明治安田生命J2リーグ第20節、ジュビロ磐田は敵地でのV・ファーレン長崎戦で、東京五輪世代のエース候補と期待された途中出場のFW小川航基が今季初ゴールを挙げて1-0の勝利。首位の京都サンガと同勝点で並んでの2位をキープした。
磐田はここまでの20試合で14勝2分4敗の勝点44、32得点19失点。しかし、勝点34で5位の町田ゼルビアと、同勝点の6位ヴァンフォーレ甲府は31得点19失点。勝点では10の大差があるが、得失点は僅かに1得点の差しかない。町田と甲府が共に先週末の第20節で大勝を収めたからこその数字なのだが、サッカーとは不思議なスポーツであることを証明している。
そんな中、磐田は現在7試合連続での完封勝利を継続中である。この連勝街道が始まる第13節終了時点では、7勝2分4敗の勝点23で首位と勝点10も離れた4位。23得点19失点という結果も、J2とは思えない巨大戦力を抱えるチームにしては実に凡庸な数字だった。
世界屈指の敏腕SDに認められた大器、伊藤洋輝
6月23日、磐田はMF伊藤洋輝が今夏からドイツ・ブンデスリーガのシュトゥットガルトへ買い取りオプション付きでレンタル移籍することを発表した。現在22歳の伊藤は磐田の下部組織出身。188cm81kgの大型MFでありながら、昨季からDFとして定位置を確保し、現在は主に3バックの左センターバック(CB)としてプレー。左利きでビルドアップ能力が高く、希少価値の高いプレーぶりが光っていた。
シュトゥットガルトのスポーツディレクター(SD)を務めるズベン・ミスリンタ―ト氏は、ボルシア・ドルトムント時代に香川真司(日本代表MF、PAOKテッサロニキ)やロベルト・レバンドフスキ(ポーランド代表FW、バイエルン・ミュンヘン)、ウスマン・デンベレ(フランス代表FW、バルセロナ)らを無名の若手時代に発掘。イングランドの名門アーセナルにも引き抜かれた名スカウトであり、2019年4月より同職に就いている。
就任当時ドイツ2部に降格していたシュトゥットガルトのSDとして、ミスリンタ―ト氏は日本代表の中軸となったMF遠藤航や、今季のブンデス最優秀若手選手賞を受賞したコンゴ民主共和国出身のFWサイラス・ワマンギトゥカ(偽名登録が発覚し新シーズンからは「サイラス・カトンパ・ムブンパ」の名称で選手登録)らを獲得。2019/20シーズン見事に2部で2位の自動昇格を勝ち取り、2020/21シーズンは昇格組ながらドイツで最も平均年齢の若いチーム編成で18チーム中の9位と大躍進。運動量豊富な若手選手が体現する攻守の切り替えの速さでモダンなスタイルとして定評があるチーム作りで奏功している。
そんな敏腕SDに認められた伊藤はJリーグで今季、定位置を獲得していたわけではない。開幕から左CBを任されていたものの、チームは2連敗。内容的には相手を完全に圧倒しながらも敗れたのだが、伊藤は第3節から先発を外れた。その後は途中出場が続き、左のウイングバック(WB)として先発もしていたが、第14節のザスパクサツ群馬戦から左CBとして先発復帰。チームもそこから7試合連続完封勝利を続けている。
伊藤は今季のリーグで2得点を挙げているが、これはいずれも左WBとして出場していた時に決めた右足でのゴールだった。本人は「ドイツに渡ったらフィジカルでは下の方だと思う」と謙遜するが、左利きでありながらそのように右足も使える選手であり、さらに大型のCB、ポリバレントな選手(複数のポジションをこなすことのできる選手)であることが敏腕SDの眼にとまったのだろう。
伊藤の持ち味はユース出身のMFだけあって、最終ラインから繰り出す左足でのロングフィードだろう。対角線に蹴るアメフトのタッチダウンパスのような弾道は、おそらくJリーグではヴィッセル神戸のベルギー代表DFトーマス・フェルマーレンと彼くらいにしか蹴れない域にある。
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