ロッソネロ”(赤と黒。ミランの愛称)が残り2節で貫くべきことは明確だ。

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名前:今﨑新也
趣味:ピッツェリア巡り(ピッツァ・ナポレターナ大好き)
好きなチーム:イタリア代表
2015年に『サッカーキング』主催のフリーペーパー制作企画(短期講座)を受講。2016年10月以降はニュースサイト『theWORLD』での記事執筆、Jリーグの現地取材など、サッカーライターや編集者として実績を積む。少年時代に憧れた選手は、ドラガン・ストイコビッチと中田英寿。

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