Jリーグ FC岐阜

“蟻地獄”J3が空前の大混戦!現首位FC岐阜に見える如実な変化

FC岐阜、2008年Jリーグ昇格以降の成績 作成:筆者

攻撃志向でJ3降格を喫した岐阜

現在J3で首位に立つ岐阜は、2019シーズンのJ2で最下位に終わり、昨季からJ3に戦いの場を移して2年目となる。岐阜は日本代表往年のレジェンド、ラモス瑠偉氏を監督に据えた2014シーズン以降、攻撃的なサッカーを志向して来たクラブだ。

ショートパスによる崩しと個人技を噛み合わせた「ヴェルディ・スタイル」を導入したラモス監督(2014-2016)の後任には、「クローズ」と呼ばれる独自の戦術を持つ大木武監督(現ロアッソ熊本監督)が就いた。チーム全体が縦にも横にも極端にコンパクトな密集を作り、そこから出られなくなるという意味の独特な戦術で、2017シーズンはボール支配率とパス本数でJ2トップを記録。リーグは18位に終わったものの、2008年からJ2で戦う岐阜にとっては1試合平均で最多得点を記録するという快挙の元、魅力的なサッカーが披露されていた。

大木監督の戦術が浸透し、順調な成長過程を見せていた2018シーズンの前半戦は1桁順位に躍進。しかし、11得点を挙げていた古橋亨梧(日本代表FW/ヴィッセル神戸)が夏の移籍市場で神戸に引き抜かれて以降、後半戦は大失速してしまい、結局同シーズンは20位に低迷する。スタッツも前年同様にパス本数はトップでボール支配率は2位だったのだが、ペナルティエリアへの進入回数がリーグ10位から19位に、3番目に少なかったクリア回数が逆に3番目に多くなってしまった。

「ボールを繋ぐ」コンセプトを持ちながらペナルティエリアまで持ち運べず、自陣でクリアが多くなったチームは土台が崩れて連敗を繰り返した。翌2019年6月に大木監督は成績不振のために解任となり、後任の北野誠監督(現女子サッカー「WEリーグ」ノジマステラ神奈川相模原監督)も再建できずに、岐阜は22位でクラブ史初のJ3降格に至った。


FC岐阜、スタッツから見えるプレースタイルの変化 作成:筆者

スタッツから見えるFC岐阜の大きな変化と決断

J3初参戦となった昨季の岐阜は、最終盤までJ2昇格圏内である2位を争ったのだが、ラスト2試合で勝利できずに6位に終わる。そして今季より、ヴァンフォーレ甲府時代に大木監督の元でコーチを務めた安間貴義監督が指揮を執っている。

安間監督は、これまで指揮した甲府やカターレ富山などでは師である大木監督と似たコンセプトで好チームを作って来た手腕が評価されている指導者だ。しかし岐阜では、昨年の秋田や相模原のような“J3レシピ”を採用しているのか、ボール支配率とパス本数で最下位のスタッツを記録しながら、第13節終了時点でリーグ最多の20得点を記録してリーグ首位に立つチームに仕立て上げている。

岐阜は昨季も、J3へとカテゴリーを下げたにも関わらず、ボール支配率やパス本数の数値が低かった。今季はさらにその傾向が強まり、クリア回数がトップとなり、ペナルティエリア内への侵入も昨季12.5回から8.9回へと大幅に少なくなっている。そこには選手たちはもちろん、監督やコーチ陣、ファン・サポーターも理想と現実の狭間で揺れ、プライドや葛藤があり、相当な苦しみもあったはずだ。

9ゴールを挙げて現在得点ランクトップに立つ岐阜のFW川西翔太は、モンテディオ山形や大分ではシャドーやボランチなどでプレーしていた選手だ。大卒でガンバ大阪へ加入した頃から戦術的なプレーができる大人なFWだったが、現在は攻撃よりも、むしろ最前線からの守備でチームを牽引している。その姿は現在の岐阜そのものを体現している。


現在J3首位のFC岐阜の選手達 写真提供:FC岐阜

最終節は“師弟対決”!

12月5日に予定されている今季のJ3最終節である第30節で、現在首位の岐阜は大木監督が率いる現在2位の熊本と対戦する。大木体制2年目となる熊本のスタッツを見れば、ボール支配率やパス本数、攻撃回数でも2位となる“大木印”な数値が並んでいる(今季のJ3でボール支配率とパス本数、PA進入回数でトップは鹿児島ユナイテッドFC)。

第7節(5月2日)に岐阜で実現した安間監督と大木監督の師弟対決は、師・大木監督の熊本が0-1で勝利したが、今季最終節の熊本の地では、サッカーの神様はどちらに微笑むのか?あるいはそれまでに両チーム共にJ2昇格を勝ち取っているのか?まだ折り返し地点である今からが楽しみだ。

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